第6回オンラインシンポ「NHKでの休校対応に関する取り組みについて」レポート・前半

プロジェクト活動|レポート

2020.8.5 Wed

概要

超教育協会は2020年6月24日、NHK編成局 編成主幹(Eテレ・R2編集長)の中村貴子氏を招いて、「NHKでの休校対応に関する取り組みについて」と題したオンラインシンポジウムを開催した。本シンポジウムでは、学校の休校に合わせて番組編成や番組内容を柔軟に変更したほか、サブチャンネルを活用するなど放送形態も臨機応変に対応させていったNHK Eテレの取り組みを紹介。後半では超教育協会理事長の石戸奈々子を交え、視聴者からの質疑応答を実施した。その前半の模様を紹介する。
 
「NHKでの休校対応に関する取り組みについて」
■日時:2020年6月24日(水)12時~13時
■講演:中村貴子氏 NHK編成局 編成主幹(Eテレ・R2編集長)
■ファシリテーター:石戸奈々子 超教育協会理事長
 
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 中村氏は約40分間の講演で、学校の臨時休校期間中のNHK Eテレの取り組みについて語った。臨時休校という「非日常」の中でも「日常」を大切にすること、「学校」と「こども」のつながり、学びの継続をサポートすることの大切さを話した。主な講演内容は以下のとおり。

「非日常」の中で「日常」を大切にする

 NHKでは、学校の臨時休校に対応してさまざまな取り組みをしました。まずは「みんなの卒業式」という取り組みです。卒業式ができなくなった、あるいは縮小された多くの生徒、児童たちに、番組内で卒業式をプレゼントする緊急特番です。「休校中の君たちへ」という取り組みは、先生たちが画面の向こう側にいる生徒や児童に向けて「離れていてもみんなのことを思っているよ」というメッセージを伝えるものです。おもに地域局のニュースで放送されました。先生たちの思いが胸に迫り、もらい泣きする場面もありました。
 
 こうしたNHK総合テレビでの取り組みとは別にEテレでもさまざまな取り組みをしました。
 
 Eテレでは、2020年3月2日からサブチャンネルを活用した取り組みを開始しました。その際、休校中の取り組みについて「3つの柱」で考えました。
 

▲ スライド・Eテレでは、休校中の番組編成を「3つの柱」で考えた。

 
 まずは、「非日常」の中で「日常」を大切にすること。全国の学校が休校という非常事態に私たちもひどくうろたえ、「何ができるのだろうか」と悩みました。そのとき、東日本大震災のときのことを思い出しました。東日本大震災のときはEテレでも子供番組を休止して安否情報や被災状況を伝える放送をしたのですが、それがより一層、子供たちの不安を煽ってしまった側面もあったのではないでしょうか。
  
 当時の編集長が、発災から3日後の2011年3月14日から7時からのゾーンである「みいつけた!」や「おかあさんといっしょ」、「いないいないばあ!」といった子供向け番組を再開したところ、視聴者から「待ってました!」、「子供たちの笑顔が戻りました」といった嬉しい声がたくさん寄せられたと聞いています。
 
 テレビがいつも通りに放送していることは大切なのではないかと考え、子供向け番組を放送している朝と学校番組を放送している9時台、高校生向けの番組を放送している14時台については、なんとしても通常の放送をキープしようと考えました。

サブチャンネルで視聴者からの要望にも柔軟に対応

 一方で、Eテレではサブチャンネルも活用しました。デジタル放送では1つのチャンネルを2つに分けて放送できる仕組みがあります。マルチ編成です。特別な事情がある場合でなければ実施しない編成ですが、今回は緊急事態ということでサブチャンネルを活用して多くの番組を放送しました。
 

▲ スライド・休校中にEテレのサブチャンネルで放送された番組の抜粋。

 
 ピンク色で区分けしているところは子供たちの不安を吹き飛ばしてくれるような番組、グリーンの部分は学習に役立つ、知的好奇心を誘うような番組です。3月2日からサブチャンネルでの放送を開始し、外出の自粛が始まった頃には子供たちの運動不足や体力低下が心配という声がたくさん寄せられるようになりました。そこで、体育番組の「はりきり体育ノ介」、ダンス番組の「Eダンスアカデミー」、「パプリカ」を集中的に編成することで、家にいながらにして子供たちが身体を動かすことを促しました。
 
 さらに月日が経ちますと、子供たちの様子が「落ち着かない」、「不安を抱えているようだ」「安らぎを求めているようだ」という声が寄せられるようになりました。そこで子供たちにリラックスしてもらえるよう「おはなしのくに」という朗読劇や、子供が聴いても楽しめるようなクラシック音楽の番組「ららら♪クラシック」も編成しました。
 
 「4月に入学式ができないまま新一年生になってしまう」という保護者からの心配の声もたくさん寄せられたので、2020年4月からは小学校のスタートカリキュラムに対応する番組「すたあと」、生活科の番組の「おばけの学校たんけんだん」を放送しました。学校とはどんなところかに興味を持ってもらうなど、新一年生の子供たちをサポートするような番組を集中して編成したのです。
 
 さらに日にちが経つと、「学校の学習の遅れが気になる」という声も増えてきました。そこで、3月に学ぶべきだった内容の教科番組を改めて4月、5月に放送しました。特別支援学校もろう学校も休校になってしまったことで、「ストレッチマン・ゴールド」という特別支援学校向け番組の放送量を増やしました。
 
また、いつもは夜の時間帯に放送している「ろうを生きる 難聴を生きる」という聴覚障害者のために情報を提供する番組があります。そこで、聴覚障害者の先輩たちが「将来どうやって生きていったらいいのだろう?」と悩む生徒たちに向けて話をするというシリーズも放送しました。
 
 サブチャンネルを使って柔軟に番組を編成、放送したことで、「Eテレありがとう!」や、「子供がEテレを見てくれている間は、私のテレワークもはかどります」という声が寄せられたことは番組編成の励みにもなりました。

Webサイトで「学校」と「子供」のつながりをサポート

 Eテレの休校中の取り組みでは、「学校」と「子供」のつながりをサポートすることも重視しました。そこで、Eテレの学校放送番組のほとんどが見られるWebサイト「NHK for School」を活用しやすくする取り組みもしました。「NHK for School」では、番組のストリーミング配信以外にも、指導案やワークシート、子供たちが調べ学習をするときに活用できるクリップなどが見られるようになっています。クリップは約7000本、番組も約2000本、視聴できます
 
 ただし、コンテンツが多くあるため、子供たちが見たいものを探すのがなかなか難しいところもありました。そこで、「対象学年ごとに見てもらいたい番組を示す」、「家庭学習の方法を示す」、さらに「番組を見た後に交流の場を作る」という3点を意識して、特設ページを開設しました。それがWebサイト「おうちで学ぼう!」です。
 

▲ スライド・子供たちの家庭での学びを応援する特設ページ「おうちで学ぼう!」

 
「おうちで学ぼう!」では、各学年で見てもらいたい内容や、3月に未履修となってしまった単元を補講できるような番組を「プレイリスト」にまとめました。さらに、番組を見た後の交流の場が、「みんなのレビュー」という取り組みでした。家でひとりテレビを見ながら学ぶのは孤独な作業ですが、番組を見た感想、番組を見てわかったことなどを「NHK for School」を通じて送っていただき、全国から寄せられた感想などを見たり、協力してくださった先生やスタッフからコメントをもらうなどの交流をできるようにしました。

コロナ渦にあるからこそ、協働的な学習を意識した「新しい学び」について考える

 このような試みを続ける中で、「Eテレこそ公開生放送授業を全国展開するべきではないか」というご意見をいだたくこともありました。そこで考えたことがあります。Eテレは全国放送なので全国共通の内容の番組を届けることが役割です。都道府県や市区町村、各学校での個別対応とは役割を分けて取り組みを考えることが必要なのではないかと話し合いました。
 
 その話し合いを通じて思ったことは、「先生たちにEテレをツールとして使ってもらい、授業をしてもらうのが一番良いのではないか」ということでした。その考えをもとに生まれたのが「臨時開校!フライデーモーニング・スクール」という番組です。この番組もサブチャンネルを活用して放送しています。毎週金曜日9時に先生が現れて、「このように勉強するといいんだよ」ということを教えてくれる授業形式の番組です。「NHK for School」で視聴できる番組を「いかに活用できるか」の実用例ともいえます。
 
 例えば、先生方が子供たちに「この番組はこのように見るといいんだよ」、「見た後にこういうように学びを定着させるんだよ」と伝えるときの参考にしていただきたいと考えています。また、オンライン授業を実施するときの参考にもしていただけるのではないでしょうか。
 
 休校中の取り組みの「三つの柱」にある「学びの継続」と「これから」についても、コロナ渦であるからこそ考えていくべきことがありました。もともとは学習指導要領の改訂が2020年4月から施行されるということもあり、協働的な学習を意識した番組の開発は進めていました。その中で、コロナ渦で「急いで開発するべき」と進めたのが「みんなのch(チャンネル)!」という番組の中の「新型コロナに負けない!」という取り組みです。
 

▲ スライド・「新型コロナに負けない!」では、子供たちが自身で考えた安全で楽しい学校生活を送るためのアイデアが放送された。

 
 この取り組みは、「教科をこえて課題を解決するための学習を進めていく」というプロジェクトベースドラーニングを意識した番組の開発です。新型コロナウイルスが感染拡大してく中、子供たちも自分の身を守るにはどうしたらいいのかということを「自分で考えたいのでは?」という問題意識が制作チームの間にも生まれました。
 
 そろそろ学校も始まるかもしれないという中で、「どうやって学校で安全な生活が送れるのか」ということを子供たちにも考えてもらおうと呼びかけたのです。自粛中でしたので個別の取材はできなかったのですが、Webサイト上での募集や、お世話になっている先生方から情報をいただき、子供たちからはさまざまなアイデアが寄せられました。
 
 例えば、 「マスクをしているから友だちとなかなか仲良くなれないのではないか?」ということを課題に感じた女の子がいました。そこで、自分がしているマスクに自分の好きな食べ物や嫌いな食べ物をイラストで描くと会話が弾むようになるので、マスクをしていることがデメリットにならないというアイデアを出してくれました。
 
 また、第二回目に登場した女の子は、新型コロナウイルスについて調べた全知識を投入してすごろくゲームを作成するという偉業を成し遂げてくれました。気をつけなければいけないことや感染リスクを下げるための行動などを自分たちで考え、それを定着させるアイデアを示すという素晴らしい番組になりました。
 
 新型コロナウイルスというのは世界共通の課題ですので、2020年6月28日の放送では、シンガポールや中国など海外の日本人学校の生徒とつないで、各国の状況を教えてもらいました。同時に、子供たち同士で意見を言い合うという場も設けました。このように同じ年頃の子供たちが「何を考えて何をしているのか」を知らせることができるのもテレビの役割だと考えます。そして、こういった新しい学びの形の開発も Eテレとして取り組んでいく必要があるのではないかと感じています。
 
 ここまでお話しをしたように教育機関ではない私たちができることは何なのかということを常に考えて取り組んできました。まだまだ、新型コロナウイルス感染症の影響は継続しています。今後も「何が求められていくのか」ということを敏感にキャッチしつつ、家庭と学校と社会との間で、子供たちのための効果的な役割分担をしながら、学びの継続、新しい学び方の実現に貢献していきたいと考えています。
 
 
>> 後半につづく

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