概要
超教育協会は2026年3月18日、SAK University 東京イノベーションキャンパス 学部長の土橋 直樹氏を招いて、「次世代を担うIT人材を育成するーSAK University 東京イノベーションキャンパスの取り組み」と題したオンラインシンポジウムを開催した。
シンポジウムの前半では、土橋氏が2025年に開校したSAK Universityの概要や設立の背景について講演し、後半では超教育協会理事長の石戸 奈々子をファシリテーターに、視聴者からの質問を織り交ぜながら質疑応答が実施された。その前半の模様を紹介する。
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「次世代を担うIT人材を育成するーSAK University 東京イノベーションキャンパスの取り組み」
■日時:2026年3月18日(水) 12時~12時55分
■講演:土橋 直樹氏
SAK University 東京イノベーションキャンパス 学部長
■ファシリテーター:石戸 奈々子
超教育協会理事長
土橋氏は約30分の講演において、コンピュータサイエンスやAIを専門に学べるSAK University 東京イノベーションキャンパスについて、その特徴や設立の背景などについて話した。主な講演内容は以下のとおり。
実務に直結するITを体系的に学習できるカリキュラム
2025年9月に東京・天王洲アイルに設立したSAK University 東京イノベーションキャンパスについて説明します。SAK University 東京イノベーションキャンパスは、東京・秋葉原を中心に20年以上にわたってITスクールを運営してきた株式会社エスアイイーがイギリスの名門国立大学・エセックス大学と提携して設立しました。エセックス大学とエスアイイーのITスクール・SAKによるIT専門校で、コンピュータサイエンスとAIについて専門的に学ぶ「Computer Science and AI Engineering」専攻学科のみの高等教育機関です。
▲ スライド1・イギリスのエセックス大学と
SAK University 東京キャンパスとは
エセックス大学は1964年設立で、イギリスでは比較的新しい大学です。
イギリス国内の大学ランキングはもちろん、世界の大学ランキングでも上位に位置する、研究と教育の両面で国際的な評価を受けている大学です。ロンドンから東に車で1時間半程度のところに位置しています。周囲は緑が豊かで、私も訪れたときには学びやすい環境という印象を受けました。
一方、運営母体であるエスアイイーとSAKについて説明します。エスアイイーはITスクールだけではなくてさまざまなIT開発を手がけています。
▲ スライド3・運営母体となっている
エスアイイーとSAKについて
ソフトウェアの開発やインフラの構築、セキュリティ診断、ゲーム開発をはじめ、映像制作などのクリエイティブ部門もあります。さまざまな業務を通じて得た知識、知見、ノウハウを社内の講師開発事業部の講師たちがITスクールであるSAKのカリキュラムに落とし込み、実践的な講義を展開してきました。講師たちはエンジニアでもあるので、現場の「生の技術情報」を教育に取り入れていくことができるのが特徴です。企業の新入社員向けIT基礎研究、プログラミング研修など法人研修プログラムでの受講者も多くいます。
このような特徴を持つエセックス大学とSAKの良いところをかけ合わせて設立されたのがSAK University 東京イノベーションキャンパスです。その特色をいくつかご紹介します。
まずは、エセックス大学と提携したことで、エセックス大学のコンピュータサイエンスの学位を、日本国内で日本語で3年間で取得できることです。海外大学との提携となる英語での授業となるケースが多いのですが、本校では日本語でエセックス大学の学位を取得できるのが大きな特徴です。
次に実務直結のコンピュータサイエンスを学べることです。
▲ スライド4・学んだ技術を
そのまま実務に活かせるのが特徴
SAKが長年培ってきた実践的な講義の特徴を活かし、プログラミング、ネットワーク、データベース、クラウド、AI、セキュリティといった広範なITを体系的に学習できるようなカリキュラムになっています。
実際に実務に活かすという視点では、プロジェクトマネジメントやチーム開発のスキルや方法論も必要です。それらについても演習課題で習得できるほか、専門的なスキルと知識、そのスキルや知識を証明する資格の取得、即戦力となるトランスファブルスキルの習得もできるのが魅力です。
3つめの特色は、こうした授業を行う教員が現場のITエンジニアで実際に技術を使っているということです。ITは常に変化や進化が激しいので、数年たつと学習したものがアップデートされ、新しい技術に置き換わってしまうことも多くあります。現場で技術を活用しているITエンジニアが教壇に立つことで、そうした変化・進化に対応した授業を展開できます。
さらに、教員は授業やエンジニアリングだけでなく、例えば書籍の執筆なども手がけます。その書籍を使って授業を行うことで、学びを循環させながら生きた知識を授業に落とし込んでいくかたちで授業が展開されていくのです。
他にも特徴はあるので簡単にまとめました。
▲ スライド5・SAK University
東京イノベーションキャンパスの
さまざまな特色
ブレンデッドラーニングとは、対面とオンラインを柔軟に組み合わせた授業スタイルです。社会人にも学びやすい工夫をしています。就職支援やセカンドキャリア支援にも力を入れています。これまでエスアイイーではSAKで学んだ方々の就職・転職支援をしてきましたので、その経験を活かし、本校でも学生の就職などをサポートします。特にセカンドキャリアの支援では、日本プロサッカー選手会(JPFA)のオフィシャルパートナーとなり、プロサッカー選手のセカンドキャリアの支援に積極的に取り組んでいます。
留学サポートでは、当校を卒業した後にエセックス大学の大学院への進学を支援します。英語のスキルや成績が基準を満たす学生については、大学院に進める制度も整えています。エセックス大学の大学院に行って修士号を取得した後に、エセックス大学でさらに研究したいという学生は博士課程に進学することもできますし、就職したいという人はイギリス国内外での就職を目指すことができます。
具体的なカリキュラムです。
▲ スライド6・SAK University
東京イノベーションキャンパスの
カリキュラム
1年生、2年生、3年生までが学士課程です。4年生はPostgraduate Diplomaというイギリスにおける「修士号のひとつ手前の資格」を取得するためのPostgraduate Programmeを設けています。だんだん難しくなっていきますが、1年生では基礎、2年生から徐々に応用を学び、3年生で実際にそれを活かしたプロダクト開発、4年生ではさらに応用的な学習に進むという流れです。
コンピュータサイエンスだけではなくて、AIエンジニアリング専攻学科でもありますので、AIの学習にも力を入れています。体系的にAIを学べる構成で、AIを使うだけではなく、AIの仕組みを知ることで業務にどういう形でAIを取り入れることができるのかを学び、社会にAIを適用していく力をつけることができる内容となっています。
IT教育における学びと実務のギャップを埋める
SAK University 東京イノベーションキャンパスの設立背景について説明します。まず、日本国内ではIT人材やAI人材の不足が指摘されています。経済産業省では、2030年には79万人のIT人材不足が発生し、2040年には339万人のAI人材不足となると予測しています。こうした人材不足を補えるようなエンジニアを輩出していきたいというのが、設立に至った大きな理由の一つです。
2つめは、SAKでも私たちが感じていたことです。SAKでは、さまざまな企業の新入社員を対象にIT技術の新人研修をしていました。新入社員研修で最初に学ぶことは「社会で必要なスキル」のはずです。そこにITスキルが組み込まれるということは、ITスキルを大学などに在学中に身につけることができるような学校があっても良いのではないか、そう感じていました。
さらに、ITにおける学びと実務のギャップも感じていました。最近ではITの進化が速く、大学などではどんなことを教えていけばよいのかが分かりにくくなっているというのも課題の一つだと思っています。
また、入学希望の学生たちと話していると、入学できた大学によって将来が決まってしまうことも多いというプレッシャーを感じているケースが非常に多いことが分かりました。これも課題です。こうしたことを解消するために、生きた技術力を習得できる授業を行う学校を作りたいと考えました。学校で実際に生きた技術を習得することで、就職活動をする時には、市場で活躍できる人材としてアピールすることができます。即戦力として活躍することができれば、受験の結果、入学した大学だけでは決まらない将来の選択肢の一つになるのではないかという考えです。そこで実務に直結する知識や技能、思考力を育てる高等教育機関を設立するに至りました。
▲ スライド7・設立の
背景の一つにはITにおける
「学びと実務のギャップ」がある
次になぜエセックス大学なのかという理由を説明します。イギリスの大学は実務に強いと評価されることが多いことで知られています。その理由の一つには、イギリスが経済的に停滞し、失業率も高かった1980年代にサッチャー政権が断行した教育改革があります。産業的な競争力を強化する人材を再教育することを目的に実施され、その流れが現在まで受け継がれ、イギリスの教育は実務に活きる内容を重視するかたちに変ってきたとされています。
エセックス大学と提携するに至ったのも、こうした理由からです。私たちもSAKで実務に活きる知識を重視して授業を行ってきました。私たちが重視してきたことと、エセックス大学が実践してきたコンピュータサイエンスのカリキュラムがマッチする部分が多かったことから、スムーズに提携できたと思っています。つまりイギリスの教育スタイルが当校とマッチしていました。
エセックス大学は、トランスファブルスキルについても重要と捉えていて、コミュニケーション力やリーダシップ、プロジェクトマネジメントのスキルも重視しています。技術力に偏りすぎずに学習できるようなカリキュラムを、エセックス大学とSAK University 東京イノベーションキャンパスで作り上げています。
基礎研究と応用研究と実務実装との「接続」に力を入れたい
現在の私たちの取り組みと将来展望について紹介します。まず、当校の講師たちが、高校の探究学習と情報Iの授業を実施しています。高校から情報Iが必修になり、ITについて学ばなければいけないという気運が高まっている状況ですが、一方でITについて教えるリソースが足りていない現状もあります。そこに、少しでもご協力できればと考えて、探究学習の授業と情報Iの授業を実施しています。
▲ スライド9・SAK Universityが
行っている取り組み
例えば、AIの授業では何かを質問したり語りかけたりすると回答してくれるようなAIコンパニオンを作成する方法を学んでいます。情報Iの授業では、カリキュラムをベースにIT基礎を身につける授業も展開しています。
もう一つは、基礎研究、応用研究、実務実装の接続です。エセックス大学は基礎研究にも力を入れている大学です。一方でエスアイイーは実務に活きる技術に力を入れてきました。SAK University 東京イノベーションキャンパスは、そうした基礎と応用や実務を接続するような立ち位置で、基礎から実装までをぐるぐる回せるような、一体化した組織にしていきたいと考えています。知識実装型高等教育機関と銘打っていますが、まさにそのような組織を作っていきたいと思っています。
最後に、我々が学生に身につけて欲しいと考えている4つの力をまとめました。
「Knowing is not enough,we must apply.」と書いてあります。これはゲーテの格言です。知るだけはなくて、それを実際に適用していく、行動に起こしていく、実装していくというところが、私たちが考えているこれから社会に出ていく学生にとって必要な力だと思っています。そこを育てていける学校にしていきたいです。
>> 後半へ続く




