AIが答えを示す時代に、「自分で決める力」をどう育むか ーNTT×TBS「e6 project」が挑む次世代エデュテインメントー
第208回オンラインシンポレポート・前半

活動報告|レポート

2026.7.31 Fri
AIが答えを示す時代に、「自分で決める力」をどう育むか ーNTT×TBS「e6 project」が挑む次世代エデュテインメントー</br>第208回オンラインシンポレポート・前半

概要

超教育協会は2026年6月10日、e6合同会社 共同代表CEOの鈴木 邦治氏(講演当時:NTT株式会社 e6 projectリーダー/X-Tech Bridge学長)を招き、「正解のないAI時代を生き抜く『自分で決める力』~NTT×TBSが挑む次世代エデュテインメント”e6 project”~」と題したオンラインシンポジウムを開催した。

 

シンポジウムの前半では、鈴木氏が、AI時代の子どもたちに求められる「自分で決める力」と、その力を物語や体験を通じて育む「e6 project」について講演した。後半では、超教育協会理事長の石戸 奈々子をファシリテーターに、視聴者からの質問を交えながら質疑応答が行われた。その前半の模様を紹介する。

 

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「正解のないAI時代を生き抜く『自分で決める力』~NTT×TBSが挑む次世代エデュテインメント”e6 project”~」

■日時:2026年6月10日(水)12時~12時55分

■講演:鈴木 邦治氏
NTT株式会社 e6 project リーダー / X-Tech Bridge 学長
※肩書は講演当時。鈴木氏は2026年8月8日付でe6合同会社共同代表CEOに就任。

■ファシリテーター:石戸 奈々子
超教育協会理事長

 

鈴木氏は約30分の講演において、NTTとTBSが共同で推進しているエデュテインメント「e6 project」について話した。主な講演内容は以下のとおり。

AI時代に問われる「自分で決める力」

【鈴木氏】

AIがさまざまな問いに答えを示してくれる現在、改めて「学ぶとは何を指すのか」が問われています。今回は、AI時代に子どもたちに必要となる力について、NTTとTBSが共同で進めるe6 projectの取り組みを交えながらお話しします。

 

まず、生成AIが社会に与え始めている影響を、雇用、必要とされるスキル、AIの安全性という三つの側面から見てみます。

 

▲ スライド1・AIに関する最近のニュース

 

米国のテクノロジー企業では、AI活用を見据えた人員構成の見直しが進み、若手技術者の雇用環境にも変化が生じています。また、これまで有用とされてきた専門スキルについても、AIの進化を前提に、その価値や役割が改めて問われています。

 

AIの能力向上は、安全性の課題も突き付けています。Anthropicは、高度なサイバーセキュリティ能力を持つ「Claude Mythos Preview」について、十分な安全対策が整うまで一般提供を限定しています。

 

こうした動きは、AIが単なる便利なツールではなく、働き方や学びの前提そのものを変えつつあることを示しています。

 

将来、どのような職業が生まれ、どのようなスキルが必要になるのかを正確に予測することは、ますます難しくなっています。そうした中で、未来を生きる子どもたちに必要な力を整理しました。

 

▲ スライド2・AI時代を生き抜くのに必要な力

 

子どもたちには、AIの仕組みを理解し、適切に使いこなす力が求められます。さらに、AIを活用して新たなものを生み出す創造性や、AIを介しながらも他者と対話し、協働する力が重要になります。言い換えると、「問われる力が変わる」ということです。

 

▲ スライド3・AI時代の学びにおいて求められる力

 

これまでの学びでは、知識を蓄え、正解にたどり着くことが重視されてきました。もちろん、知識はこれからも重要です。一方で、AIによって膨大な知識や複数の答えが瞬時に提示される時代には、その中から何を選び、どう意味づけるのかを「自分で決める力」が、これまで以上に重要になります。

 

また、AIが示す答えも、完全に中立なものではありません。AIの出力は、学習に用いられたデータやモデルの設計、提供企業の方針、利用者の問い方など、さまざまな要素の影響を受けています。

 

答えが自然で滑らかであるほど、私たちはそれを一つの見方であると意識せず、そのまま受け入れてしまいやすくなります。だからこそ、AIの答えだけでなく、人や社会の異なる価値観にも触れながら、自分自身で意味づけし、決める力が重要になります。

 

では、「自分で決める力」はどのように育つのでしょうか。私たちは、まず何かに心が動くことから始まると考えています。

 

心が動くことで自分ごとになり、自分ごとになるからこそ迷い、AIや家族、先生、友人など、さまざまな相手の意見を聞く。そのうえで、自分なりに意味づけし、選び、その結果を引き受ける。この一連の体験を重ねることで、「自分で決める力」が育まれていくと考えています。

 

▲ スライド4・「自分で決める」ポイントは
「心が動く」こと

 

AIが得意とする論理的な処理だけでなく、「楽しい」「ワクワクする」「どうしてもやってみたい」といった自分自身の感情を大切にすることが、これから一層重要になります。そうした感情を起点に、自分で迷い、選ぶ体験を数多く届けたいと考えています。

物語と体験を両輪で進める「e6 project」

こうした問題意識をもとに、NTTとTBSはe6 projectを推進しています。本プロジェクトがめざすのは、AI時代に必要となる「自分で決める力」を、知識として教えるだけでなく、物語や体験を通じて育むことです。

 

NTTの技術と社会実装力、TBSの物語をつくり人の心を動かす力を掛け合わせ、「物語をつくること」と「体験の場をつくること」を両輪で進めています。

 

▲ スライド5・e6 projectの概要

 

物語をつくる取り組みとして、第一弾となるオリジナルIP「感情騎士 – エモーショナル・ナイト -」をゼロから開発しました。子どもたちに長く愛され、物語や体験を通じて成長していくIPへ育てることをめざしています。

 

その世界観をリアルに体験できるAIアトラクションやインタラクティブコンテンツを展開し、将来的にはテーマパークも視野に入れています。

 

 

具体的に取り組んでいる内容を紹介します。

 

▲ スライド6・元素を取り入れた
Emotional Knightの世界観

 

「感情騎士 – エモーショナル・ナイト -」は、「キミは、感情を探す旅に出る」をテーマに、主人公がさまざまな感情と出会いながら成長していく物語です。

 

118種類の元素に、好奇心、情熱、共感、孤独、愛といった感情を掛け合わせた「感情元素」という独自の設定を設けています。それぞれの感情元素を持つキャラクターたちとの冒険を通じて、主人公自身もさまざまな感情に気づき、取り入れながら成長していきます。

 

2026年3月、赤坂サカスで開催された「AKASAKA あそび!学び!フェスタ® 2026」において、「感情騎士 – エモーショナル・ナイト -」の世界観を体験できる三つのAIアトラクションを展開しました。

 

4日間で1,624名が来場し、約1,000名の子どもたちに体験いただきました。体験後アンケートの満足度は91.2%となり、子どもたちが遊びを入口に、AIや物語と関わりながら自ら考え、選ぶ体験への高い関心を確認できました。

 

▲ スライド7・Emotional Knightの
世界を
体験できるアトラクション

 

具体的には、「黒渦騎士団からの挑戦状」、「スイートキャッスル」、「ケンケンビート」という3つのAIを活用したアトラクションを作り、子どもたちに遊んでもらいました。

 

▲ スライド8・Emotional Knightで
提供した3つのアトラクション

 

会場では、子どもたちに楽しんでもらえるようなパンフレットやシール、ステッカーを用意しました。

 

「スイートキャッスル」は、子どもがARグラスを装着するとエモーショナルモンスターが登場し、そのモンスターと対話しながらアトラクションをクリアしていくという内容です。子どもたちは、角砂糖を模したスポンジのキューブを集めてお菓子の城を作り、最後に出てくるモンスターを倒すという体験をします。キューブを画面に投げると反応が返って来るので、とにかく夢中に一生懸命投げて、楽しんでもらうようなアトラクションです。

 

▲ スライド9・「スイート キャッスル」で
遊ぶ子どもたち

 

「ケンケンビート」は音楽が作れるアトラクションです。子どもが自分の好きなキーワードを3つ選ぶと、そのキーワードをもとにオリジナル曲をAIが作詞・作曲します。その楽曲をもとにリズムゲームやケンケンパのダンスゲームをして遊べるという内容です。身体を動かして遊ぶ、自分で作った曲で遊べるという経験をしてもらえます。

 

「黒渦騎士団からの挑戦状」はAIと会話するアトラクションです。タブレットをタップして、AIと子どもが直接に対話します。AIは対話の中で、子どもが現在、夢中になっていることや好きな食べ物などを聞き出します。子どもの答えた内容をもとにストーリーを組み立てて、大画面で発表します。自分がAIに話したことを友達などみんなで見ることができます。しかも、ちゃんとオチまでついているので、笑ってもらうようなコンテンツです。

 

会場には、キングコングの西野 亮廣氏をはじめ、タレントやクリエイター、インフルエンサーの方々にも来場いただき、さまざまな立場から体験に対する意見をいただきました。

 

また、オリジナルIPをより多くの方に届けるため、複数の出版社やクリエイターと、漫画化をはじめとする二次展開の可能性について協議を進めています。

 

e6 projectはNTTとTBSだけで完結するものではありません。教育、自治体、研究、コンテンツ制作、IP、場づくり、テクノロジーなど、多様なパートナーとともに取り組みを広げていきたいと考えています。

 

>> 後半へ続く

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