新たな教育の機会と価値をも創出するAI型教材 第16回オンラインシンポ「キュビナで授業時間が半分に! COMPASS今後の展望」レポート・後半

活動報告|レポート

2020.10.23 Fri
新たな教育の機会と価値をも創出するAI型教材 第16回オンラインシンポ「キュビナで授業時間が半分に! COMPASS今後の展望」レポート・後半

概要

超教育協会は2020年9月2日、株式会社COMPASS創業者 神野元基氏を招いて、「キュビナで授業時間が半分に! COMPASS今後の展望」と題したオンラインシンポジウムを開催した。講演会の前半では、神野氏がAI型教材「Qubena(キュビナ)」の概要と中学校での活用事例について紹介。後半は、超教育協会理事長の石戸奈々子を交え、参加者からの質疑応答が実施された。その後半の模様を紹介する。
 
>> 前半の記事はこちら
 
「キュビナで授業時間が半分に! COMPASS今後の展望」
■日時:2020年9月2日(水)12時~12時55分
■講演:神野元基氏 株式会社COMPASS創業者
■ファシリテータ:石戸奈々子 超教育協会理事長
 
講演会の後半には、参加者から寄せられた質問をファシリテータの石戸が紹介し、神野氏が回答する質疑応答が行われた。
 

▲ 写真・ファシリテーターを務めた超教育協会理事長の石戸奈々子

Qubenaで時間を生みだし その時間で未来を生き抜く力をつけてほしい

石戸:「ありがとうございました。広島県教育委員会会長の平川氏からの質問です。小学校でQubenaを活用した有効なデータはありますか。Qubenaは小学校から対応していますね。今回の事例は中学校以上でしたが、小学校で効果が出ている事例があれば教えていただけますか」
 
神野氏:「さいたま市のさとえ学園小学校は、2018年度からQubenaを導入し、授業も切り替えてきました。そのため、コロナ禍でもスムーズに家庭学習に移行できました。算数の授業では、全単元、児童の学びを止めないこともできました。この小学校は「宿題をなくす」ことを目指しているのですが、Qubenaで宿題を管理し、適切なアドバイスで学びの質を向上できました」
 
石戸:「Qubena Managerに関する質問です。教える側のスキルも重要と感じましたが、教員研修プログラムもあるのでしょうか」
 
神野氏:「あります。導入するだけではなく、どう使いこなしていくかを重要視し、現場の先生方と一緒に取り組んでいます。」
 
石戸:「Qubenaの導入は学校単位ですか?」
 
神野氏「私立に関しては学校単位で、公立学校の場合は基本的には自治体単位ですが、例えばある自治体では、市内全校導入を念頭に置きながら、まずはモデル校に導入するといったかたちで進めているところもあります。」
 
石戸:「Qubenaで、塾や家庭の学びのデータも含めて共有することで個人の学びの
質があがると思いますが、そのような取り組みはありますか。」
 
神野氏:「学習データの利活用の話ですね。それが実現できれば教育における最大のイノベーションだと思います。実際にデータの利活用を考えたとき、どれぐらい抽象的なデータにすれば、それぞれの学習サービスで活用できるのかという話し合いを他社と始めています。技術的な議論は進んでいる一方、個人情報の受け渡しを今後、制度的にどうしていくのかは問題です。
 
学習データは児童・生徒、もしくは保護者のものであって、私達が取得したデータは児童・生徒に返すべきだと思っています。子どもたちの許可で競合他社や塾用の教材にアクセスするかどうかを選択できるようにすれば、どの現場や教材からも最適な教育を受けられる、理念的にはこれが一番正しいのではないかと考えています」
 
石戸:「データポータビリティを担保したうえで、いろんな教材をどうシームレスにつなげられるかが課題であり、取り組みによって教育はかなり大きく変わると思います。実現するためにまずすべきことは何だと思いますか」
 
神野氏:「児童・生徒のID管理です。アカウントを作れたら、それにデータを紐づけて、児童・生徒たち自分達でデータを管理する形ができると思います」
 
石戸:「アダプティブラーニングはどのようなロジックで動いているのですか。記述式の問題をどのように採点しているのでしょうか」
 
神野氏:「単語で回答するような問題には対応していますが、長い文章を記述するような問題には現状、対応していません。Qubenaのアダプティブラーニングは公立高校の入試問題で8割得点できるぐらいを目指し、そのレベルまでいかに早く到達するかを考えています。
 
Qubenaは回答の正解・不正解を一瞬でフィードバックする教材で、『AIドリル』とも呼ばれています。サクサクと気持ちよい操作感で、知識を習得するのに最適なUIだと思っています。ただし、公立高校の残りの2割を得点するような難易度には対応していません。動画配信型で、情報を与えて理解できたかどうかは自己採点で進める教材とすればそのあたりにも対応することもできると思います。UI/UXによって、どこまで目指すかが決まってくると考えています」
 
石戸:「COMPASSとしては、ドリルにこだわるということですね」
 
神野氏:「Qubenaの開発にあたっては、『児童・生徒の時間を生みだし、その時間で未来を生き抜く力をつけてほしい』という発想が根底にあります。時間を最も短縮できるのは、知識や技能を獲得する学習をAIドリルで対応することだろうと考えています」
 
石戸:「他の科目も、ドリルで学習できるところは今後、開発していく予定ですか。」
 
神野氏:「2021年4月までに小中学校は全て5教科揃える予定です。国語、理科、社会すべて揃えます。なぜ算数・数学が最初だったかというと、『児童・生徒たちの時間を作りたい』観点で、小学校2年生の九九でつまずいた児童は、その後の算数、数学の時間がずっと無駄になっているということを改善したかったためです」
 
石戸:「GIGAスクール構想に関連して、ICT導入に消極的な自治体に導入を促すために何かされていますか。GIGAスクール構想が急激に進む中、ますます格差が広がるのではないかとの議論もあります」
 
神野氏:「私には、消極的だった自治体もここにきて積極的になってきたように見えます。3年の構想だったのが1年でやることになって、今は皆が混乱していますが、格差が出たとしても、ひとたび『この教育は素晴らしい』となれば、地方財政から捻出できない額ではないと思います。予算を出すための納得感があるかどうか、また近隣の自治体で効果が出るか様子を見てから始めようとしている自治体もある、その違いではないかと思います」
 
石戸:「Qubenaを活用し、個人の学習の質だけでなく教育全体の質を上げていくために、匿名化されたデータを活用する、例えば教育政策に生かす、教材の開発に生かすことは考えていますか」
 
神野氏:「国レベルで教育の質を上げるためにも、AI教材の開発各社の独自データを共有して活用したいと考えています。ただ、共有する際にどれだけ抽象化するべきなのか、例えば匿名性を上げすぎると、解析しても意味のないデータになってしまいます。また、各社のAIはアルゴリズムも、教育効果のアセスメントも違います。どう整合性を取っていくのかが鍵になると思います」
 
石戸:「学習ログを子ども個人に帰属させることに関連して、全ての子どもの個人用学習履歴を生涯に渡って確実に預けられる情報バンクのようなサービスが必要ではないかと思いますが、なにかイメージがあれば教えてください。」
 
神野氏:「現在はないです。1社がデータバンクのように持つよりは、自立分散させて全員で『情報の確からしさ』をやっていくことにしないと、改ざんされる恐れがあります。概念としてはブロックチェーンだと思いますが、それでは、その仕組みを誰が作るのか、国の協力もなければ実現できないと強く思います」
 
石戸:「先生に関する質問です。Qubenaの導入により先生の役割はどのように変わりますか。導入した学校の先生たちの変化はありますか」
 
神野氏:「麹町中学校では、先生が生徒の伴走者に変わっています。何かを教えるというより、一緒に学び考えて寄り添っていく存在になっていったと感じます。
 
最初は『本当にこれで成績上がるの?』という声もありました。しかし、やっていくに従って、生徒との対話の量が圧倒的に増えることが分かり、変化した後の生徒の成果を見て、『これいいね』と言ってもらえました。しかし始める前は、確実に先生たちからの抵抗は出ると思います」
 
石戸:「完全独学でも同じ効果が得られると思いますか。それとも先生のサポートがないと難しいものでしょうか。Qubenaは、ドリルとして独学でも成果が上がる設計なのでしょうか」
 
神野氏「通信教育が成功するのは数%だと言われていますが、一人で勉強できるタイプの子なら独学で効果が出ると思います。しかし、大多数は先生や、一緒に勉強する友達が周りにいたり、分からない瞬間に分からないと言えたり、息抜きに話せたり、緩急がないと学びの継続が難しいです。だからこそ『伴走者』、つまり先生の役割が大切になるのです」
 
石戸「学習塾への導入はどう対応されていますか。また、個人にQubenaをサービ
スとして提供する予定はありますか。」
 
神野氏:「数学の高校生向けコンテンツ、英語は河合塾と一緒に作っており、導入していますが現在のメインは『学校教育』ですね。
 
あわせて、今、目指しているのは、一人一台のタブレット端末に確実にQubenaを搭載することです。それによって、不登校など学校に来られない児童や生徒にも学校からの配布物として、Qubenaを届けられる。ここに照準を当てています」
 
石戸:「学習ログ活用について、教育分野に限定せず、購買履歴など他分野の情報と結び付けることで、教育の質をより上げられる可能性もあります。この分野と連携を検討しているといったお考えはありますか」
 
神野氏:「私がライフワークとしてやりたいのは、『子どもたち一人ひとりの人生を科学する』という世界です。どんな知識や技能を身につけて、どの世界でどう生きればどう年収に跳ね返るのか、どう幸福につながるのかを解き明かしたい。その視点では、学習ログを人材業界で活用するといったことも考えられます。どんな学習歴を持った子どもが、その後、どんな会社のどんなポジションにつき、どんな人間関係の中で人生を送ったのか。ただ、学習ログの活用には乗り越えなければならない壁があまりにも多いので、今はできるところにフォーカスしています」
 
石戸:「今後の展開についてもお伺いします。海外市場をどう考えていますか」
 
神野氏:「諸外国においては、ここまで徹底して効率良く教えたり、データを管理して義務教育を実践している国の例はありません。GIGAスクール構想の成果が上がったら、国単位で導入したいといった声が途上国を中心に聞こえてくるかもしれません。
 
そうなったとき、例えば世界で共通のプラットフォームとデータフォーマットで教育を実践することができれば、アフリカで勉強した子が日本に来たときシームレスに学び続けられます。日本からベトナムに行ったとき両国の教育課程を同時に受けられる、そんなことができるような仕組みを構築したいと考えています」
 
石戸:「日本の学校教育で一番変えるべきだと思うのは、どんなところですか」
 
神野氏:「変えるべきところはたったひとつで、今こそ学校が主役だよ、とみんなが理解することです。
 
日本がもう一度立ち上がるためには、学校がどう変わるかがすべてだと思います。学校の先生方、教育委員会の方々には、日本を救えるのはあなた方しかいない、ということを分かっていただきたい、そう思いながら活動しています」
 
最後に石戸の「学校はもともと地域における中心であり最先端の場所であったと思います。改めて社会における学校のあり方、位置づけをみんなで議論できるといいですね」という締めの言葉でシンポジウムは幕を閉じた。

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