超教育協会シンポジウム「異業種参入相次ぐプログラミング教育市場」レポート(1/2) 

活動報告|レポート

2019.12.5 Thu
超教育協会シンポジウム「異業種参入相次ぐプログラミング教育市場」レポート(1/2) 

概要

プログラミング事業に参入されている企業にご登壇いただき、参入した経緯、サービスの紹介、今後の展望などパネルディスカッション形式で議論するシンポジウムを開催いたしました。朝から大雨が降り電車のダイヤも乱れていましたが立ち見がでる満員御礼のシンポジウムとなりました。
前半のプレゼンテーション内容のレポートです。
 
後半・ディスカッションのレポートはこちら
超教育協会シンポジウム 「異業種参入相次ぐプログラミング教育市場」レポート(2/2)
 
日時: 2019年12月2日(月)10:30~12:00
会場: 紀尾井フォーラム
主催: 一般社団法人超教育協会、NPO法人CANVAS

参加メンバー

※50音順 ※敬称略
石川あゆみ 東急株式会社 沿線生活創造事業部ウェルネス推進グループ課長代理
石崎隆行  株式会社タミヤ 営業部 営業課
上野朝大  株式会社サイバーエージェント エデュケーション事業部部長 
門脇哲太郎 ソフトバンクグループ株式会社 総務部CSRグループ
末廣章介  株式会社ディー・エヌ・エー CSR推進グループプログラミングゼミ開発者
田那辺輝  株式会社ミクシィ 開発本部CTO室  
成瀬允宣  GMOインターネット株式会社 デベロッパーリレーションズチーム デベロッパーエバンジェリスト
西尾勇気  LINE株式会社 公共政策室社会連携チーム マネージャー
石戸奈々子 超教育協会理事長、NPO法人CANVAS理事長

人型ロボットで最先端の学びを

門脇哲太郎 ソフトバンクグループ株式会社 総務部CSRグループ

ソフトバンクにとって次世代育成は最重要テーマ。社会貢献事業として「プログラミング教育支援」「ICTを活用した部活支援」を行っている。プログラミング教育事業に関してはPepperを活用して推進。全国850校で実践をしており、授業回数は3万回にも。登校時から放課後まで活用できるよう、英語での絵本読み聞かせ、4教科での反復学習、あいさつ運動、学校行事案内、ラジオ体操など複数の学校向けロボアプリを提供している。またプログラミング以外でも先生方がPepperを補助教員として授業をつくることができるよう、スクールテンプレートも用意している。

Pepperプログラミング教育の特徴は「自ら課題を発見し、解決方法を考え、社会実装する」教材であること。自分の行動が社会に貢献していくことを実体験してもらいたいと考えている。
小学校での実践例では、図書室で貸し出される本の偏りをなくすための解決方法を考え実装。実際に多様な分類の本が読まれるようになったか効果を検証し結果をまとめるところまで行う。中学校での実践例では、外国人観光客増加の方法を検討し実証実験をすることで地域振興に役立てた。課題の設定、情報収集、整理・分析、結果のまとめまでを生徒たちが行う。
東京工業大学との共同研究でカリキュラムの効果測定をしたところ批判的思考態度が育まれたことがわかった。なお批判的思考態度は探究心、証拠の重視、授業の受け方、論理的思考の自覚、客観性、意見の聞き方、考えの深め方の7つの尺度で測定している。
今後も人型ロボットで最先端の学びを提供していきたい。

「モノ」と「コト」の観点から推進するプログラミング(STEM)教育

石崎隆行 株式会社タミヤ 営業部 営業課

タミヤはプログラミング(STEM)教育を「モノ」と「コト」の観点から推進している。プラモデル・競技用のラジコン・ミニ四駆などを軸としつつ、50年以上工作教材を学校現場に提供してきた。タミヤがはじめてプログラミング教育に関する「モノ」を出したのは2017年8月。カムプログラムロボット工作セット。プログラムバーにカムをセットし、プログラムをすることで動きをセットしたり、またマイコンをセットしてプログラムすることもできる。その後チェーンプログラムロボット工作セット、micro:bitを採用したマイコンロボット工作セットも発売。

「モノ」を売るだけではなく、使う環境も整備したいという想いから、2018年4月よりタミヤロボットスクールをスタート。29都道府県で94教室を福井のソフトウェア開発会社・ナチュラルスタイルと連携して運営している。ナチュラルスタイルは、2015年からichigojamを使って全国で啓蒙活動を行っていた。1日限りのイベントではなくこども達が深く長く学べる環境を作りたいという想いが合致し、協働することになった。ロボットプログラミングコースとコンピュータを使わないメカニックコースを用意。体系的なカリキュラムを実施するとともに、指導者育成にも力を入れている。

ネットリテラシー啓発活動のノウハウを生かしたプログラミング教育

西尾勇気 LINE株式会社 公共政策室社会連携チーム マネージャー

LINEのコーポレートミッションは、CLOSING THE DISTANCE=世界中の人と人、人と情報・サービスとの距離を縮めること。2011年に「LINEいじめ」という言葉が生まれた経緯から、企業としてこども達や社会と向き合っていくため、ネットリテラシー啓発活動をスタート。教材開発、講演活動や調査・研究などを通じて、啓発普及に力を注いできた。その延長で今年の9月からプログラミング教育支援も開始。学校現場の声を踏まえ、先生方の不安を解消することを目的とし、無料のプログラミング学習プラットフォーム「LINE entry」を開発・展開。現場で求められているプログラミング教育をテーマに、授業で活用できるよう学習指導要領に沿った教科・学年別の教材を無料で提供する他、小学校への出前授業も実施。また授業振興や進捗管理もできるクラスルーム機能もある。先生が扱いやすく準備時間が短くなる教材を目指している。10月末にリリースし6本の教材を公開している。

小学校1年生から使えるLINE entryの特徴は「みんなが楽しい」「無料」「先生向けコンテンツが充実」「クラスルーム機能」「オープンプラットフォーム」の5つ。来年度以降もロボット教材やアンプラグド教材など先生方が取り組みやすい教材をリリースしていくとともに、家庭でも取り組める環境を整備していく。
※韓国では2019年から全小学校で「entry」によるプログラミング教育がスタートしています。そのインタビューは過去のこちらの記事をご参照ください。
[CSforALL]2019年から韓国の全小学校で 「エントリー」によるプログラミング教育がスタート

世界のSHIBUYAを目指し、教育支援の取り組みをスタート

石川あゆみ 東急株式会社 沿線生活創造事業部ウェルネス推進グループ課長代理

サステナブルな「街」、「企業」、「人」をつくるという経営計画のもと、渋谷及び沿線の再開発を重点施策として掲げている。その中で、子育て世代に向けた良質な教育環境の整備は重要な論点。100年に1度の大規模再開発を迎える渋谷は、世界のSHIBUYAを目指し、教育支援の取り組みをスタート。

2019年6月に、渋谷区、サイバーエージェント、DeNA、GMO、mixi、東急がプログラミング事業に関する協定を締結し、「Kids Valley未来の学びプロジェクト」を立ち上げた。
渋谷だからこそ可能な官民連携による次世代教育モデルを実現し、世界で活躍する人材を育成するとともに日本のプログラミング教育を牽引することを目指している。取り組みを通じて育成したいのは「自らのアイデアを自由に表現する力としてプログラミングの技能を養い、発展的に社会に活用する意欲を持つ人材」としている。今後カリキュラムの開発、教員研修、授業支援、ワークショップイベント等の展開を予定。今年の夏からキャリア支援として企業訪問の受け入れも開始している。また大学等学術機関との連携スキームを構築、他地域への展開も検討していく。

「もっとやりたい」想いに応える継続的な学習の場、
「極めたい」子どもたちのための「出る杭を伸ばす」流れ作り

上野朝大 株式会社サイバーエージェント エデュケーション事業部部長 
 
サイバーエージェントのプログラミング教育推進については、サイバーエージェントエデュケーション事業部、(株)CA Tech Kids、(株)キュレオを率いる上野朝大氏が登壇。体験型イベントで「楽しい」という最初のキッカケを提供し、継続型スクールで「もっとやりたい」想いに応える継続的な学習の場を提供。そして「極めたい」子どもたちのために奨学金制度やコンテスト・検定を用意し「出る杭を伸ばす」流れを、民間と公共の両方で取り組んでいる。
きっかけづくりとなる体験ワークショップ「Tech Kids CAMP」の参加者数は、4年間で10倍伸び、今年は1600人の参加があった。もっとも力をいれているのが継続的な学習の場の提供としてのTech Kids School。こちらは生徒数が4年間で20倍に増え、現在1200名。「テクノロジーを武器として、自らのアイデアを実現し、社会に能動的に働きかける人」の育成を目指している。

Tech Kids Schoolではプログラミング的思考に留まらない有用な技術としてのプログラミングを教えることを目指し、1年目はScratchを学び、2年目以降はiPhoneアプリ開発コースもしくはUnityプログラミングコースに進むカリキュラムとなっている。すでに生徒たちから多数のアプリがリリースされている。しかし、このモデルを普及していくのは難しい。そこでビジュアルプログラミングを楽しく手軽にしっかり学べるプログラミング教室としてキュレオプログラミング教室をスタート。キュレオプログラミング教室とTech Kids Schoolを足し、全国で1000教室を突破している。
その他、小学生のためのプログラミングコンテストやプログラミング検定を実施。公教育向けプログラミング教育普及活動に関しては、全国の自治体、小学校で100回を超える出張授業を実施中。今後や渋谷区・Kids Valleyでの展開を始めとした、他企業との連携での公教育への貢献活動を進めていく。

プラグドとアンプラグドの両者の垣根をなくすプログラミング教育

成瀬允宣  GMOインターネット株式会社 デベロッパーリレーションズチーム デベロッパーエバンジェリスト

GMOは、「すべての人にインターネットを」というコーポレートキャッチに様々な事業を行っている。その中でもプログラミング教育に関しては、プログラミング教室ポータルサイト「コエテコ」を運営してきた。渋谷区・Kids Valleyに参画することになり、プログラミングイベントも実施。テーマとして据えているのは、プラグドとアンプラグドの両者の垣根をなくすこと。スイカ割りのプログラム化に挑戦してもらい、順次・条件分岐・くり返しの3つを90分で学ぶ。「90度回す→10歩動かす→ぼうをふりおろす」という動作で順次を、スイカにふれたかどうかで成功か否かを表現することで条件分岐を学ぶ。スイカがたくさんあったら、コンピュータが得意とするくり返しが役に立つことを学んでいく。その上で、三角形や星を描くプログラムにも挑戦していく。最後に実際によく使われているテキストプログラミングでも同じように順次・条件分岐・くり返しの3つをを組み合わせていることを確認し、身の回りで使われている技術だという事を伝えることを大切にしている。

プラグドとアンプラグドを地続きにするカリキュラムを先生方にも伝えていきたいが、課題は教える側の不足という認識。指導者研修会にも力を入れていく。

インターネット企業として強みと特徴を活かした社会貢献活動

末廣章介 株式会社ディー・エヌ・エー CSR推進グループプログラミングゼミ開発者

DeNAは、インターネット企業として強みと特徴を活かした社会貢献活動を実施。具体的には、プログラミング教育・企業訪問学習・ネットマナー教育の3つを通じて次世代IT育成支援を行っている。2014年からプログラミング教育をスタートし、6000人以上に授業体験を提供。低年齢層に体験してもらえるように、プログラミングゼミというアプリを無料でリリース。誰でもどこでも気軽にプログラミング体験できる教材。

[ プログラミングゼミの特徴 ]
1. 自分で描いた絵が動きだす意欲を高めるインタフェース
タブレットの一番良いところはカメラ機能があるところ。自分の絵が動くと子どもたちは感動する。描いた絵をそのまま使ってプログラミングをしている。子どもたちが使い慣れた画材を使用できるため、表現、イメージがしやすく、図工などの作品を活用できるというメリットも。
2. 低学年から使え、基礎から応用、創作まで楽しみながら学べる
発達段階に配慮し、教員児童からのフィードバックを反映し、50音キーボード、ひらがな・カタカナ表記を取り入れている。また、プログラミングスキルやブロックの組み方を楽しみながら習得する「基礎」から、みんなの作品を参考にしながら発展した内容を理解する「応用」、自分が描いた絵を取り組んでオリジナル作品をつくる「創作」まで、段階を追って学ぶことができるようになっている。
3. 公教育での導入実績
すでに複数の小学校で導入されており、98%以上の児童が「楽しかった」「もっと授業を受けたい」と回答している。
4. マルチデバイス対応、オフライン使用可能
また、使用時間制限、作品の公開設定、スキルレベルの設定機能、カリキュラム案・入御事例の公開など保護者先生向けのサポート機能もついている。

企業訪問プログラムとプログラミング教育

田那辺輝 株式会社ミクシィ 開発本部CTO室

次世代育成の取り組みとして、企業訪問プログラムとプログラミング教育支援を行っている。企業訪問プログラムに関してはIT業界の仕事について、エンジニアの仕事やプログラミングについて、インターネットやスマートフォンの安全な使い方についてなどに取り組んでいる。IT業界やゲーム開発に興味を持つ学生が増えていることから2019年よりプログラミング教育支援を開始。

Kids valleyに参画している他、中学校と連携しプログラミング教育支援やプログラミング学習クラブ支援等を行っている。
 
以上で、前半の企各業のプレゼンテーションを終了した。

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