オンライン授業5~ドイツ(後半)

コラム・インタビュー|インタビュー

2020.5.7 Thu

概要

 あやこさん家族が住むのは、南ドイツのバーデンビュルテンベルグ州、州都シュトゥットガルトから80kmほど離れたフロイデンシュタット市。人口3万人くらいの小さな街ですが、ドイツの中でもコロナウイルス感染者数が多い地域であり、3月下旬から街は完全にロックダウンしました。買い物に行っていいのも各家庭から一人のみ。スーパーの中では1.8メートルの距離を取らなければなりません。取り締まりもあるため、市民はしっかりとルールを守っています。
 
 ドイツでは州ごとに教育内容も異なるため、あくまでも一例ではありますが、後半ではオンライン学習のための環境整備や家庭学習、小学生卒業後の進路について伺いました。
 
関連リンク: オンライン授業5~ドイツ(前半)

オンライン学習のための環境整備

 休校が長期化するにあたり、ドイツ政府からパソコン等の端末を持たない家庭の子どもに一人当たり150ユーロを支給し、全生徒がオンライン教育を受けられる環境を整備するとアナウンスがありました。支給方法は各学校への現金支給。
「貧困家庭の子どもが教育の機会を奪われる状況を生み出してはならない。デジタルテクノロジーの利用は21世紀の教育のあり方であり、今後も推進されるべきである。そういう考えから、合計5億ユーロ以上の支給が決定されたようです。」

▲ ビデオカンファレンスツールAlfaviewを使った算数の授業の様子

 
 また、ロックダウンが始まる数週間前に市内のすべてのエリアでWiFiがつながるようにネットワークが整備されたといいます。そのことは4月3日の市長のSNSへの投稿で知ったそうです。
「通信費もかからないので、150ユーロ支給されれば、オンラインでの学習が可能だと思います。」
通常の端末の使用状況をたずねると、小学校では使っていないものの、11歳以上の子どもが通う中学校では、日常的に1人1台タブレットやパソコンを持って授業を受けています。課題もワード等を使い、メールで提出することが多いといいます。

ドイツでの家庭学習

 さて、あやこさんは、ドイツに移住し、日本の小学校と比較してあまりにも授業が少ないので当初は戸惑ったといいます。ドイツは家族で過ごす時間をとても重視する国です。日曜日はすべてのお店が閉まり、平日も家族でランチを食べる習慣のある家庭があります。労働時間が短く、学校も午前中で終わります。学童の制限も厳しく、両親とも午後まで働かなくてはいけない理由のある家庭以外は申請が通りません。
 
 そこで、学校入学時に授業の補填として有料のおすすめソフト(SofatutorやAnton)が案内されており、日々それを使っています。「ロックダウン後はそれを使う頻度が増えたといったところでしょうか。」日本のいいところは学校で完結していることだとあやこさん。「ドイツは70%くらい学校で習ってきて残りは自分次第というやり方です。」

▲ オンライン教材Sofatutor

【Sofatutor】
https://www.sofatutor.com/

▲ オンライン教材Anton

 
 コロナによる休校で民間企業がたくさんのデジタル教材を無料で提供し始めましたが、日常的に活用しているソフトが非常に良くできており、それ以外の教材をつかうことはありません。学校は午前で終わるため、日頃から宿題が多く、家で学習する習慣が身についています。そのため、休校時の家庭学習もさほど難しくなかったと言います。もちろん学習面だけではなく、家での過ごし方、家族との過ごし方に慣れているため、親子ともにストレスにはなっていません。「家族で過ごせる時間が増えて良かったね、と話しています。」

▲ オンライン教材Sofatutorを利用しながら算数の課題を解いている様子

 
余談ですが、ドイツでは働き方の自由度が高く、多くの女性が子どもが学校にいる間のみ働いているそうです。ベースの労働時間が短く、残業は能力のなさの証明という意識があるため残業する人も少ない。「男女問わず、子どもがいる家庭の働き方が柔軟だなと感じます。」
 さて、学校が午前中で終わるため、習い事も盛んです。そしてそれらもすぐにオンラインに切り替わりました。ギター、ピアノ、歌、バレー。どれもスカイプです。

リサさん、マサトさん、ケントさんもこれまで通っていた片道100キロの日本語補習校がオンラインになったため、負担軽減になり、オンラインの恩恵を授かっているようです。

小学校卒業後の進路

 家族の時間を重視し、学校の時間は極めて少ないドイツの子どもたちは、小学校卒業後どのような進路をたどるのでしょうか。ドイツでは小学4年生から進路が大きく分かれます。中等教育の学校は、ハウプトシューレ(基幹学校: 9年生または10年生まで)、レアルシューレ(実科学校: 10年生まで)、ギムナジウム(進学校: 12年生または13年生まで)の3種類から選択をします。以前のように大学進学進路と職業訓練進路に明確に分かれているわけでもなく、成績と希望次第で学年を飛び越すこともコース変更も可能ですし,基幹学校や実科学校を出た後に大学進学への道も開かれているため、進路変更の柔軟性が担保されていますが,最初の大きな分岐点であることは事実です。
しかし、中等教育に優劣はないと言います。あくまでも子どもの適性に合わせて選択するのです。個性を大事にしており、自分のやりたいことを自分の力にあったやり方でやるのがドイツの教育。だからこそ、小学校でも飛び級、落第もあります。さらに突出した力がある子どもは午後に特別学校に通う権利が与えられます。ケントさんは特別学校にも通っていますが、そちらは今は休校中。
「日本の感覚だとギムナジウムに行ったほうがいいのかなと思いましたが、ここでは進路は本人に決めさせるべきだし、無理をさせるのは親のエゴであり本人に良くない、と言われます。ドイツはみんな違うのが当たり前なので親もプレッシャーを感じることなく過ごしやすいです。」

最後に

ドイツでは伸ばす子は伸ばす、遅れをとっている子はサポートをする。あくまでも一人ひとりに適した授業を提供するのがドイツ流学校。
 個別最適化した学びの提供にICTは大きな武器になります。これから本格的にスタートするドイツのオンライン教育の導入の仕方に引き続き注目していきたいと思います。

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