遊びながらプログラミングも学び、モノづくりに夢中になれるロボットトイ
第72回オンラインシンポ「デジタル・STEAM時代こそ夢中になれるリアルなプログラミングを~ロボットtoioの事例から~」
レポート・後半

活動報告|レポート

2022.1.21 Fri
遊びながらプログラミングも学び、モノづくりに夢中になれるロボットトイ<br>第72回オンラインシンポ「デジタル・STEAM時代こそ夢中になれるリアルなプログラミングを~ロボットtoioの事例から~」<br>レポート・後半

概要

超教育協会は2021128日、ソニー・インタラクティブエンタテインメント toio事業推進室 課長/toio開発者の田中 章愛氏を招いて、「デジタル・STEAM時代こそ夢中になれるリアルなプログラミングを ~ロボットtoioの事例から~」と題したオンラインシンポジウムを開催した。

 

シンポジウムの前半では、ソニーが展開するロボットトイ「toio」の開発者である田中氏が、開発に至った背景、toioの仕組み、使い方、遊びと学びへの活用方法、学校の授業に採用されている例などについて詳しく紹介。後半は、超教育協会理事長の石戸 奈々子をファシリテーターに参加者を交えての質疑応答が実施された。その後半の模様を紹介する。

 

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「デジタル・STEAM時代こそ夢中になれる
リアルなプログラミングを~ロボットtoioの事例から~」

■日時:2021年12月8日(水)12時~12時55分

■講演:田中 章愛氏
ソニー・インタラクティブエンタテインメント
toio事業推進室 課長/toio開発者

■ファシリテーター:石戸 奈々子
超教育協会理事長

 

▲ 写真・ファシリテーターを務めた
超教育協会理事長の石戸 奈々子

 

シンポジウムの後半では、ファシリテーターの石戸 奈々子が参加者から質問を紹介し、田中氏が回答する質疑応答が行われた。

まだまだ広がるプログラミング教材としての可能性toioの楽しさ」に多くの質問

石戸:「ご自身が作る楽しさを存分に知っているからこそ、それをどうやって子どもたちに伝えるかを考えていて、その経験がtoioの企画の原点になっているのですね。『田中さんの原体験が知りたい』という質問がきています。『小学校時代にロボット作りを始めたのは、何がきっかけでしたか』という質問です」

 

田中氏:「動くものが好きでした。多少は家族の影響もあったと思います。祖父は造船所の溶接工、父は当時としては珍しいCADプログラマー、とハードウェアとソフトウェア両方が身近でした。ある日、電子工作キットを買ってもらったのですが、難しすぎて完成できませんでした。でも、それがよかったかもしれないです。悔しくて、自分でモーターや電池を買ってきて取り組んで、その頃からなんとなく『ロボット作りは楽しい』と思うようになりました。さらにそれが夏休みの工作として展示されて、みんなが感心してくれたり、動かして楽しんでくれたりした思い出があります。これが原体験だったと思います」

 

石戸:「私が初めてtoioを触ったのは2019年でしたが、そのとき『ファミコンやプレステのような、ロボットのプラットフォームを作りたかった』と仰っていたことが印象に残っています。なぜそう思ったのかお聞きしたいのと、それに向けてこれから取り組もうとしていることがあれば教えてください」

 

田中氏:toioはシンプルなキューブ型で、プラットフォームに見えないかもしれませんが、皆で体験を共有できたり、真似できたり、同じプログラムを動かせたりするところが大事で、その意味でもプラットフォームにもなると考えています。オープンソースの世界と同じで、同じプログラムを使う皆でアイデアを共有し、よりよく価値を高めていくこともしやすくなります。それに、一度買ったら長く楽しめる、小学低学年から中学校までいろんな体験ができます」

 

石戸:「すべてをソニーで、田中さんのチームで作るのではなく、様々な方とコラボレーションをしながら、新しいソフトを開発していくという仕組みと同じですね。

 

私は、ソフトの中ではゲズンロイドが好きですが、どのようにしてtoioの新しいソフトが生まれていくのか、もう少し教えていただけますか。田中さんの中には『こういう使い方をしてほしい』というアイデアがたくさんあって、アーティストに声をかけて連携しているのでしょうか。そうではなく持ち込み企画のようなものなのか」

 

田中氏:「ゲズンロイドは、『ピタゴラ装置』を制作していることで有名なクリエイターのユーフラテスさんと一緒に開発したもので、toioと紙、つまり『ロボットとアナログの融合』のいろんな不思議な生き物を作れます。紙工作のようにtoioの上に乗せるものを変えれば全く違う物を作れることを大事にしました。

 

toioは簡単に動かせるロボットで、プロトタイプがすぐ作れます。いろいろなクリエイターさんと出会えて、プロトタイプを作って話し合えることが、コラボレーションしやすい大きな特長にもなっています」

 

石戸:toioを使って新しいロボットやゲームができるのは素晴らしいことですが、一方で広がれば広がるほど、田中さんが意図していなかったものが生まれる可能性もあります。toioとして『こういうエッセンスは欠かせない』、『こういうことに気を付けてほしい』などがあれば教えていただけますか」

 

田中氏:「どうにでも使えることがおもちゃの良さだと考えて、変なこだわりは持ちすぎないようにしています。そうですね、生活に近いものを作ったり、友達や家族と絆が深まる遊び方をしたりしていただきたいです」

 

石戸:「『今後どんなプログラミングソフトを開発予定ですか』という質問です。可能な範囲で教えていただければと思います」

 

田中氏:「サンプルプログラムとしては、迷路をクリアするゲームや世界の言葉が覚えられる単語ゲームなど、どちらかというとミニゲームを充実させています。遊ぶだけでなく、プログラムの中身をすぐ見られる、オープンソースにしています。

 

▲ スライド16・ミニゲームは、遊ぶだけでなく
画面を切り替えてプログラムの中身を見られる

 

まず普通のゲームとして遊んで、自分で改造してみたくなったらプログラムを見られるからやってみる、そこが入口で、どんどん使ってハマって、深い体験ができればよいなと思っています。先ほどのゲズンロイドの動画の足の人が歩くプログラムも見られます。『こうやって組めばロボットを歩かせることができるんだな』と体験してもらえればと思います。

 

『レゴで大喜利』など、かなり奇抜な変なソフトもいっぱいありますが、プログラムを見て自分でもできそうだなと思う、身近な遊びをゲームにしてみる、ロボットで拡張してみるのもよいですね」

 

石戸:「『toioを通じて、子どもたちのこんな力を育みたいというビジョンはありますか』との質問です」

 

田中氏:「ロボットを作ったりプログラミングする仕事に就いたりするか分かりませんが、将来みんながロボットは怖いなどプログラミングは難しいなどではなく、身近な存在になって、普通に触れるものになるとよいと思います。それはAIなどにも言えることかもしれません。今、インターネットは普通になりました。それと同じように子供たちにとって身近な存在になればよいと思います」

 

石戸:「『開発で特に苦労した点があれば教えてください』という質問です」

 

田中氏:「ハードウェアとしてしっかり動くこと、自分の位置(絶対位置)が分かる技術は一番苦労したところで、私が学生時代に移動ロボットの研究をしていたときに苦労した経験から、なんとかして実現したかったところです。画面の世界ではキャラクターは動いてくれますが、ロボットはセンサーがないと目がないことになるので、タイマーで「何秒動かす」ことはできても、「何センチ動かす」といった位置や距離の指定はこれまでなかなかできなかったのです。人間だと自然とやっていることで簡単そうなのですが、実は難しい。それをセンサーで実現して、頭の中でイメージしたとおりに動かせる、それによって『ロボットって難しく考えなくても動いてくれるんだ』という達成感、手軽さ、身近な感じが生み出せるのではないかと思いました」

 

石戸:「視聴者には教育関係の方が多いのですが、プログラミング教育必修化にあたり、どんな教材を選べばよいのか迷っている方も多いと思います。どういうことをやりたい人はtoioが向いている、またプログラミング教材や玩具がたくさんあふれる中で、toioはどのポジションにいるのか、他社のツールとの比較は難しいかもしれませんが、分かりやすくご説明いただければと思います」

 

田中氏:toioは『リアルで身近な存在の延長』です。まず手軽に触れてパッと動くところは優れていると思います。数分で思い通りに動くように作れますので、パソコンもキーボードもまだ覚えていないときに、初めの成功体験や原体験として「うまくいった」と感じてもらうにはとてもよいと思います。さらにゲーム性もあるので難しくも怖くもなく、楽しいです。楽しんでもらいたいと考えている方にはよいと思います。

 

逆に、カリキュラム的には発展途上です。みなさんの声をいだだきながら、指導案を作成中です」

 

石戸:「ご自身はロボット開発者の立場ですが、プログラミング教育の必修化に伴い、かなり学校現場にも行かれて、つながりも持たれていると思います。その視点から、プログラミング教育の学校現場の課題、期待、を教えていただければと思います。特に、近頃、関心が高まっている高等専門学校のご出身ということで、そのご経験も踏まえて、現状の課題と期待について教えてください」

 

田中氏:「現場の先生はプログラミングの経験がない、専門的な知識がないと自信を持てないケースが非常に多いことは感じています。でも、やることは子どもたちと同じです。先生たちもtoioにぜひ触っていただいて、先生自身が原体験や成功体験を感じていただけたら嬉しいと思います。

 

ロボットを動かせると、社会課題の解決にもつながっていきます。例えば車の自動運転を実現するには、車がお互いを認識し合い譲り合う、それが車だけの話ではないことに気付き、深く見えるようになっていくと思います。

 

toioに限らずプログラミングの考え方自体、とても価値があることだと思います。

 

現場の声が発信されて、様々な事例をYouTube動画などで見られます。現実に起こっていることをみんなが認識できて楽しんでいる様子も見られます。教員現場にICTが導入されて授業の中継などもありますが、ぜひ引き続き発信していだたけると嬉しいです」

 

石戸:「『子どもがロボットに興味を持っています。親としてどう接すると、子どもの興味がより広がっていきますか』探求学習は世界からも注目が集まっています。田中さんは探求していく力が優れていたのだと思いますが、より子どもたちの世界を広げていくために親ができることはなんでしょうか」

 

田中氏:「身の回りのものを分解してみても怒らない、みたいなことかもしれません。私もさんざんいろいろなものを壊しては中を覗いていました。モノだけではなく働く人の現場の裏側もそうですが、裏側に興味を持ったらサポートしてあげる、機会を与えてあげることです。家電が壊れて捨てようとするなら『ちょっと分解してみる?』と、言うだけでも違うと思います。裏側につながる体験を増やしてあげる。興味を深堀できるチャンスは、身近なところに転がっています」

 

石戸:「プログラミング言語についての質問です。『公式に、Python(パイソン)の標準ライブラリを使った制御はできるでしょうか。小学校はプログラミングですが、中学校の数学ではPythonの標準ライブラリを使います。公式提供のサンプルソースやライブラリはあるでしょうか』という質問です」

 

田中氏:Pythonのライブラリは、現在公式には提供していませんが、ユーザーさんが作ったPythonライブラリはたくさんあります。それでも十分に使える状況かと思います。公式にはJava Scriptがサポートしています」

 

石戸:「プログラミング教育的には、『ブロックプログラミングから次のステップになかなかいけない』、『面白い体験はできたけれど、次のステージに進めない』といった課題がよく挙がります。教員や保護者はプログラミングスキルの習得にも関心があると思いますが、そのようなときにtoioが提供できることは、どんなことですか」

 

田中氏:「持てる限りの情報をすべてオープンにして、何か作りたいと思ったときに活用できることは大事にしています。Pythonもそうですが、公式にはなくてもプログラミング方法はたくさん用意されていて、それを自由に選べることは大きいと思います。ブロックプログラミングからJavaScriptには、仰る通り抵抗があるかもしれませんが、個人的には、『ブロックではできない、JavaScriptPythonで書かないとできない』のような問題や壁にぶち当たることがよいことで大事だと思っています」

 

石戸:「最後に私から2点質問させてください。ソニーグループでは『MESH(メッシュ)』や『KOOV(クーブ)』など面白いSTEM教材が生まれていますが、ソニーグループとして今後、STEMまたはIT×教育の分野でどんな取り組みを考えていらっしゃいますか。

 

2点目は、toioは海外でも販売が始まっていると思いますが、ビジネスとしてのtoioの今後の展開に関して、お話しできる範囲でかまいませんので教えていただければと思います」

 

田中氏:「ソニーグループとしては、大きな方針で動いているわけではなく、それぞれのプロジェクトは社内ベンチャーの形です。例えていうならカメラといっても一つではなくビデオカメラ、デジタルカメラ、スマホカメラに違いがあるように、全く異なるベクトルで価値を提供しています。

 

知る限りで言うと、『KOOV(クーブ)』は塾で多数採用され、『MESH(メッシュ)』は理科の教材にもなっています。現場に最適なソリューションで本当に必要な方に適切な体験を届け、よい意味で自由度を感じていただければと思います。

 

海外でのビジネス展開については、今年から中国でも販売開始しました。日本と同じかそれ以上にプログラミング熱が高いこともあり好評です。ベンチャー的かもしれませんが、がっちり決めずにお客様のニーズに合わせて、海外も熱いラブコールをいただいたところにしっかり出していきたいと考えています。お声をいただいて改善して、新しい展開もしていきますので、そのような広がりを持てるパートナーも探しています。興味を持っていただけましたら、お声掛けいただければと思います」

 

最後は石戸の「プログラミング教育の初期は、ほとんどが海外の教材の輸入でした。それが今は日本発のプログラミング教材がある。このようなプログラミング玩具・教材が世界に広がることを、私は強く願っています」との言葉で、シンポジウムは幕を閉じた。

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