「費用が0円」の留学で世界へ飛び出すきっかけを
第188回オンラインシンポレポート・後半

活動報告|レポート

2025.8.8 Fri
「費用が0円」の留学で世界へ飛び出すきっかけを</br>第188回オンラインシンポレポート・後半

概要

超教育協会は2025年64日、株式会社ストロングジャパンホールディングス 代表取締役CEOの寺本 雄平氏を招いて、「セブ島留学[CBEA]Cebu Buisiness English Academy~日本人が海外に出る際のハードルを最大限0に近付ける仕事と英語を学ぶ【セブ島0円留学】の実態とは」と題したオンラインシンポジウムを開催した。

 

シンポジウムの前半では、寺本氏が「セブ島0円留学」の制度や特徴について講演し、後半では超教育協会理事長の石戸 奈々子をファシリテーターに、視聴者からの質問を織り交ぜながら質疑応答が実施された。その後半の模様を紹介する。

 

>> 前半のレポートはこちら

 

「セブ島留学[CBEA]Cebu Buisiness English Academy~日本人が海外に出る際のハードルを最大限0に近付ける仕事と英語を学ぶ【セブ島0円留学】の実態とは」

日時:2025年64(水) 12時~1255

講演:寺本 雄平氏
株式会社ストロングジャパンホールディングス 代表取締役
CEO 

■ファシリテーター:石戸 奈々子
超教育協会理事長

 

▲ 写真・ファシリテーターを務めた
超教育協会理事長の石戸 奈々子

 

シンポジウムの後半では、超教育協会の石戸 奈々子をファシリテーターに、視聴者からの質問を織り交ぜながら質疑応答が実施された。

英語教育カリキュラムの質をどう担保しているのかプログラム終了後のキャリア支援などに関心が

石戸:「『カリキュラムとしての質を保つために講師となる方はどのような研修をしているのか』という質問がきています。いかがでしょうか」

 

寺本氏:「先生たちの教育に関しては、日本人スタッフがある程度ハンドリングをしている部分がありますが、フィリピン人の先生の中でも、役職によるピラミッド的なものが完成されていまして、週に2回チームリーダーとなっている先生たちが教え方の研修を実施します。そして月に1回、先生たちのレベルがしっかりと一定に保たれているかのテストを実施する形で、英語のレッスンの質は担保しています」

 

石戸:「もうひとつカリキュラムに関する質問がきています。『語学とビジネススキルを同時に育成するプログラムとなっているわけですが、どのような教育設計を工夫しているのか』というものです。両方を両立させ、なおかつ両方の相乗効果が生まれるために、どのようなカリキュラムデザインの工夫をしていますか」

 

寺本氏:「英語力ゼロの状態で来ていただく方がほとんどですので、最初はありがちなリーディングやライティング、スピーキングなど一般的なところからスタートしますが、3カ月目からは実際にビジネスシーンを模したプレゼンテーションや、ビジネスメールはどう書くのか、日常会話で使う英語の言葉をビジネスシーンではどういった言い換えをするのかなど、ビジネスを絡めたカリキュラムを提供します。また、時代ごとに英語の話し方も変わってきている状況なので、それに合わせた『今まさに使われている英語』を教えるカリキュラムを組んでいます」

 

石戸:「実際にこの留学制度を使いたい方が多いということですが、どういう年齢層で、どういうキャリアプランを考えている人たちが、御社のセブ島留学を希望されるのでしょうか」

 

寺本氏:「コロナ前においては、大学3年生、4年生の方々が、履歴書に留学経験があると書きたい、留学をしてみたいけれどお金がない、ゆくゆくは海外でお仕事できたら良いなどの理由で問い合わせてくることが多かったです。コロナ禍以降は、20代前半から中盤で1回もしくは2は日本の会社で勤務をした経験のある人が非常に増えています。その背景には、このまま日本で普通に会社員をしていたら、私の人生はあまり楽しくないかもしれないと漠然とした不安を感じている層、いったん海外に出てグローバル人材になりたいと考えている層が増えていることがあると思います」

 

石戸:「語学学習として行くというよりは、海外に飛び出したいと思っている方がそのステップとして活用しているケースが多いというイメージでしょうか」

 

寺本氏:「その通りです」

 

石戸:「視聴者は、初等中等教育に関心がある教育関係の企業の方が多いですが、最近、留学も低年齢化していて、場合によっては幼少期に親子で留学するというケースも聞きます。御社としてそういったことに取り組んでいたり、もしくは取り組もうとしているのか。また、留学市場の変化について教えてください」

 

寺本氏:「当校としては、親子留学にもコロナ明けから力を入れています。当校は保育所と託児所も経営しているセブ島では特殊な学校となっていますので、生後6カ月の乳幼児と保護者の方の受け入れができます。コロナ前では親子留学というとファミリーで1~2週間来て、『旅行プラスα』のようなことを経験して帰っていくようなケースがほとんどでした。それがコロナ明けからは、このままで良いのかと現状に不安を持っている方々、特にお母様の層が多くて、母子移住とか母子留学という形でセブ島に渡ってくる方が増えています。子どもに小さな頃から英語をマスターさせたい、かつ日本は閉鎖的だと感じている方がけっこういらっしゃるようです。豊かな人間に育って欲しいという感覚で海外に移住してくる方々が非常に多くなっていると感じていますので、我々も託児所と保育所を少しずつ大きくしているような状況です」

 

石戸:「御社が提供しているビジネスの両輪の中で新しい形で語学留学するケースなどありましたが、『留学』のトピックに限ると、ここ数年での変化はありますか」

 

寺本氏:「母親と子どもが一緒に留学するケースが非常に増えているのがひとつ。あとは、セブ島留学では以前は日本人、中国人、韓国人の留学生で大体9割を占めており、正直、現地に行っても触れ合えるのは東アジアの方とフィリピン人の先生のみで、やはり英語を学ぶために行くという感じでした。コロナが明けてからは、セブ島に来る留学生の層も変わってきたこともあり、出会った人と一生の友人になるケースが多いようです。ここは変わってきたポイントかなと思っています」

 

石戸:「語学学習だけを捉えてみると、生成AIが出てきて英語教育の在り方が大きく変わるのではないか、さらに言うと自動翻訳がかなりの精度になってくるなかで英語を学ぶことの意味をもう一回、問い直す必要があるという議論が起こりつつあります。寺本さんが考えているビジネスにも影響があると思いますが、どういう変化を感じているか、そして御社のビジネスとしてどう変化をしようとしているかについて教えていただけますか」

 

寺本氏:「やはり、もう留学をして英語を学ぶだけではあまり意味がないと思っています。生成AI、チャットGPT、Google翻訳を使って簡単に英訳ができてしまう世の中になっています。ただ、そういった生成AIを使って例えば彼女とか彼氏、パートナーさんとお話をしたいか、またビジネスパートナーとお話したいかとなると、そうではないと思っています。やはり、ある程度の英語力を養うベースの部分で留学を活用していただくのは良いと思います。実際に現地に渡っていただいて、現地の雰囲気を知っていただいて、日本人以外の方々がどんな生活、どんな価値観で生きていて、今後どうやって世界で戦おうと思っているか、そんなところにリアルに触れ合っていただくのが、私が提供したい留学のメインテーマです。環境的な経験8割、英語が2割くらいの感覚で海外に渡っていただいて、現地を知ってもらう、感じてもらうのが大きなポイントだと思っています」

 

石戸:「なぜ、次の展開がマルタ共和国、セルビア、ジョージアなのですか。非常に魅力的だとは思いますが、何が理由でしょうか」

 

寺本氏:「英語教育が我々としてもやりやすく、かつ日本人も一番学びたい言語は英語なので、まずは英語が話されている国ということでその3つの国を選定しています。

 

また、物価水準が日本より若干下回るもしくは同水準の国を選定しています。例えばマルタであればセブ島水準の費用感で運営できますので、0円留学ができるであろうと考えました。セルビア、ジョージアについては、今失業率が非常に高まっていますので、ある程度コストを抑えて英語が話せる先生を採用することができます。0円留学は、その費用を賄えるだけの仕事を我々が用意して留学生にやってもらい、充当させるというビジネスモデルになりますので、それを例えばアメリカやドバイでやってしまうと、充当させることができなくなってしまいます。そこのコスト感が合う国を選定しています」

 

石戸:「視聴者から、『地域との関わりで意識していることはどのようなことですか』という質問がきています。私も気になる点で、仕事もしながら留学生が地域の方々に受け入れられることも大事だと思います。地域の皆様との関係性において留意していることや、こういう関係の築き方をしていることがありましたら教えてください」

 

寺本氏:「ありがちなことでいえば、現地のボランティアを月に2回やっています。日本人である我々がセブ島でビジネスをさせていただくためには、現地の皆様の協力が必要ですので、まずフィリピン人の雇用をできるだけ創出することを重要視しています。仕事が足りていないというフィリピンの現状もありますので。あとはさまざまなビジネスを展開していく中で、お客様とサービスを提供する側に分けるのではなく、一緒にコミュニケーションを取れる環境を常に用意するよう努めています」

 

石戸:「視聴者から、『実際に参加者からどういう声が上がっているか』という質問や、『先のキャリアについての支援があるのか』という質問がきています。参加者の声や、参加した後のキャリアにどういった変化があるのか、キャリアに対してどういうサポートをしているのかについても教えてください」

 

寺本氏:「参加者の方々から一番いただく声は、留学は私の人生では無理だと思っていたけれど、この0円留学に出会って半年、1年間と行けたのは本当にありがたいという言葉です。留学後のキャリアにおいては、日本人が海外で働くための、グローバル転職ナビという転職サービスを行っています。さらにキャリアカウンセラーを設置して、アメリカで働きたいのか、フィリピンに残りたいのかカナダに行きたいのか、そういったことをキャリアカウンセリングして、かつその働き先の会社の人事担当者と折衝してしっかりと転職成功まで導くといったサポートをしています。

 

もともとはボランティアでやっていましたが、会社としてこれはビジネスになるということで、2年前にグローバル転職ナビというサポート体制をスタートしています。皆様のキャリアの変わり方で言いますと、最初0円留学に行く前は、留学が終わったら日本に戻ってきてある程度英語が使える会社で働こうと思っていましたという方々が7割くらいでしたが、実際に0円留学を終えた約半数の方々はフィリピンに留まる、もしくは他の国に挑戦をしています」

 

石戸:「視聴者から、不登校や軽度発達障害の方の支援も視野に入れていると聞いての質問です。『南国ではポジティブになる要素があるということですが、マルタやセルビアではホームシックやうつ病のリスクは大丈夫でしょうか。退学離脱者の割合やサポート体制も伺いたい』というものです。メンタルケアが必要な方もいるなかで、うまくいくケースもあるかもしれませんが、100%うまくいくわけではないと思います。そういう方にどういったサポートをしているのか。実際問題としてどのくらい離脱者がいるのか、それに対してメンタル含めてのサポート体制はどのように整備しているのかについては、いかがでしょうか」

 

寺本氏:「不登校や軽度発達障害の方を受け入れる取り組み自体を始めたのが去年からですので、実績が現状で6名と少ない実績値になりますが、6名のうち3名が途中で帰国をして離脱しています。残り3名においてはまだ頑張ってセブ島0円留学を継続してくれていますが、定期的にホームシックやモヤモヤしてテンションが下がってしまうことはあります。そこについては学校医がしっかり心理カウンセリング的なことをして、メンタルケアをしています。実際にこの取り組みをスタートする前に、不登校にもかかわらずご自身でセブ島に来て成功して、今、セブ島で働いている人が2名、当校の卒業生にいますので、彼らをメンター的に配置して、ここに至るまで自分にはどんなことがあったのか話してもらうこともしています。セブ島とマルタは南国なので、陽気なパワーで何とか推進できるでしょうが、セルビア、ジョージアとなりますと国の雰囲気がガラッと変わりますので、そこを引きこもりや不登校の方々の受け入れ先とするかはまだ決めていません。もしかすると、南国だけでそういった方々は受け入れていくことになるかと想定しています」

 

石戸:「6名中半分戻ったということですが、0円留学全体ではどうですか。離脱者はどのぐらいでしょうか」

 

寺本氏:「0円留学全体で言いますと、1割が途中離脱します。理由は、セブ島という環境が合わなかった、水が合わない、食べ物が合わない、臭い虫がいるなどがひとつ。もうひとつは、想像していたより仕事をがっちりやらされるのが合わなかったという理由です。この2パターンで帰国するのが1割程度というところです」

 

石戸:「『移住のプランについてもっと詳しく聞きたいです』という質問がきていますがいかがですか」

 

寺本氏:「我々はあくまで学校の運営者、教育事業者なので、学校に通いたいのであれば教育を施すことができますが、それ以上のサポートは現状やっていません。FOR RENTという不動産会社を運営しており、そちらでは航空券の取得のサポートからお住まいの手配をしています。現地でお仕事をする際には転職エージェントで仕事の斡旋をしますし、当社の正社員を希望されるのであれば選考させていただきます。あとはインターナショナルスクール、プライベートスクールに入ってみたいという方であれば、創業の時にスタートした留学のエージェント業、代理店業でサポートするという形で、それこそセブ島で経済圏を生み出すような形でトータルサポートできるような状況です」

 

石戸:「日本を良くするためにこの事業を始めたという話が最初にありました。何人かの方から、『日本の教育をこれからどうすれば良いか、日本の教育に欠けている視点は何か』という質問がきています。日本の教育に関して一言お願いします」

 

寺本氏:「私は、この実践型の教育が今後日本の成長における肝になってくると思います。義務教育の中に、実際に渡航を伴う留学が入ることによって、日本人が海外に出る可能性が増え、グローバル人材の育成につながると思っています。そんな実践型つまりは留学の義務教育化をしてほしいです。私がそれを推進するくらいの立場になるように、今後、頑張っていきたいと思っています」

 

最後は石戸の「語学を学習する以上に多様な価値観、多様な文化の方々と触れ合う経験というのは、その後の人生において大きな影響を与えるのではないかと思いますし、そのような経験が幼少期からできると良いですね」という言葉でシンポジウムは幕を閉じた。

おすすめ記事

他カテゴリーを見る