パラダイムシフトの時代に求められる教育の姿とは
第61回オンラインシンポ「未来における第三の教育」
レポート・前半

活動報告|レポート

2021.10.15 Fri
パラダイムシフトの時代に求められる教育の姿とは<br>第61回オンラインシンポ「未来における第三の教育」<br>レポート・前半

概要

超教育協会は202198日、ゼロ高等学院代表で株式会社ZERO EDUCATION & ARTS CEOの内藤 賢司氏を招いて、「未来における第三の教育」と題したオンラインシンポジウムを開催した。

 

シンポジウムの前半では、内藤氏が代表を務めるゼロ高等学院の概要と教育業界におけるパラダイムシフトの前兆、そこで求められる「第三の教育」について講演し、後半では、超教育協会理事長の石戸 奈々子をファシリテーターに質疑応答を実施した。その前半の模様を紹介する。

 

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「未来における第三の教育」

■日時:202198日(火)12時~1255

■講演:内藤 賢司氏
ゼロ高等学院代表
株式会社ZERO EDUCATION & ARTS CEO

■ファシリテーター:石戸 奈々子
超教育協会理事長

 

内藤氏は、約20分間の講演において、ゼロ高等学院(以下、ゼロ高)の概要と、教育業界におけるパラダイムシフトの可能性、それを受けて重要となる「第三の教育」について説明した。主な講演内容は以下のとおり。

「ホリエモン」とのディスカッションもカリキュラムに
「キャラ立ちした」高校生が活躍できるサポート校

ゼロ高は、いわゆる「一条校」ではなく、神奈川県山北町にある広域通信制の鹿島山北高校と提携する民間教育機関です。「サポート校」に該当します。

 

ゼロ高の開校は201810月で、この10月で4年目に入ります。約130名の在学生のうち、20194月に新入生として入学した生徒が20223月に最初の卒業生となります。在校生のうち約6割は転入生で、特に最近はほとんどが偏差値60前後の進学校からの転入で全体の約3割に達しています。20223月卒業予定者の約6割が大学進学希望者です。ゼロ高では、高校卒業単位の取得に関する授業は月曜日と火曜日の午前中だけとし、その他の時間は「やりたいこと」を「どう過ごすか」を自分で決められるスタイルです。それが、大学入試における「総合型選抜」で有利になるといえるかもしれません。多くの生徒が、ポートフォリオや総合型選抜にゼロ高の活動を活用して大学進学を進めています。

 

つまり、健康管理や学習管理を自己責任で行うのがゼロ高の特徴で、「受身でよい」とか「とりあえずゼロ高に行きたい」という生徒は入学を断られます。月曜日の「総合学習」の時間には「先週はこれをやりました」「今月はこれをやる予定です」「これで悩んでいます」「こうすればよいのでは」などとディスカッションをします。基本はディスカッションベースの授業ですが、火曜日の午前中のみ「必修科目」と「PBL・特別授業」というインプット型の授業を実施しています。ゼロ高の最大の特徴としては、「個性を肯定して活かせる『キャラ立ちした』高校生」の活躍があるのです。

 

▲ スライド1・来春の卒業生は
6割が
大学進学を選択

 

また、ゼロ高で主宰を務める堀江 貴文氏が主催する「ホリエモンサロン」では、ゼロ高生が堀江氏に「こんなことをやりたい」あるいは「やりました」といった話をぶつけています。基本的に学校は生徒が主役であるべきで、このように主人公が次々と出てくるのがゼロ高の価値であるとも考えています。

▲ スライド2・堀江氏のオンラインサロンで
プレゼンする機会もある

 

火曜日には必修授業を設けています。当初、生徒には「自分から取りに来るモノ」以外は特に与える必要はないし、それで失敗してもよいと考えていましたが、「ミスした時に後戻りしづらい失敗」は事前に情報をインプットすべきという意見もあり、「お金の授業」と「性の授業」を始めることにしました。「お金の授業」では、NVIC(農林中金バリューインベストメント)の奥野 一成氏と共同でマネーリテラシーについて、「性の授業」では、産婦人科医の稲葉 可奈子先生、および一般社団法人ちゃぶ台返し女子アクションの方々を外部講師として性やLGBTについて学習しています。他にも名前は出せないのですが多くの民間企業や団体と提携して、通信制高校の単位取得というよりも「実学」としての勉強を行っています。

 

▲ スライド3・「後戻りできない失敗」は
インプット型授業でカバー

今、教育界に起きている「5つ」の「パラダイムシフト」の前兆

今、教育界においてパラダイムシフトが起こりつつあると考えています。

 

まず、児童・生徒の数について考えます。出生数は2020年の84万人余から2021年は78万人余と極端に減っています。一方で、高校生の数は、各学年とも約100万人で、通信制高校に通う生徒も約20万人で大きな変化はありませんが、いずれ少子化の波が高校にも押し寄せることは間違いないでしょう。

 

そうした状況の中、高等学校の学校数は令和元年度で全国に約4900校あり、公立高校が減っているのに対し、私立学校は少子化にもかかわらずその数はほとんど変わっていません。

 

▲ スライド4・公立高校は漸減傾向だが
私立高校はほとんど減っていない

 

とくに通信制高校の生徒数は増加傾向で、内訳をみると公立通信制高校では生徒数が減少、私立通信制高校では増加です。

 

▲ スライド5・通信制高校の生徒数は
公立では減少、私立では増加

 

整理すると、出生数は減少傾向、②公立高校数は減少、③私立高校数は横這い、④公立通信制高校の生徒数は減少、⑤私立通信制高校の生徒数は増加、というのが高校生を対象とする教育市場の現状であり、社会の状況です。

 

▲ スライド6・パラダイムシフトの
前兆がみえる教育市場の状況

 

毎年約100万人が卒業する高校生の約55%が高等教育へ進学する中で、重要となる英語教育やプログラミング教育が塾など民間教育機関に押さえられている状況は、高等学校が抱える課題の一つです。

 

さらに、より深刻な課題は、全体の生徒数が減少しているのに、不登校の子どもが年々増加していることです。これは単純に「今の学校に合わない子ども」が増えていることを意味します。言い換えると、「高等学校という存在」そのものが変化を求められているのであり、これがパラダイムシフトの前兆と考えます。

 

▲ スライド7・今の学校に合わない子ども

 

ゼロ高での取り組みを通じて、「今、このタイミングでも死のうと考えていたり、人生を諦めたりしている中学・高校生、より幼い子ども達をゼロにしたい」、そのために「何か決定的な手段があるならそれを追求したい」と考えています。そして、これからの子ども達に「何をしてあげられるのか」と、逆に「何をしてあげることができないのか」を常に考えて取り組んでいます。

 

▲ スライド8・子どものために何ができて、
何ができないのか・・・

「第三の教育」が目指すのは産学官が最適化されていく世界

こうした状況で、3年間、ゼロ高の取り組みを継続してきて、「第三の教育」の必要性を考えています。社会(ムラ・イエ・地域)での教育を「第1世代」、国家の学校教育と言われるものを「第2世代」とした場合、「第3世代」の教育、つまり「第三の教育」はハイブリッド型になると考えています。

 

▲ スライド9・第3世代の教育は
社会と学校のハイブリッドになる

 

明治以前の寺子屋や藩校など、商家では商人の勉強、武家では武士の教育が行われていたのが「第1世代」、1872年に明治政府が学制を公布して始まった国家主導の学校教育が「第2世代」です。今、パラダイムシフトが起きる前兆というのは、この「国家の教育」がほぼインフラとして整備された中で次の状況を求められているからであり、その「第3世代」の教育は「社会」と「国家」のハイブリッド、つまり「第三の教育」になると考えています。

 

こういう結論にたどり着いたのは、ゼロ高が通信制高校と民間企業とのコラボレーションにより生まれたものであるからです。例えば「お金」や「性」の教育を年間の時間割に組み込もうとすると総合学習の時間などを使う必要があり、手間がかかります。こういうものは放課後クラブや部活で行うほうがスムーズに導入しやすいでしょう。このように、ある程度固められた時間の中で活動するものと、ある程度余白がある中で実行するもののバランスがとれる場所が求められてくると、私は考えます。

 

ゼロ高で「第三の教育」を目指すにあたって、理想とするのは「産学官が最適化されていく世界」であり、そのために「サポート校」という仕組みを選んだことは良かったと考えています。サポート校ゆえに、さまざまな授業や勉強方法の実証実験をいち早く実施できることが強みであり、価値だと考えています。

 

▲ スライド10・第三の教育は
産学官の「対立」ではなく「最適化」

 

スティーブ・ジョブスは、「『何をしないかを決めること』は『何をするかを決めること』と同じくらい重要だ」と言ったそうですが、これからの学校も「何をやらないか」を決めなければなりません。同じことは、先生にも、親にも、地域にも、そして国家にも言えることで、「自分はここまでしかできません、ここからはよろしく」という関係性を築かなければなりません。国家と社会、あるいは産学官が境界線のところで手を取り合っていかなければ被害に遭うのは子どもたちです。そこを大人がうまく最適化していく世界が「第三の教育」なのです。

 

▲ スライド11・それぞれが
「やること」と「やらないこと」を考える

 

最後に、ゼロ高では毎週、ご興味ある方向けにオンライン説明会を実施しています。毎回必ずゼロ高生が参加してゼロ高の良いところも悪いところも「フェア過ぎる」立場で話してくれます。自分は「ゼロ高っぽい」と思われる中学3年生や高校生の方は、ぜひご参加ください。

 

▲ スライド12・ゼロ高生と直接話せる
オンライン説明会は毎週開催

 

>> 後半へ続く

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