eスポーツは「学び」をどう変えていくのか
第23回オンラインシンポ「日米の教育現場における、eスポーツの可能性~NASEFの取り組み~」
レポート・後半

活動報告|レポート

2020.12.4 Fri
eスポーツは「学び」をどう変えていくのか</br>第23回オンラインシンポ「日米の教育現場における、eスポーツの可能性~NASEFの取り組み~」</br>レポート・後半

概要

超教育協会は2020年10月28日、北米教育eスポーツ連盟(North America Scholastic Esports Federation:以下、NASEF)のeスポーツ戦略室チーフの内藤裕志氏を招いて、「日米の教育現場における、eスポーツの可能性~NASEFの取り組み~」と題したオンラインシンポジウムを開催した。講演会の前半では内藤氏が、教育におけるeスポーツの可能性について、NASEFの取り組みを交えて紹介。後半は、超教育協会理事長の石戸奈々子を交えて参加者からの質疑応答が実施された。その後半の模様を紹介する。

 

>> 前半のレポートはこちら

 

「日米の教育現場における、eスポーツの可能性~NASEFの取り組み~」
■日時:2020年10月28日(水)12時~12時55分
■講演:内藤裕志氏 北米教育eスポーツ連盟(NASEF)eスポーツ戦略室チーフ
■ファシリテーター:石戸奈々子 超教育協会理事長

 

講演会の後半では、ファシリテーターの石戸より参加者から寄せられた質問が紹介され、内藤氏が回答するかたちで質疑応答が行われた。

 

▲ 写真・ファシリテーターを務めた超教育協会理事長の石戸奈々子

 

『ダメダメ』と拒絶するのではなく ルール化して「劇薬を治療薬に変える」意識改革が必要

 石戸:「早速質疑応答に入らせていただきます。『どんなゲームタイトルか』という質問が多いです。今後、日本で展開していくにあたり、教育的側面でポテンシャルの高いタイトルにはどういうものがいいのか、現場の皆さんが一番気になるポイントだと思います。基準のことや具体的なタイトル名を教えていただけますか」

 

内藤氏:「我々の選定で重要視しているのは、チーム戦など生徒たちが連携しながら役割を見つけて動けるゲームタイトルかどうかです。例えば『League of Legends』は、55のチームで行う戦略ゲームで、自分がこう動けば仲間はこうする、見えない相手にどう対応するかといった戦略的な対応力が求められます。また、ヘッドセットを使ってのコミュニケーション能力も必要で、味方が予期せぬ状況に陥ったときにどのように対処するかの臨機応変さなど、教育的に活用できるポイントがたくさんあります。

 

タイトルは、生徒が好んでやってくれるようなものをということで、『League of Legends』の他に『オーバーウォッチ(Overwatch)』『ロケットリーグ』『フォートナイト(Fortnite)』や『スマッシュブラザーズ』も人気です。

 

我々としては『マインクラフト(Minecraft)』を推しています。コロナの時期に世界から1500チームが参加して、人気のイベントになっていました。ただ戦うというより、課題に対して自分たちがどのように街を作っていくのかをコンテスト形式でトーナメントを組んだ事例でした」

 

石戸:「研究成果において、社会的感情学習が突出していたというお話がありましたが、あくまでもそのようなタイトルを選んでeスポーツの普及を行ったうえでの調査結果だからですよね」

 

内藤氏:「そうです。立ち上げ当初は明確な基準はなく走りながらやってきたものが調査結果の中にも反映されているかもしれません。あの研究をしたときはチームプレーで生徒たちが助け合いながら勝つための作戦会議するようなタイトルでした。コミュニケーションの取り方は普通のスポーツでもビジネスでも同じであると考えたところもあります。生徒たちがコミュニケーションをとりながら切磋琢磨できるタイトルを、毎年ボードメンバーの会議で選んでいます」

 

石戸:「アメリカなど具体的に広がっている国において、ネガティブな声はないのでしょうか。eスポーツはゲームというイメージがあって、ゲームは脳に悪いと指摘されることもありますし、日本では香川県がゲーム規制をするとした例もあります。質問でも、eスポーツによる体力低下、身体的な影響やリスクを心配する考え方があります。どんな対策をしているか教えてください」

 

内藤氏:「ネガティブな声はあります。私もゲームは大好きというほどではありませんので、批判する声も分かります。しかし批判されたとしても、次世代への可能性が広がるポテンシャルは非常に大きいと考えています。ネガティブな声をどう対応するかについては、学術研究を元に、生徒たちの成長の度合いをしっかり可視化することが対策になると思います。

 

また、保護者に対しての伝え方も重要です。日本で保護者の方が、『うちの子が閉じこもってゲームばかりやっていると思っていたのに、(eスポーツ大会の)ステージに立って、いろんな人たちのおかげで僕はここに立っています、と立派なことを言っている。感激した』という話も耳にしました。成果を保護者に見せる機会を作ってあげることも重要だと思います。

 

きちんとしたカリキュラムのもと、生徒たちはゲームで遊んでいるのではなく、ゲームを使って学んでいるのだということをしっかり見せてあげることよって、保護者やステークホルダーの方々の理解は高まり、意識変異をしていくことができます。我々も保護者へアプローチしています。

 

体力的なご質問については、我々はカリフォルニア州立大学アーバイン校と一緒に活動しているのですが、eスポーツで結果を出すためには集中力が必要で、運動能力を高めないと集中力は持続しない、といったことを提唱しながら、数時間ごとにリラックスするようなストレッチ運動など行って検証しています」

 

批判的な声は確かにありますが、禁止などしても生徒たちの『ゲームをしたい』気持ちを止めることができるのか、と思います。ゲームを教育の敵だと考えるのか、味方にできると考えるのか。そこが重要です。

 

アメリカのバスケットボールのプロリーグNBAのコービー・ブライアント選手が投資したスポーツクラブがロサンゼルスの近郊にあります。そのスポーツクラブの団体がeスポーツを取り入れ始めたので話を聞きました。彼らはこれまでもスポーツを通じて子どもたちの教育に関わってきましたが、子どもたちにもっと影響を与えたいと考え、『スポーツの敵だと思っていたゲームを味方につけた』そうです。

 

ゲームをするためのチームビルディングや集中力は、今までスポーツで伝えてきたことと一緒、それならばeスポーツゲームを使って次世代の育成をと考えたそうです。地域総合型スポーツクラブにeスポーツを取り入れたスタジオやアリーナを作って、現在も運営しています。

 

『ダメダメ』と拒絶するのではなく、適切にルール化してポジティブに、劇薬を治療薬に変えていくようなことも必要だと思います」

 

石戸:eスポーツの教育的価値を広めるためにも、効果の検証が大事だと思います。その方法について質問です。『教育的効果はどのようにして測っていますか。大会成績やプレーヤースキルで測るのも違うのかなと感じています』という質問です。具体的にはどのような指標で測定されていますか」

 

内藤氏:「勝ち負けのリーグをやっている団体もありますが、我々は、生徒たちにどんな学習的効果があったのか、どのような形で成長するのかを基軸にしています。『eスポーツをやったからこの科目の成績が伸びた』とは言いにくいものですから、大学の研究リサーチチームも含めて慎重に設計しています。

 

それから今後、調査したいのは、生徒たちのキャリアパスです。eスポーツを通じてどんな経験をしてどんなキャリアを選んでいくのか、その調査も継続していきたいと思っています」

 

石戸:eスポーツの位置づけに関する質問です。eスポーツはオリンピックの正式競技になるという話もあります。『米国ではeスポーツはスポーツとして認められているのでしょうか。日本でもスポーツとして認められるためには、何が必要でしょうか』という質問です」

 

内藤氏:「これはNASEFというより私個人的な見解でもよろしいでしょうか。アメリカでは総評して、eスポーツはスポーツとして認められる風潮にあると思っています。ESPNというスポーツ専門テレビチャンネルでは、ポーカーなどもマインドスポーツとして取り上げられており、そこにeスポーツやゲームも徐々に出始めています。スポーツチャンネルの中に枠組みができてきているので、スポーツとして受け入れられているのかなと思います。

 

オリンピックの種目になればeスポーツはもっと広がると思いますが、『eスポーツはスポーツですか』と聞かれると、私としては『どちらでもいいです』が答えです。スポーツかどうかというカテゴリよりも重要なことは、社会や子どもたちに与える効果です。eスポーツを行う人の考え方や行動は、スポーツをするアスリートの考え方や行動と共通項がとても多いのです。戦略性、コミュニケーション、チームビルディングなどですね。切磋琢磨して勝った負けたを決めることも同様です」

 

石戸:「ちなみに超教育協会も超eスポーツ学校というのを始めて、内藤さん、NASEFさんと連携していろいろやっていきましょうと考えています。経産省の報告書によるとeスポーツの市場規模は5年後に3000億円に達する可能性があり、それにあたっては学校教育機関の連携と人材育成や普及啓発が重要だということで、当協会も始めました。アメリカはじめ諸外国において、国や州からeスポーツに対する後押しのようなものはあるのですか」

 

内藤氏:「地域によってさまざまです。我々の拠点があるオレンジカウンティの例では、我々のスタッフの一人を教育委員会に配置して教育委員会としてeスポーツのプログラムを発信、開発していくようにしています。ポジティブに、新しく子どもたちの可能性を広げるツールとして捉えていただいているところも多いと感じています」

 

石戸:「超教育協会が始めたeスポーツ学校も、全国の学校のネットワークを作ったり、有識者のネットワークを作ったりしています。一緒に活動を希望される方は我々かNASEFの内藤さんにご連絡いただいてもかまいません。ぜひ活動ご一緒できれば思っています」

 

内藤氏:「このコロナ禍は、半年後1年後がどうなるか本当に分からない状況です。チャンスと思ったことは実行する、次世代のことを本気で考えないと世の中は進んでいかないと思っています。ゲームに関しても、社会的価値を変容していかないと、これからの産業としても次世代のためにも、ならないと思います。社会に価値変容を求められているもののひとつとして、eスポーツの社会的立ち位置を変えていけるといいなと思っております」

 

最後は石戸より「eスポーツを通じた新しい価値創造をしていきたいと思います。しっかり分析して皆さんからの信頼を得つつ、普及啓発に励んで行きたいと思いますので、eスポーツを引き続きよろしくお願いいたします」との言葉で、シンポジウムは幕を閉じた。

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