子どもたちがネットやゲームを「使いすぎない」ように大人たちができることは?
第70回オンラインシンポ「子どもが社会から孤立しないために~ネットやゲームとの付き合い方」
レポート・後半

活動報告|レポート

2021.12.24 Fri
子どもたちがネットやゲームを「使いすぎない」ように大人たちができることは?<br>第70回オンラインシンポ「子どもが社会から孤立しないために~ネットやゲームとの付き合い方」<br>レポート・後半

概要

超教育協会は20211124日、児童精神科医・愛知県医療療育総合センター中央病院 子どものこころ科 部長の吉川 徹氏を招いて、「子どもが社会から孤立しないために~ネットやゲームとの付き合い方」と題したオンラインシンポジウムを開催した。

 

シンポジウムの前半では吉川氏が、子どもたちのインターネット利用実態、ICTリテラシー、子どもを孤立させないために大人たちにできることなどについて、自身の家庭での取り組みを交えて説明。後半は、超教育協会理事長の石戸 奈々子をファシリテーターに参加者を交えての質疑応答が実施された。その後半の模様を紹介する。

 

>> 前半のレポートはこちら

 

「子どもが社会から孤立しないために
~ネットやゲームとの付き合い方」

■日時:2021年11月24日(水)12時~12時55分

■講演:吉川 徹氏
児童精神科医
愛知県医療療育総合センター中央病院
子どものこころ科 部長

■ファシリテーター:石戸 奈々子
超教育協会理事長

 

▲ 写真・ファシリテーターを務めた
超教育協会理事長の石戸 奈々子

 

シンポジウムの後半では、ファシリテーターの石戸 奈々子が参加者からの質問を紹介し、吉川氏が回答する質疑応答が行われた。

子どもたちがネットやゲームを上手に付き合えるように周囲の大人やサービス提供側ができることは?

 石戸:ICTのリテラシー教育に長く関わっていると、スマホやゲームの問題とされているトラブルの原因が実はそれ以前のところにあり、結果として解決に至らないケースも多いと感じます。親子コミュニケーションが円滑であれば避けられるトラブルも多く見られ、その点においても本日の講演は多くの家庭にとって参考になるお話でした。

 

新しい技術が出てくると変化への不安から反発が起こります。特にメディアと子どもの関係ではその反応が顕著ですが、子どもたちはもはやデジタルやネットがない世界に生きることはできませんので、小さい時、大人が介入できる時期からどのようにリテラシーを育んでいくかが大事だと思っています。その意味で、先生が仰っていた『デジタル機器教育ができる余力をどう残していくか』という話はよい表現だと思います」

 

石戸:「視聴者からも切実な質問がきています。『すでに家庭内で約束を作らずに渡してしまった場合、その後に上手に約束を作るポイントはありますか』というものです。いかがでしょうか」

 

吉川氏:「中学生年代に新しく約束を作っていくときには、その時点での親子の関係性がポイントになります。約束を作るうえであまりよい方法というのは実はないと思っているのですが、ただ、悪い方法だけはあります。約束を作ることで親子関係がより悪くなるくらいなら約束はないほうがよいというのが大前提です。ゲームやネットのことで子どもと喧嘩しないことがコツかなと思います」

 

石戸:「『先生のお話のとおり保護者のリテラシーがないことが問題と考えます。保護者向けの活動として何かうまいやり方はありますか』という質問です」

 

吉川氏:「親御さんがICTに関する情報を入手している経路は学校からが多いようです。本当は、就学前の保育園や幼稚園の段階で親御さんが情報に触れていく機会を作っていくのがよいと思います」

 

石戸:「次の質問です。『ゲームは種類によって違うのではないか』というものです」

 

吉川氏:「児童青年精神学会という学会誌に共著で論文を出しました。ゲームのジャンルによって、嗜癖のなりやすさというか使用時間が長くなりやすいかなどが異なります。ゲームを一括りにしないというのはすごく大事な大人の姿勢だと思います」

 

石戸:「最近eスポーツの教育利用を広げる活動もしているのですが、海外においてはeスポーツの教育的な効果に着目して学校教育の中に導入している国もあります。依存させないことは大切ですが、一方で何かに熱中する力というのもときに大事です。その対象がゲームだったらだめなのか、という議論もあると思うのですが、ゲームにある一時期熱中する、プロ並みになっていくことで育まれる力ということに関しては先生のご意見はいかがでしょうか」

 

吉川氏:eスポーツについては、それを極めてプロになるということでは、将棋や野球と何が違うのかということは考えてみないといけないと思います。『eスポーツ部』が登校動機になっている子どもも割といます。進学動機になる子どももいるので、そこはやっぱりうまく使っていけると良いかなというのは日々感じます」

 

石戸:「次の質問は、『学校から提供され始めた端末のセキュリティと家庭のセキュリティのレベルが違うので、子どもたちにどのように説明していけばよいですか』というものです」

 

吉川氏:「安全に使う設定と、そうでない設定があるということを実地で学ぶ機会にしてしまった方が良いのでは、という気がします。そこまでのことができているご家庭であれば、家の設定と学校の設定は何が違うのか、その設定が違う理由は何かみたいなところまで言語化してしまうのが良いのかなという気はします」

 

石戸:「次の質問です。『中高生はSNSをかなり利用していますが12歳以下の子どもは利用規約上、大手SNSは利用できず、実態は多くの小学生が年齢を偽って非公式に使用しています。今後さらにニーズが高まると思いますが、子どもが安全に使え、ペアレンタルコントロール機能がある子ども向けSNSがあった方が良いと考えていますがどう思われますか。また子ども向けSNSを開発するときどういったことに気をつけた方がよいと思いますか』というものです」

 

吉川氏:「今、FacebookInstagramで大きな話題になっていることを追いかけていただければ良いかと思いますが、キッズ向けのInstagramの開発をしてよいのか、してはいけないのかが大問題になっているので、その辺の議論を追いかけていただくと、よいのかなと思います。私は、子ども向けのアプリケーションやサービスがある方が『いくらかマシかな』と思っています。年齢を偽ってのアクセスを止めることは、実はなかなか難しいでしょう」

 

石戸:「他にも『サービス提供側にも、もっと規制を設ける対応が必要なのではないか』、『経済活動を抑制する方向なのでそのような動きは国内外ともにないのでしょうか』といった質問がきています。企業などサービスを提供する側に先生から何かメッセージやアドバイスがあれば教えていただきたいのです」

 

吉川氏:「確かに『必要な規制のライン』というのはあると思います。ただし、どこでラインを引くのがよいのかについては議論が必要です。例えば、家庭で設定しやすいライン、ペアレンタルコントロールに必要な機能は何かなど、そういったことを考えなくてはならないでしょう」

 

石戸:「講演の中でお話のあった『孤立』について、ネットの中のコミュニケーションなら仲間が作れるという子どもがいますね。参加者からは『リアルで仲間作りができるのが解消策であるのですが、難しいのが現状です。マッチングの場があれば良いかもしれません』といったコメントがきています。孤立してしまった子ども達を救ってくれるのものが、オンラインで繋がれるツールということもありますよね。先生の所にいらっしゃる子ども達は、やはり最終的にリアルなコミュニケーションでしか孤立は解消されないのでしょうか。それともオンラインの中で救われていく子ども達もいるのでしょうか」

 

吉川氏:「オンラインの中で救われている子ども達は、私たちの所には来ないかもしれません。オンラインの中に上手に居場所を見つけている子ども達は確かにいると思います。ただその活動を長く続けていると退屈になってリアルの世界に出て行くのかなという気はしています」

 

石戸:「次ぎの質問は『ネット依存症を怖がってゲームをしません。時代に反してゲームをしないことで問題はありますか』というものです」

 

吉川氏:「交友関係に制限が出てきてしまうかもしれませんが、あえて選ぶならそれはアリだと思います。ただしその生き方を選ぶこと自体が何らかの不安症、社交不安症だったり全般性不安症だったりなどの一部の表れだったりすると、ちょっと人生損をすることがあるので勿体無いと言うか、我々のところに相談して欲しいとは思います。そのことで本人が生活の中で何かを失っているなど、損をしているとか思わないのであれば、よいと思います」

 

最後は石戸の「子ども達をICTのトラブルから守る方法で一番簡単なのは、規制してしまうことですが、ICTリテラシーを育む機会を奪い、結果としては子どもたちをある日、突然、荒波に放り込むことになってしまいます。フィルタリングなど技術的な解決は一定の効果があり、適切に活用するのがよいと思いますが、技術はいたちごっこという側面もあります。最終的には教育で解決するしかないと思うのですが、それを考える際に、子ども達の発達も踏まえた教育が必要だと思います。医師など専門家との連携は不可欠だと思っているので、是非、引き続きリテラシー教育で協業できればと考えています」という言葉でシンポジウムは幕を閉じた。

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