小学校から高校まで「連続性のある」スタディログを活用
第96回オンラインシンポレポート・後半

活動報告|レポート

2022.9.16 Fri
小学校から高校まで「連続性のある」スタディログを活用<br>第96回オンラインシンポレポート・後半

概要

超教育協会は202283日、高知県教育委員会事務局 教育政策課 武市 正人氏を招いて、「全国初!独自学習支援プラットフォームでデータを一元化 個別最適な学びの実現へ ~ 高知県」と題したオンラインシンポジウムを開催した。

 

シンポジウムの前半では武市氏が、高知県の公立の小・中・高校で導入・活用されている独自開発の学習支援プラットフォーム「高知家まなびばこ」とスタスタディログを活用した個別最適な学びの実現に向けた取り組みを紹介。後半は、超教育協会理事長の石戸 奈々子をファシリテーターに、参加者を交えての質疑応答が実施された。その後半の模様を紹介する。

 

>> 前半のレポートはこちら

 

「全国初!独自学習支援プラットフォームでデータを一元化 個別最適な学びの実現へ ~ 高知県」

■日時:202283日(水)12時~1255

■講演:武市 正人氏
高知県教育委員会事務局 教育政策課

■ファシリテーター:石戸 奈々子
超教育協会理事長

 

▲ 写真・ファシリテーターを務めた
超教育協会理事長の石戸 奈々子

 

シンポジウムの後半では、超教育協会理事長の石戸 奈々子をファシリテーターに、参加者からの質問も織り交ぜながら、質疑応答が実施された。

スタディログやライフログなどデータの取り扱いに関する質問が多数

 

石戸:「ありがとうございます。早速、開発や運用の実態について詳細に関する質問がたくさん届いています。『開発は誰が中心となり、どれくらいのメンバーで、構想から実装までどのぐらいの時間をかけたのか』といった質問や、『教育委員会では何名くらいで対応しているのか、アウトソーシングが主体なのか』といった質問です。いかがでしょうか」

 

武市氏:「『高知家まなびばこ』の開発期間は、教材のデジタル化も含めて半年ぐらいでした。Googleのサイトなので、教材の準備ができればサイトを整えていくだけなので、すごく時間がかかるものではないと思います。きもちメーターについても同様です。

 

実際の運用に当たっているのは、県教育委員会の専任2名と補助2名、委託先が専任ではないですが8名ほどです。

 

スタディログの開発については、県教育委員会だけでは進められず、デジタルドリルの企業とも協力しなければならないため、時間がかかっています。特にデータのやり取りをどうするか、実際の画面はどうするかなども検討し、準備期間から1年ぐらいはかかっていると思います」

 

石戸:「運用を始めてまだそれほど経っていないと思いますが、児童・生徒、教員、保護者の反応や変化について教えていただけますか」

 

武市氏:「まず、教員は、教材や動画、Googleのツールも含め、現場ではよく『高知家まなびばこ』を活用していると思います。教員からは『こんな資料、(あればよいけど)載らないの』というようなリクエストをもらうこともあります。他にも高知県の首長部局からは『学生の就職に役立つコンテンツを作っているから掲載してほしい』といったような話もきています。活用が広がっていると感じます。

 

児童・生徒の活用では、別室登校している児童・生徒が、別室で『まなびばこ』の教材を使って勉強したり、教室とオンラインでつないで教室の授業を聞きながら学んだり、といったことも行われています。

 

県教委の我々は、保護者の方から直接お話を聞く機会は少ないのですが、保護者の方から『親も見たい』というご意見をいただくこともあります。保護者の方へのアカウントは発行していないので、『お子さんに見せてもらってください』で対応しています。

 

このプラットフォームを作ったことにより、『このプラットフォームでこんなことはできないか』、『いろんな使い方ができる』という議論が進んでいます」

 

石戸:「転入出したときの対応に関する質問もきています。『県内での進学や転入出により所属が変わる場合、誰がどのタイミングでデータのメンテナンスを行うのか』、『県外に転出する場合、その児童・生徒のデータはどのように取り扱われるのか』という質問もきています」

 

武市氏:「県内で公立学校に進学する場合、生徒の移動元、移動先の市町村及び県の教育委員会で協力してアカウントの移動処理を行っています。県外の学校の場合は、Google個人のアカウントを作ってもらい、そちらにデータを移行することで、本人が学習した履歴を持って行けるようになっています。特に高校卒業する生徒に向けては、個人のアカウントに移行するようお知らせしています」

 

石戸:「データの取り扱いについて、たくさんの質問がきています。『学習ログを取ることに関して、生徒や保護者にどのような説明をしているのか』、『所有権はどのように定義し、どのように説明しているのか』などです。いかがでしょうか」

 

武市氏:「スタディログ、デジタルドリルの会社のデータについては現在、整理をしているところで、どうするかはこれから決めていきます。『高知家まなびばこ』では、まずGoogleアカウントを使うことへの同意があります。そこで、データの扱いに関する同意を取得している状態です。県立学校では、利用の手引きをよく読んで、『利用に同意してください』と、最初に同意書をもらうようにしました」

 

石戸:「学習ログとライフログに関する質問もきています。『どの範囲でログを取っているのか、例えば視聴した動画のログも取っているのか』という質問です。それと、『ライフログに関しては授業外ということで、教員の指導が入りづらい面もあると思うが、なんらかのサポートがあるのか知りたい』、『ライフログに関しては、特にプライバシー保護に注意が必要ではないかという視点から、学習データ連携との区分けはどのようにしているのか』という質問です。いかがでしょうか」

 

武市氏:「学習データの方はGoogleフォームで、自分にも入力した内容がメールで返ってくるので、データが貯まっていきます。県教育委員会で閲覧履歴を管理するようなことは一切していません。Web閲覧についてはフィルターをかけていて、閲覧制限がかかっています。

 

ライフログについては、基本的に学校内で閉じられて、学校外には見えない状態になっています。学校で、紙で保管しているのと同じ状況です。我々さえも中身は見られないのです。現場でどう使われているかは、聞きに行かないと分からないので情報は集まりにくいです。生徒にとっても、『学校にしか伝わらない(秘密にされる)』ことは当然の前提になります。そこを超えることはしていません」

 

石戸:「質問した方の意図としては、ライフログを取ることによって、子どもたちの小さな声が届き、より子どもたちの日々の生活の困りごと支援に寄与できるのではないか、ということだと思いました。今後ライフログの使い方のよい事例がたくさん生まれて欲しいです。

 

外部連携に関してもさまざまな質問がきています。一つ目は『民間事業者のサービスは、スタディログの提供方法やデータ形式などそれぞれ異なり、事業者と調整が必要だと思います。1社ずつ話し合っているのですか』という質問です。どのように民間企業のサービスと連携しているのかお聞かせください」

 

武市氏:「現時点では、各社とそれぞれ調整しています。どんなデータがあってどんなやり取りができて、頻度はどうするか、など全て個別に話をしています。手間も時間もかかりますし、『うちはデータを出せません』という会社もあります。文部科学省がデータのやり取りを標準化する動きはありますが、実際にデータが集まると何が見えてくるのか、何がメリットなのかが明らかにならないと具体的な議論も進められないともいえます。高知県としては、複数社と個別に調整してでも、まずやらなければならないこととして、進めています」

 

石戸:「さきほど県外転出に関して、児童・生徒本人がデータを利活用できるというお話がありましたが、『今後の展開として、保護者や本人の要請があれば外部の塾など、外部機関とのデータ連携も考えているのか』との質問がきています。いかがでしょうか」

 

武市氏:「将来的にはそのような議論も出てくると思います。現状、本人が自分のアカウントで確認したものを塾に見せること自体はできますし制限もしていません。ただ、それを機械化してより効率的な方法で、となると議論が必要になると思います」

 

石戸:「『独自開発された理由を知りたい』、『課題意識についてもう少し詳しく知りたい』、『教育委員会、学校現場、児童生徒のメリットやニーズに基づく説明をしてほしい』という質問や、『実際に構築しようとなった時の一番の障壁は何でしたか』といった質問もあります。いかがでしょうか」

 

武市氏:「市町村教育委員会へのメリットに基づいた説明ということでは、県教育委員会と連携して、学校を絞って実証しながら『このデータがこのように見えるようになったとき、どういった改善ができるか』を一緒に考えていくスタイルを取りました。このようなシステムは、現場が使えないものを作っても意味がないです。データ活用することの必要性については意見が一致しますが、実際どんなデータがどう揃えば現場で活用できるのかは、『一緒に考えましょう』ということです。何かメリットやデメリットで衝突することは起こっていません。

 

独自開発をした理由は、県としては民間の学習eポータルを使う選択肢もありますが、今のところ各社とも、スタディログに関するサービス内容がまだ明らかではないですし、ビジネスモデルを作るにも時間がかかるでしょう。また、例えば地方版学力調査を取り込もうとしたときに、選んだ民間の学習eポータルではそれに対応できないとなると、個別開発のお願いが必要になります。そういうことを考え合わせると、自分たちでコントロールできることが重要だと考えて、独自開発を選びました。

 

こうした学習支援プラットフォームを県で整えていくことにはメリットがあります。教員は異動しますし、児童生徒も転入出しますが、そんなときでも同じ環境を継続して使えます。市町村の教育委員会と深く話をしたわけではありませんが、そこについてもメリットを感じてもらえると思います」

 

石戸:「自分たちが実現したいものをしっかり実装できる設計をしたいという視点から、独自開発されたということだと思います。開発するにあたっては、民間のさまざまなサービスを参考にされたと思いますが、結果として他のサービスとの違いがあれば教えていただけますか」

 

武市氏:「さきほどお見せしたような形でスタディログを表示して、これをベースに指導を改善していくのだ、というところに独自性があると思います。我々の取り組みがよかったという結果がきちんと出れば、民間事業者も同じような機能を作るようになるのではないかと思います」

 

石戸:「データ活用に関しての質問です。『教員の働き方が問題になっている中、先生方は技術的にも時間的にもデータを活用していくことが厳しいのではないか、どのような対策を取られているのか』という質問です。ご意見を伺いたいと思います」

 

武市氏:「先生方は本当に皆さん忙しいので、どこまでデータ活用できるかは課題になると思います。一方で、全県的に同様の仕組みが入ることで、例えば『データをこう見て、こう声かけしてください』という統一した内容で研修ができることになります。教員年次研修のような場で紹介するなど、市町村を越えた研修を行うことができます。

 

また、先生の異動があったとしても、それによって『前のところではこうしていた』というノウハウが現場に貯まっていくことも起きていきます。なるべくコストを下げながら現場で活用してもらうことができるようになると思っています。

 

実際の現場では、例えば全国学力調査が終わったタイミングなどなど年12回は『ものすごく手間のかかるデータ分析作業』があるのです。日常的に更新されるデータを毎日見ていくことも同様に大変だと思われているかもしれませんが、先生方にはなるべく日常の中で情報をつかみ、声かけしていくことができるようになってもらうことが大事だと思っています。その結果、児童・生徒に声かけしやすくなる、保護者に説明しやすくなるのなら、一方で負担があるとしてもやるべきことであると考えます。そこに負担がかかる分、別の働き方改革でなんとかする選択肢も取れます。全体的に考えながら調整していくことになると思います」

 

石戸:「これからが本格的にスタートということもあると思いますが、未来に向けた展望をお聞かせください」

 

「これが成功しました、と我々が言えれば、これを参考にデータ活用が進んでいくと思います。頑張りますのでよろしくお願いします」という武市氏の言葉でシンポジウムの幕は閉じた。

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