NHKでの休校対応に関する取り組みについて
第6回オンラインシンポレポート・後半

活動報告|レポート

2020.8.5 Wed
NHKでの休校対応に関する取り組みについて<br>第6回オンラインシンポレポート・後半

概要

超教育協会は2020年6月24日、NHK編成局 編成主幹(Eテレ・R2編集長)の中村貴子氏を招いて、「NHKでの休校対応に関する取り組みについて」と題したオンラインシンポジウムを開催した。

 

本シンポジウムでは、学校の休校に合わせて番組編成や番組内容を柔軟に変更したほか、サブチャンネルを活用するなど放送形態も臨機応変に対応させていったNHK Eテレの取り組みを紹介。後半では超教育協会理事長の石戸奈々子を交え、視聴者からの質疑応答を実施した。その後半の模様を紹介する。

 

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「NHKでの休校対応に関する取り組みについて」
■日時:2020年6月24日(水)12時~12時55分
■講演:中村貴子氏 NHK編成局 編成主幹(Eテレ・R2編集長)
■ファシリテーター:石戸奈々子 超教育協会理事長

 

シンポジウムの後半では、参加者から寄せられた質問をファシリテーターの石戸が中村氏にぶつけるという形で質疑応答が実施された。

▲ 写真・ファシリテーターを務めた
超教育協会理事長の石戸奈々子

テレビが教育に果たす役割とは

石戸:「Eテレには学校の先生からも、研究者からも、保護者からも、子供からも声が届くと思います。各々からはどんな声がありましたか?」

 

中村氏:「必ずしも良い評価だけではありませんでした。例えば、『もっと力を入れて授業を放送するべきではないか』という声は意外と多くありました。保護者からも、オンライン授業が始まるという頃に『パソコンは親が使っていて子供に渡せない、テレビでもっと力を入れて授業を放送すべきではないか』というご指摘もありました。

 

一方で、『このようなことがなければ、学校放送ゾーンの番組を見る機会がなかった』という声もありました。つまり、子供たちが家でEテレを見るようになったから番組を一緒に見るようになったということです。算数の番組で子供が『わかった!』と喜んでいる姿を見たりすることで、テレビにも効果があることを再認識したという意見もいただきました」

 

石戸:「保護者が見せたいコンテンツと、子どもが見たいコンテンツにへだたりがあることがあります。そこをどう考えていますか?」

 

中村氏:「子供は面白いものを見たいが、保護者はより教育効果が高いものを見せたいでしょう。両立は難しいと思っており、番組制作の現場でも議論が白熱します。私たちは、面白そうな演出や人選をとても重視しています。『笑わせるためだけ』に演出や人選をしているのではなく、そこには必ず意味があります。なにか発見してもらったり、共感してもらったりということを含んだ演出にしていくことが大事だと考えています。

 

ときにはそれが子供たちにとっては、『理屈っぽい』、『説教くさい』と捉えられてしまいます。そこは何度も何度も調査をかけたり、子供たちや先生方の意見を伺ったりしながら改善していくしかありません。常にそのバランスの狭間にいます」

 

石戸:「EテレではNHK for Schoolなど、インターネット対応が熱心だと思います。今後のコンテンツの制作比重として、テレビとインターネットのバランスが変わっていくということは考えられていますか」

 

中村氏:「現在、NHKの方針としては、デジタルは放送の付帯業務という位置付けです。そのため、コンテンツの制作という部分におきましては、放送が第一というスタンスはしばらく変わらないと思います。ただ、放送したコンテンツを放送しっぱなしで終わるのではなく、NHKプラスのような形でより多くの人たちに見ていただくとか、コンテンツ化して見やすいサイズや見やすい場所に編成するというような、再利用の方向性は出てきます。

 

その再利用先の一つとしてデジタルが選ばれていく可能性はあります。ただし、コンテンツ制作のボリュームが放送からデジタルへと大きくシフトするというのはしばらくないのではないでしょうか」

 

石戸:「NHKはネットの活用等で多くのデータを取れるようになると思います。テレビの教育効果の検証でNHKが担っていたように、オンライン教育の効果検証をするためのデータ収集をする可能性はありますか?」

 

中村氏:「オンライン教育にEテレとしてどう関わっていくのか。EテレでなくNHKが乗り出すのか、NHKがコンテンツを制作してオンライン教育で活用できるようにするのかなど、どういう形で新しいプラットフォームができあがるのか。そして、そこにNHKがどう参画していくか、非常に大きな課題です。その調査研究をしようということで先生方との話し合いが始まっているところです」

 

石戸:「今回は休校対応として、いつものEテレとは少し異なる編成をしましたが、それは今後も継続をしていくのでしょうか。また、アフターコロナを見据えて、新しい展開があるのでしょうか?」

 

中村氏:「NHK for Schoolは『フォー・スクール』と付いているとおり学校での学習を前提としたサービスでした。ただ今回、学校に行けなくなったということで発想の転換が必要な事態となりました。これまで学校向けだった番組やサービスを、より個別学習、個人的な学習に結びつけられたらと思います。コンテンツの提供の仕方やコンテンツの開発なども、個別学習に貢献できるようなものにしていく必要があるのではないかという議論は始まっています。

 

放送については、サブチャンネルが本当にこれから先も必要なのかどうかということは、もう少し検証が必要かと思っています。というのも、サブチャンネルというものは視聴率で見られ方を測れないチャンネルなのです。視聴者からの反響で、『見ていただいているな』とか、『役立っているな』というのは分かったのですが、量として判断できないのです。そこで、サブチャンネルとして続けていくのか。それとも新たな番組枠を開発するのか。それについても話し合っていく予定です」

 

石戸:「今回、テレビというメディアだからこそできること。逆に、できないことがあったのではないかと思います。改めて、テレビが教育に果たす役割はどのようなところにあると感じられましたか?」

 

中村氏:「テレビが苦手なのはやはり、パーソナルな部分です。一人ひとり、事情が異なるのに、『その人たちに対応するようなきめ細かいサービスまでできるか』というと、それが難しかったというのが反省点です。限界を感じた部分でもありました。

 

放送の役割というと、共時性と言いますか、全国の子供たちが同じ時間に同じ番組を見て一緒に学ぶということを実現できることだと思います。子供たちが協働してこれからの社会を築いていかなければいけないので、そういった子供たちの活動の後押しをできるような番組を制作できるというのは、テレビというメディアならではなのではないでしょうか」

 

最後に石戸の「中村さん、お忙しい中ありがとうございました。これをもちまして本日のオンラインシンポジウムは終わりにさせていただきます。視聴いただいた皆様もありがとうございました」という締めの言葉でシンポジウムは幕を閉じた。

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