第1回超学校公開ワーキンググループレポート

プロジェクト活動|レポート

2020.2.10 Mon

概要

1月16日に、超学校ワーキンググループ設立に際して、公開ワーキンググループを開催しました。
 
前半では、始めに超教育協会石戸奈々子理事長より問題提起を発表し、その後各登壇者より5分間のプレゼンテーションが行われました。
 
■日時 :2020年1月16日(木)16:00~18:00
■場所 :東京大学本郷キャンパス 山上会館2F大会議室  
■主催 :一般社団法人超教育協会

参加メンバー

岡嶋裕史  中央大学 国際情報学部 教授
佐久間彩乃 学校法人角川ドワンゴ学園( N高等学校 )
出口治明  立命館アジア太平洋大学 学長
内藤賢司  ゼロ高等学院 校長
中村伊知哉 iU 学長
柳沢幸雄  開成高等学校・中学校 校長、東京大学名誉教授
稲蔭正彦  慶應義塾大学大学院 メディアデザイン研究科 委員長・教授
石戸奈々子 超教育協会 理事長

問題提起

超教育協会理事長 石戸奈々子

2011年に、大学入試問題をヤフー知恵袋に投稿してカンニングする事件があった。受験者が行ったことはルール違反であるが、これこそが社会が求める力ではないだろうか。社会に出て求められるのは、あらゆる手段を使って最適解を導き出すこと。それならば本来入試が図るべき力というのは、この生徒が行ったことなのではないか。つまり遅れているのは入試の方なのではないか。
 
MITメディアラボのシーモア・パパード先生がこんなことを言っていた。「タイムマシンを使って150年前の外科医を今の時代に連れてきても、まったく役に立たない。だけど150年前の先生は教卓に立たせても同じように授業ができるだろう。150年間教育というものは全く変わってこなかった。」しかし、今技術が大きく進展する中で、技術と教育を変えられる可能性がある。
当時、MITで行われていたプロジェクトが『OLPC 100ドルパソコンプロジェクト』。学校も建てられない、先生も雇えない、教科書も買えない。そんな地域のこどもにネットワークがつながったパソコンを渡すことこそが、すべてのこどもに学習機会を提供すること。つまり教育改革プロジェクトだった。
 
テクノロジーの力で、これまでの知識・記憶の暗記型の学びから思考・創造型の学びに変革したい。そのような想いからCANVASという団体を立ち上げ活動してきた。だが、学校外だけでは50万人ほどのこどもにしか学習機会が届かなかった。
 
日本の小中学生1千万人に21世紀型の新しい学びを提供する1つのきっかけとなるのが教育の情報化。まず最も難しい初等中等教育から教育の情報化にとりくもうと、デジタル教科書プロジェクトを2010年から始めた。

経済対策で1人1台情報端末を整備することになったが、学校の情報化について日本は非常に後進国だ。このような議論をしていると必ず言われるのがコストのこと。しかし教育にもっとお金をかけてもてもよいのではないか。
 
AIやIoTの技術が牽引するsociety5.0の議論が進んでいるが、学校はかなり遅れをとっている。今やるべきことは、キャッチアップと世界最先端のsociety5.0時代の学びを作ること。両方を実行できるよう、超教育協会という団体を立ち上げて活動している。

技術の進化はこれからを生きるにあたって必要な力を大きく変化させる。それは当然のことながら、学びの環境の変化も求める。そして、学びの変化をもたらしてくれるのもまた技術の力だ。society5.0を迎えるにあたって教育をリデザインしていく試みは、今回超学校ワーキングのテーマである。すべて学習者を主体とした、従来の学校の枠を取り払った新しい学習環境を理解することが必要だ。
 
【超スマート人材の育成】

  • イノベーターの育成
  • 産業「超スマート化」力強化
  • 全国民の「超スマート」リテラシー強化
  • この3つのレイヤーによって産業界と連携、先端技術を導入しながら教育のリデザインをしていきたい。
     
    私たちはこのような新しい学びを作ることを「超教育」と呼んでいる。新しい技術は、教科、試験、学校など、学びの内容・環境・評価を問い直す変化をもたらす可能性がある。

     
    教科面ではAIが教科を横断する超個別学習を実現するだろう。そのためのカリキュラム再編成も求めらる。それは検定や学習指導要領の内容や存在を問うことになり得る。
    また、ブロックチェーンで学習履歴を全て蓄積することで、試験をする必要がなくなる。入試のあり方を問うことになる。
    そうした変化により、学年や学校など教育機関の枠を超える学習環境をデザインすることができるようになる。学校制度のあり方自体も問うことになり得る。
    今日はこの3点に関して、次の学びはどうあるべきか、次の学校はどうあるべきか、メンバーで議論していきたい。

サブカルチャーを通した学び

岡嶋裕史  中央大学 国際情報学部 教授

私は現在大学で教鞭をとっているが、入門書を執筆したり、テレビで入門者向けの番組を作ったりなどにも注力している。今の若い世代は、昔の軍艦について詳しく知らないのが普通だが、『艦隊これくしょん』(※軍艦が擬人化されたキャラクターを育成するゲーム)が流行った時に詳しい子が増えた。キャラクターに凝集させると知識は無理なく身につく。そこで、悪名高いIT系の3文字略語4文字略語を擬人化してキャラクターにし、技術書をベースにコミックやアニメを作った。

 
キャラクターをつかうと、学生はすごく楽しんでくれる。私自身は、教育コンテンツをエンターテインメント化することはあまり好んでない。興味が持てないなら無理をしなくてよいと思う一方で、入口で興味が持てなければ集中ができない子もたくさんいる。そういった子を救う意味でもこの活動には意味があると思っている。

 
このような教材・アクティビティでも学ぶことができ、到達目標を達成することができれば単位認定するという仕組みを作っていくというのは今後大事なこと。私の実子も発達障害がある。コミュニケーションに障害があると学校という枠に入るのはとても難しい。今発達障害のあるこども達が増えていると言われている中で、教育を受けることができ将来自分の希望する職業に就けるのか、それとも生活保護を受けて暮らすのかで、日本という国の形が大きく変わってくる。発達障害があるこども達の多くが、サブカルチャーと親和性が高い。私も実子と一緒にサブカルチャーで学ぶという事を実験しているが、すごく集中して楽しんでいる。後でその議論もしていきたい。

N高等学校について

佐久間彩乃 学校法人角川ドワンゴ学園( N高等学校 )

N高等学校(以下N高)は、2016年にIT企業のdwangoと出版社のKADOKAWAが母体となってできた新しい高校。通信制の制度を利用した新しいネットの高校をつくる、というコンセプトでスタートした。
通信制高校生の悩みは、友達に高校名を言えないことと友達が作れないこと。私たちはこの2点に重きを置き、N高を自慢のできる高校に、そしてネットで友達が作れる高校を目指した。
 
N高生は、ネットを利用して自分の好きなようにカリキュラムを組むことが可能。登下校の時間や授業時間が短縮できるため、より多くの時間を自分がやりたい勉強に費やすことができる。高校生のうちから自分の好きなことを見つけて、将来に役立ててほしいという想いで、課外授業に力をいれている。大学受験コースでは自宅にいながら進学校レベルの高度な授業を受けることもできる。プログラミング教育は、dwangoの新人研修を元にしているため、実践的な内容だと評価をもらっている。

 
またN高では学校生活を大体ネットで完結することを目指している。slackというチャットツールを使って、担任の先生やクラスメイトとのやり取りができるので、ホームルームもslack上で行っている。その他学校生活に欠かせない部活・遠足・運動会などもすべてネット上で実施。e-スポーツ部に関してはすでに日本一の強豪校になった。このようなコンセプトが受け入れられ、現時点での生徒数が12,000名を超えるなど急成長している。

 
卒業生の進路決定率について、全国の全日制の高校93.4%に比べて通信制の高校は61.5%と進路未定者が4割を占めている。そんな中N高は、81.8%と比較的高い数値となっている。引き続き100%に近づけるように努力していく。 
 
卒業生の合格実績も国公立・私大・海外の大学などで合格者が出ており、AOや推薦入試は昨年に比べて2~3倍くらいのペースで増えている。N高生が、年末年始もフィギュアスケートやe-スポーツ、将棋で活躍していた。今後もN高生の活躍を見守ってほしい。 

立命館アジア太平洋大学(APU)が目指す教育

出口治明  立命館アジア太平洋大学 学長

[動画での学校紹介 2分39秒]

これが立命館アジア太平洋大学(以下、APU)。学生6,000人のうち約半数が92もの国や地域から来ている。ほとんどの学生がundergraduate(学部生)。このビデオは、3年前にタイ人の学生が自分でドローンを飛ばして自主制作したもの。この学生は現在、ベトナム人と日本人と3人で、別府でプロモーションビデオのベンチャー企業を起業して大活躍している。APUはこのような学生を育てたいと考えている。
 
昔は名講義を行って、学生をうっとりさせるのが理想の大学だった。現在の科学が明らかにしたところでは、どんなにすばらしい名講義を行っても本人に興味がなければ単位をとった瞬間に忘れてしまう。そのためAPUは、学生が学びたいことややりたいことを徹底的に教職員が支援するというのを理念にしている。
 
日本がこの30年間衰退したのは原因がはっきりしていて、新しい産業を生み出せなかったからだ。新しい産業を生み出すのは、ダイバーシティと高学歴がキーワードになっている。APUはダイバーシティについては自信がある。9月の卒業生がダイレクトにハーバードへ進学したが、大学院への進学も一所懸命応援している。
もう1つ私たちがモットーにしているのが混ぜる教育。世界は広く色んな人がいる。英語と日本語が入り混じる大学を作っているのは、混ぜて初めて人間は鍛えられると考えているから。ラグビーと同じで、日本人だけでは国際競争に勝てない。
 
最後に教育費の国際比較のデータを紹介する。OECD諸国と比べて、日本は教育にお金を使っていない。国民負担率でみると、日本は税金が安い国。でも給付は平均よりも上。このようにプライマリーバランスが崩れているのが全て。お金がないから教育費に使えない。小負担中給付でちょっとしか集めないのにたくさん配っている。これがこの国の構造的な問題。

ゼロ高等学校の紹介

内藤賢司  ゼロ高等学院 校長

ゼロ高等学校(以下、ゼロ高)について、まず2人の生徒が作った動画を通して紹介する。
 
「家に眠っているカードゲーム・ボードゲーム等を宮城県丸森町に届けたい」

 
「寿司職人を目指しているゼロ高生のしんくん」
https://twitter.com/zero_highschool/status/1198807396493053954
(ゼロ高校公式Twitterの動画へリンク)
 
このようにゼロ高生は、プログラミングコンテストで優勝したり、伊豆大島でワークショップを開催したり、ECショップが1秒で完売する『Uchi BREWING』というビール工場に参加したり、堀江貴文さんが関わっていたりなど様々な活動を通して学んでいる。
一般的な学校だとテストで100点をとることを目指すが、私たちの学校では生徒自身が答えを見つけることを目標にしている。テストの点数が評価されるのではなく、試行錯誤の回数で評価をしている。

新しい大学iU

中村伊知哉 iU(情報経営イノベーション専門職大学)学長

私は現在慶應義塾大学で教鞭をとっているが、2か月後に退任し新しい大学iUを作り学長になる。情報=ICTと経営=ビジネスでイノベーションを起こす専門職(プロフェッショナル)を生む大学にしようと思っている。正式名称は情報経営イノベーション専門職大学という日本一長い名前の大学だが、略してiUという。

 
iUは、5点を実行する。

  1. 産学連携
  2. 8割産業界
  3. 客員200名
  4. 全員入社
  5. 全員企業

 
産学連携ではすでに200社が協力の申し出があり、先生を派遣してもらったり、プロジェクトを一緒に進めたりしていくことになっている。専任教員27名のうち8割が産業界出身だが、授業はあまり行わない。レクチャーはオンラインのアーカイブ。キャンバスでは、プロジェクト・ベースド・ラーニングを行っていく。

 
客員教授は目標の100名を超えたので、200名に変えた。学生は1学年200名の大学なので学生よりも教授の方が多い大学ということになる。学生全員が企業に半年インターンに行って、会社で学ぶ。さらに全員が入社できる会社を作ろうとも思っている。これは世界初だと思うが、学生全員が4年うちに1度は会社作りにチャレンジする。全員が企業に成功して、就職率ゼロを目指す。
 
先ほどカンニング事件について話があったが、パソコン・ネットありの入試にしたい。その上でやりたいと思っているのが、協働コース設置や単位互換/修了認定といった超学校連携。新入りだがiUができることを差し出すので、学校の枠を超えて皆さんと連携していきたい。例えばいくつもの大学・大学院が社会人向けにAI、ロボット、あるいはe-スポーツといったテーマのエクスペンシブコースを作る。それを大学・高専・高校・中学校と連携をして単位互換を出していく、認定をするという事をしたい。高校生に先取りで単位をあげて、入学即卒業資格のようなことも。制度上、どこまで認められるかわからないが実証実験に挑戦したい。

個性を育てる学校

柳沢幸雄  開成高等学校・中学校 校長、東京大学名誉教授

『開成』という学校をどのようにイメージしているか。
良いイメージだと、東大合格者数が38年連続トップの超進学校。文武両道の学校。1学年300名(高校は400名)と規模が大きく、広い分野にOBが多数存在するなど。
でも影ではこのように思われているのではないか。超進学校で、生徒は青白い顔をして勉強付け。文武両道は、文化の香りのない体育会系。汗臭くて古い。人数規模が大きくきめ細かな指導が行われていない。
 
影で言われているイメージには下記のように答えることができる。

  • 超進学校
  • →課外活動に夢中になる中で、短い時間で勉強をする

  • 文武両道
  • →体育祭でなく総合力を結集する運動
     大規模な絵画に挑戦したり、作曲に取り組んだりと創造力も結集させる

  • 1学年300名
  • →生徒が自ら考えるように、課外活動を通じたきめ細かな指導を実施

 
開成の教育は、『自由』を基調としゴールは『開物成務』=一人一人の素質を開かせ、人としての務め、例えば仕事をして納税して社会貢献をすること。そのために学校では、生徒の自主性や自律性といった資質を育てる。「自分は××になりたい、○○で生きていきたい」と生徒が言えるようになれば集団教育は終わりで、後は個別教育。そして卒業した後に自分の素質を活かして社会に貢献することを目指していく。
 
内閣府『若者白書・国際比較から見る日本の若者意識の現状』を見ると、日本の若者の自己肯定感・自信が諸外国に比べて低いことがわかる。

これからの時代は、否応なく国際化が進む。日本の若者は、諸外国の人たちと戦っていくために自己肯定感をもっと高めなければならない。自己肯定感を高めるには、自主性や自律性を育てる教育が必要である。開成の生徒に同じように自己肯定感について質問をしたところ、非常に自己肯定感が強く、自信がある生徒が多かった。それはなぜかというと自分で計画し、自分で実行するから。自己肯定感・自信の源泉は、自主的行動と自律的行動から得た達成感。
 
– 与えられたものではなく、自分で自主的に選んだ事柄を
– 自分で考え、困難に遭遇しても、自律的に活動して
– 困難を乗り越え、成果に到達することができる
このような楽しい時間が自主性、自律性の源となる。開成の生徒は、毎日学校に来るのを楽しみにしている。なぜかというと開成はダメと言わないから。生徒に考えさせ、やってみさせる。目では見るが口は出さない。止めるときはダメと言わずにまず考えさせる。それが開成のモットー。

2030年以降の社会を担う人材とは

稲蔭正彦  慶應義塾⼤学⼤学院 メディアデザイン研究科 委員長・教授

2030年以降の社会を担う人材は、どのようであってほしいだろうか?
現在、自然災害などの予測不能な事態が起きている。さらにデジタルトランスフォーメーションというような新しい技術が次から次へと誕生し、社会変革が予想以上のスピードで起こっている。このような時代において、さらに未来の2030年について想像するのは難しい。しかし、教育は若い世代を育てる責務があるため、未来に必要な力を予測する必要がある。私は、「自分たちがこんな社会になってほしい」と思い描き、そこから逆算をして新しい人材教育を考えていくというプロセスを大事にしている。ある種、『未来学』と言われるようなジャンルに属している。何を創るのかというよりも、もしこうだったらという問いをすることによって現在とは全く違う未来感を描くことができる。未来を描く最良の方法は夢を見ることだと考えている。

 
私にとって理想的な未来の社会は、クリエイティブな社会。家庭内でも公共の場所でも創造性があふれている社会というのは、私だけの理想ではなくAlibabaを創設したJack Ma氏もAIに関するシンポジウムの中でいくつか大事な発言をしている。AIがもっと加速して、社会に浸透した近未来において人材はどのような役割を果たすだろうか、という質問に対して、彼は「当然クリエイティブであり、アートなどの文化に接することができるような人間らしさをもった人たちが活躍する。そういうようなことを人が担い、ルーティンワークはAIが行ってくれる」と答えており、ある種私が思い描いているのに近い発言をしていた。
 
このような社会を生きる人材を育成するにあたり必要な視点を3つ紹介する。

  1. CRIEITIVITY(課題解決から価値提案へ)
  2. 今は、会社でも大学でも課題を見つけて解決するというメカニズムでプロジェクトをうごかしている。新しい社会を作るには、より新しい今ない価値を創造することが大事になる。そのためには好奇心、空想力、独創性を育てる必要がある。つまり様々な失敗を価値として、失敗から学ぶことを評価する新しい物差しが必要なのではないか。

  3. HUMANISM(画一から個性へ)
  4. 今多くの教育が画一的な教育になっている。大学入試でも、その力が評価される。
    個性が評価されることが必要。

  5. DIVERSITY(競争から協調・共存へ)
  6. 人だけではなく、その他の動植物・自然との共存という社会の新しい相関を身に着けていく人材が必要。

 
2030年以降は、人間力の時代を迎える。人間力を養えるような教育が必要である。

ディスカッション

後半では、モデレーターを石戸奈々子がつとめ、下記3つのテーマに沿って参加メンバーのみなさまとディスカッションをしました。
・各学校が育みたい力
・日本の教育の課題
・これからの学習環境を作る為にすべきことはなにかの具体的アクションの提案

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