生徒の学びたくなる気持ちを育み「創造的なアウトプット」を生み出す
第37回オンラインシンポ「クリエイティブな学びを目指す聖徳学園のSTEAM教育とは?」
レポート・後半

活動報告|レポート

2021.4.9 Fri
生徒の学びたくなる気持ちを育み「創造的なアウトプット」を生み出す<br>第37回オンラインシンポ「クリエイティブな学びを目指す聖徳学園のSTEAM教育とは?」<br>レポート・後半

概要

超教育協会は2021年3月10日、聖徳学園中学・高等学校教諭の品田 健氏を招いて、「クリエイティブな学びを目指す聖徳学園のSTEAM教育とは?」と題したオンラインシンポジウムを開催した。

 

シンポジウムの前半では、品田氏が、同校で実践しているSTEAM教育に関するプレゼンテーションを行い、後半では、超教育協会理事長の石戸奈々子をファシリテーターに参加者を交えての質疑応答を実施した。その模様を紹介する。

 

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■日時:2021年3月10日(水)12時~12時55分

■講演:聖徳学園中学・高等学校教諭 品田 健氏

■ファシリテーター:石戸奈々子超教育協会理事長

 

▲ 写真・ファシリテーターを務めた

超教育協会理事長の石戸奈々子

 

シンポジウムの後半では、ファシリテーターの石戸より参加者から寄せられた質問が紹介され、品田氏が回答する質疑応答が行われた。

環境整備、スタッフ、評価、テーマ選びなどSTEAMに関する広範囲の質問が集まる

石戸:「具体的な授業内容がとても分かりやすく、非常に興味深かったです。最初の質問は、私も気になっていました『STEAMの授業は、特別な時間にやっているのか、全ての教科の授業にどの程度の割合で入り込んでいるのか』という質問です。どの授業で実施しているのか、また他の教科科目との関係について教えてください」

 

品田氏:「基本的に本校では『情報』の授業をSTEAMと呼んでいますが、情報の授業で収まらないこともたくさんあります。例えば高校2年生の国際協力プロジェクトでは『総合』と組んでいますし、中学生の映画作成では、『国語』でストーリーテリングの手法による物語の進め方『音楽』でiPadのGarageBandを使ったBGMの作り方『美術』で粘土(クレイ)を使ったアニメーションの作り方など、各教科の先生に助けてもらっています。プレゼンでお話しした火星の話の時には、生徒があまりに火星の話を聞きに来るので、理科の先生がサービスで星の位置関係を説明してくれました。このように、決まった時間でないところも含め、必要に応じて他の授業をところどころお借りしながらやっています」

 

石戸:「テーマの選び方も非常に面白いのですが、STEAMの担当教員がこのようなプロジェクト型の授業を作り、実行にあたっては、さまざまな教科の先生と共同しているのですか」

 

品田氏:「基本的なところは、情報科と総合科の教員を中心に考えて、そのメンバーでわからないところは、それぞれの担当の先生にお手伝いしてもらって進めています。

 

高校の授業では、基本的に私と美術担当の先生を含む3名で担当しています。他にも支援員の担当スタッフが2名いまして、中学のSTEAMは彼らを中心に実践してもらい、合計5名ほどでいろいろ考えながらやっている形です」

 

石戸:「中学校でのSTEAMの授業はどのようなものですか」

 

品田氏:「中学校では、まず1年生の後期に、プレゼンでお話しした映画作りを行います。今年度だと話題のSDGsについて調べ、一つのテーマを選んで関連した映画を作りました。その中で基本的なアプリケーションの使い方なども指導しています。また、中学3年生は、本校が所在する武蔵野市の課題や問題を見つけて、それを何とかしようというプロジェクトに年間を通して取り組んでいます。中学生の場合はこのように、割と長いスパンでじっくりやるものが多いですね」

 

石戸:「STEMあるいは、STEAMという授業をいつから始めたのですか」

 

品田氏:「それまで『情報』としてやってきた授業を『STEAM』というかたちにしたのは3年前からで、この4月から4年目に入ります。それまでも、今回紹介した『武蔵野市の問題解決』や『国際協力プロジェクト』といった課題は実施していましたが、それぞれ『総合』の時間の中でバラバラに行われていました。STEAMに至る発端は、本校の校長が、それらを中高一貫校の『一つの柱』にできないかと考えたことです」

 

石戸:「次の質問は『STEAMを導入してから生徒にどのような変化が出てきましたか』というものですが、いかがでしょうか」

 

品田氏:「説明する機会が多くなったことで、プレゼンテーション能力は向上したと思います。スライドやプレゼンテーション全体のデザインも、美術の先生の協力もあって私たち教員が作るものより美しく、『伝える』ことをすごく意識した作りになってきています。最近は、大学入試でも、決められた課題に関するプレゼンテーションを求めるものが増えていますので、そういった点で結果を出せる生徒が多くなっていることは実感しています」

 

石戸:「考える機会が多くなることで、思考の幅が広がる、あるいは思考が深まるといった効果も見込めるのではないかと思いますが、実感されることはありますか」

 

品田氏:「はい。『正解がひとつではない』課題を出すことで、『他人と違ってもいい』とか『その違いが面白い』といった、思考の幅の広がりが生まれますので、それを認めてあげることが重要です。取り組みを始めた頃は、『先生が思う答えはこれ』、『これが正解ですよね』など、どちらかというと『寄せていく』感じがありましたが、今では『去年の先輩たちはこういう答えを出したよ』と言うと、『いや、こういうのもありですよね』とか『こんなことをやってみたいです』と考えが発散していく方向に向いています。

 

もう一つ、すぐ先生に聞かず、自分たちで調べたり、詳しい人に聞いてみたりする行動力が付きましたね。中学生が武蔵野市役所に直接電話してみたり、いきなり交番でインタビューを試みて驚かれたり、そういったアクティブな感じも出てきています」

 

石戸:「学びに対するスタンスが変化しているのは素晴らしいですね。STEAM科目の学習目標と評価方法はどのようにしているのですか」

 

品田氏:「評価については非常に苦心しています。まず、『情報』の授業として実施していますので、評価も『情報』として付けなければなりません。『評価の半分はペーパーテストによる考査』という校内規定もありますので、アプリケーションやサービスの使い方や、プレゼンテーションのデザインの考え方などをペーパーテストで問う形で、情報の授業内で実施しています。

 

もう半分の考査外の部分は、今のところ、3人の担当教員で『この課題に関してはこういった基準でこういった配点』などと定めたルーブリックを作り、提出物の評価を付けていますが、正直、ペーパーテストの必要性には疑問を持っています。生徒から作品が提出されている以上、機器の操作やサービスの利用はできているはずで、改めてペーパーテストで確認する必要があるのか、というジレンマを抱えながら今日も定期考査をやってきたところです。

 

相互評価も試してみましたが、それで評価が大きく変わることはなかったので、あまり割合を高くせず、基本的には教員の評価でやっています。相互評価は、授業内でお互いを『このグループはすごい』とか『この人はすごい』という評価をするところで使う程度です」

 

石戸:「とても本質的な学びをされているのに、現状の評価の枠組みとうまく合致しないのは残念ですね」

 

品田氏:「どれだけ適正な評価ができているのかを学校内、保護者、もちろん生徒本人にも納得できる形にできれば、今やっているルーブリックでの100%評価も可能になっていくのかなとは思っていますが、まだ道半ばいうところです」

 

石戸:「次の質問は、『積極的に参加する子供と傍観者になってしまう子供のように生徒間の熱量の違い、温度差は起きないでしょうか』というものです。そのようなことが起きた場合に、どのようなサポートをされているのかを含めて教えていただけますか」

 

品田氏:「プロジェクトによって自分の関心がある/ないがはっきり表れますので、温度差は当然あります。対応としては、できるだけ少人数のグループ編成にして役割を持たせることと、役割を均等に振るのではなく、プレゼンテーションの中で喋るのが得意な生徒や、デザインで作り込んでいくのが得意な生徒といった個性を認めることで、例えば動画なら出演側と編集側でそれぞれの役割を与えるようにしています。

 

また、評価はグループ単位なので、自分がちゃんとやらないと他の生徒の評価にも関わってくることがあります。あまりいいやり方ではないかも知れませんが、そういう形である程度自分の役割に責任を持たせるようにしてはいますが、それでもうまくいかない生徒は確かにいます。

 

生徒の関心について言えば、火星の映画でも大失敗した経験があります。最初の年は、時間の制約もあって生徒には、予告編だけを見せたのです。私は映画も見て、小説も読んでいたので話がわかるのですが、生徒は予告編と説明だけではさっぱりわからず、全然課題に乗ってきてくれませんでした。

 

それで翌年からは、本編冒頭部分をしっかり見せるようにしたところ、生徒も物語に入り込めて、自分ごととして真剣に取り組んでくれるようになりました。課題を提示する側にはまだまだ工夫の余地があるということを痛感させられましたので、『ノってこない』生徒への対策に活かしていきたいと思います」

 

石戸:「今後このような学びを導入したいと考える学校が増えるのではないかなと思いますが、初期投資に関して費用をどうやって賄いましたかという質問です」

 

品田氏:「STEAM教育を始める前の7年前からiPadの導入と、校内Wi-Fiの整備を進めていますし、理事長や学校長に理解があって、モニターやプロジェクターなどもそれなりのコストをかけて導入しています。また、先ほどお話ししたように2名の支援員に加えて、学生のICTチューターを3名採用していいますが、そういった人的なサポートにも一定の費用がかかっています。

 

生徒側には、iPadの購入以外に金銭的な負担はお願いしていませんし、アプリケーションもApple純正やAdobeのサービスを利用しているほかは、購入しておりません。あまりそういうものに頼らずやっていく方針で、授業支援のアプリケーションとして中学校ではロイロ、高校ではMetaMojiなどを使っている程度ですので、保護者の負担も大きくないと思います」

 

石戸:「STEAMを始めて4年ということは、中高一貫校ですのでSTEAM以前の授業と両方を体験している子供もいることになりますが、反応はどうですか」

 

品田氏:「毎年この時期にアンケートを実施しているのですが、1年目は『教科書を使った授業をやってください』とか『WordやExcelの使い方を教えてください』というリクエストもありました。前の年までは、コンピュータールームで全員がWordで同じ文章を作っていたのが、いきなり『コンビニ経営のシミュレーション』ですから、生徒にも驚きはあったと思います。ただ2年目、3年目になると理解も進み、このようにメディアで取り上げられる機会も増え、学校説明会でもこうした授業に取り組んでいることを説明していますので随分スムーズになりました。

 

それと、高校から入ってくる生徒は、中学から上がってきてSTEAMに慣れた生徒と違い『誰かと相談してもいいよ』と言ってもすぐには動けない固さが残っています。そこで、入学から夏くらいまでは、ペーパータワーチャレンジのようなグループワークをいろいろやって、一つの正解ではなく、いろいろな考え方を求めているのだからどんどん意見を出していいんだよ、そういう意見を否定するのではなく、ブラッシュアップしていこうよといった形で、ほぐしながら授業に慣れさせています。

 

今年も年度末に授業アンケートを実施しますが、最近でも学年で2~3名程度は『教科書中心の授業の方がいいです』という生徒もいます。受験で苦しんでいる生徒にとっては負担が大きい面もあるので、教科書を覚えてテストでいい点を取るために、課題に時間をかけたくないという子供の気持ちはわかりますし、そういう意見も仕方ないと思います」

 

石戸:「最後の質問は、企業の人材開発の仕事をされている方からのものです。『先生の素晴らしい授業は企業の新人研修にも応用できると思いながら聞いていましたが、そのネタはどうやって着想するのか、その発想法について知りたい』ということですがいかがでしょうか」

 

品田氏:「ネタは本当に毎日考えていますが、SNSで世界中のさまざまな授業や活動を見ることができますし、国内外の先生を含むApple Distinguished Educatorのネットワークで『こういうことをやりたい」』と相談できる環境もあるので、仲間にアイデアを助けてもらいながら何とかやれています。ただ、プレゼンではいいところばかりお話ししましたが、失敗例は毎年たくさんあって、続けたりやめたり試行錯誤の繰り返しです。本当に毎日苦しいです」

 

最後は、石戸の「品田さんのご自身も学び続ける姿勢が、このような素晴らしい授業を生み出し、その姿勢が生徒達にも伝わっているのですね。本日は本当にどうもありがとうございました」という言葉でシンポジウムは幕を閉じた。

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