教育現場の声を国に届けて、GIGAスクール構想の課題を解決する
第59回オンラインシンポ「教育におけるICT利活用の現状と課題~GIGAスクール構想推進への次の一手~」
レポート・前半

活動報告|レポート

2021.10.1 Fri
教育現場の声を国に届けて、GIGAスクール構想の課題を解決する<br>第59回オンラインシンポ「教育におけるICT利活用の現状と課題~GIGAスクール構想推進への次の一手~」<br>レポート・前半

概要

超教育協会は2021年825日、参議院議員/立憲民主党/政調筆頭副会長 石橋 通宏氏を招いて、「教育におけるICT利活用の現状と課題~GIGAスクール構想推進への次の一手~」と題したオンラインシンポジウムを開催した。

 

前半は、石橋氏が「教育におけるICT利活用促進をめざす議員連盟」の活動内容、教育現場でのICT活用の課題、「学校教育の情報化の推進に関する法律」について解説し、後半は、超教育協会理事長の石戸  奈々子をファシリテーターに、参加者を交えての質疑応答が実施された。その前半の模様を紹介する。

 

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「教育におけるICT利活用の現状と課題~GIGAスクール構想推進への次の一手~」

■日時:2021年8月25日(水)12時~12時55分

■講演:石橋 通宏氏

参議院議員/立憲民主党/政調筆頭副会長

■ファシリテーター:石戸 奈々子

超教育協会理事長

 

石橋氏は約30分の講演において、超党派議連(以下、議連)が2015年に立ち上げた「教育におけるICTの利活用促進をめざす議員連盟」の取り組み、GIGAスクール構想の進捗状況と課題、「学校教育の情報化の推進に関する法律」について解説した。さらに、これまで議連に寄せられたGIGAスクール構想への意見や課題も紹介し、「GIGAスクール構想を推進するための次の一手についても自らの考えを示した。主な講演内容は以下の通り。

 

【石橋氏】

議連では、昨年以降も継続的に、教育分野におけるICT利活用の現状と課題について話し合う総会を開催してきました。4月以降も2回、総会を開催して、新年度を迎えた中でのGIGAスクール構想の進捗状況や課題について議論してきました。そうした議論を経て、現在、GIGAスクール構想の進め方の「次なる一手」を考えています。

 

私は、2010年の初当選の時から、日本の学校教育でのICTの利活用は、諸外国から15年以上も大きく遅れているという問題認識を持ち、その推進のための取り組みを始めました。2010年から始まった文部科学省主催の「学びのイノベーション推進協議会」、総務省主催の「フューチャースクール推進研究会」にも当時、与党の立場で積極的に参画し、全国各地の実証校に訪問して現場のご意見をいただいたり、その後も、シンガポールや韓国、アメリカのシアトルの学校教育の現場を視察したりして、政策立案に活かしてきました。

 

こうした取り組みをしてきた過程で感じているのは、ICTのさらなる進化です。現在、そしてこれからはさらに本格的な「AI時代」となるでしょうし、その中で鍵を握るのは、新しい時代にふさわしい教育と、新しい時代を担う人材の育成です。そのためにも学校教育分野でのICTの利活用推進が非常に重要です。この間、日本はデジタルランキングも低迷しており、国際競争力はかつての世界一から凋落を続けています。GDPもこの30年間成長しておらず、その一つの要因は、教育でのICT利活用が進んでおらず、新しい時代に相応しい人材の育成が出来てないことではないか、というのが今の問題意識です。

 

国会内でも、こうした危機感、同じ問題意識を持つ方々と一緒に取り組み、現在は、「教育」、「人材育成」、「子供たちの学びの確保」、「イノベーション」を政治の最重要課題の一つとして認識して活動しています。

 

▲ スライド1・政治を担う立場で、
教育や人材育成の課題を認識し
解決に向けて取り組んでいる

遅れていた学校教育におけるICT利活用を「総力戦」で進めていく

民主党政権時代の201112年に、当時初めて、教育分野のICT利活用促進に関する政策提言をとりまとめました。

 

▲ スライド2・2012年に
民主党政策提言を
とりまとめた

 

このときの提言をベースに、その実現をめざして、2013年には超党派の勉強会をスタートし、2015年に正式に超党派の議員連盟として結成して以来、政策論議、予算要求、対文部科学省、総務省とのやり取りなど、さまざまに活動してきました。

 

▲ スライド3・2013年には政党の枠組みを超えて
教育のICT化促進の目標に向けて協力しあう
議員連盟が結成

 

勉強会の段階から多くの有識者の皆さんに外部アドバイザーとして参画、助言をいただいて、内外に発信していただいていることはとても重要で、本当にありがたく思っています。遅れていた学校教育におけるICT利活用を、今後も総力戦で進めていきたいと考えています。

 

▲ スライド4・教育におけるICTの利活用促進を
めざす議員連盟には、
アドバイザーとして
多数の有識者が参画している

GIGAスクール構想と学校教育のICT利活用を有効に進めていける環境の整備を

こうした取り組みの中で、最も重要な成果は、2019年に議員立法「学校教育の情報化の推進に関する法律」を制定できたことです。各自治体や公立校、私立校の教育現場を視察し、情報化が順調に進んでいるところ、遅れているところの格差が広がってきたと感じ、この格差を埋めるためには法律が必要だと考えたのです。実際、学校教育の現場を回ると、ICT教育を推進するには課題が山積なことがわかりました。「自治体間・学校間・公私間の格差」、「財政措置の確保と予算執行の促進」、「導入コスト」、「真のデジタル教科書」の正規化にも課題があります。そして、教員の養成と負担軽減、支援員の確保などです。これらの課題を解消していくには、多方面から協力をいただき総力戦で進めなくてはならない、そのためには法律が必須だったのです。

 

▲ スライド5・教育現場のICT化を推進するには、
法律の制定が必須だった

 

GIGAスクール構想の次なる一手とも関連して、「真のデジタル教科書の実現」は重要な取り組みです。今では、検定に合格した教科書をそのままデジタル化したものについては、一定の制約の下、教科書として使えます。しかし、本来は「デジタルだからこそ」の教科書を創造していくべきで、そのためには現行の教科書検定制度、著作権法、教科書の無償配布法などを含めて法改正が必要です。将来的にはデジタル教科書そのものが検定を受けて、教育現場で教科書として使えるようにしていこうと、法律上、そのための見直しを行うことを明記しています。

 

▲ スライド6・真のデジタル教科書の
実現のためにも法制度が必要

 

また、政府内に学校教育情報化推進会議を設置すること、その下に有識者による推進専門家会議を立てることも法律で要求していますが、今後は、各地方自治体でも推進会議体、専門家や有識者、関係者の会議体を立てて、GIGAスクール構想の進捗も含めた学校教育のICT利活用を有効に進めていける環境をぜひ整えていただきたいと思います。

「利活用されていない」11台端末 教育現場が抱えている課題とは

GIGAスクール構想は、20196月の政府方針で方向性が打ち出され、20201月に2,300億円の補正予算を計上してスタートしました。当初は5年計画でしたが、新型コロナウイルス感染症の拡大で3月に一斉休校となったことから、一刻も早く実現しなければならない状況になり、なんとか1年で実現しようと、2020年の第一次補正予算でさらに2,300億円を確保、これまでに総額約5,000億円を投じて実行が進められています。

 

▲ スライド7・新型コロナウイルス感染症の影響も
あり、
GIGAスクール構想の展開は急ピッチで進んだ

 

しかし、この間の議連の会合などで現場からのさまざまな報告を聞き、見えてきた課題があります。11台端末の配備とネットワーク環境の整備については、おおむね順調に進みましたが、残念ながら利活用については、20214月時点で「進んでいる」とは言えない状況です。「端末は届いたけれど、そのまま倉庫にある」といった現場からの報告も多くありました。

 

▲ スライド8・2021年4月時点での
現場の報告から、
配備された端末の
利活用が進んでいないことが判明

 

なぜ、利活用が進まないのか。いくつかの課題が見えています。その一つに、セキュリティポリシーの問題があります。これについては、昨年の段階からすでに問題意識をもち、文部科学省を交えて自治体の個人情報保護条例を含めた見直しの議論をしていましたが、ガイドラインやハンドブックの改定が遅れ、今なお自治体によっては対策が出来ていないところがあると聞いています。また、学校の先生方をサポートするGIGAサポーターやICT支援員の確保ができていない問題もあります。さらには、一人一台端末環境下でトラフィックが増大する中で、各学校からのネットワーク集約接続がボトルネックになっているという問題も指摘されています。

 

一方、高校では、小中のように国からの端末整備予算が付いていないため、都道府県任せの対応となってしまっている結果、自治体によって対応がバラバラになっている問題が提起されています。例えば、BYODBring Your Own Device)で対応している自治体では、生徒達が異なるOSの性能も異なる端末を使用する結果、先生方に大きな負担がかかってしまっていて、その改善も必要です。その他にも、教員の端末はどうするか、予備機の確保、家庭への持ち帰りなどについても、多くの自治体できちんとしたポリシーが確定していません。このように、せっかくの11台端末環境が整ってきても、まだその環境が十分に子どもたちのために生かされていないという声が現場から届いています。

 

▲ スライド9・現場からの報告で見えた、
1人1台端末を利活用するために
解決するべき課題

 

こうした課題の中でも、いくつかは現場の皆さんのご努力や、文科省の対応によって改善に向けた取り組みが進められています。GIGAサポーターやICT支援員の確保については、自治体によっては対応が進んでいるところもありますが、まだ苦労しているところもかなりあると聞いていて、議連としても例えば民間企業にもご協力いただき、人材の提供や派遣をいただけないかと検討をしています。

 

学校への接続集約の問題も、文科省が、ローカルブレイクアウトの整備について、各自治体・教育委員会に現状の問題、過渡期のオプション、目指すべき構成と、理想的なネットワーク接続環境などを示してくれています。今後は、これらの取り組みによって改善されたのか、さらなる課題があるのか、現場の確認をしながら応援していきます。

 

▲ スライド10・速度が安定し授業に影響が
出ない、
快適なネットワーク接続環境が理想

 

個人情報保護条例については、自治体条例の対応がされていない自治体がまだ少なからずあるとの報告を受けています。情報セキュリティについては、先に述べた通り、昨年から文部科学省に対して教育情報セキュリティポリシーのガイドラインやハンドブックを早急に改訂してほしいお願いをしてきました。その結果、ようやく20215月に改訂されましたが、全国の現場でこの改訂されたハンドブックに基づいてセキュリティポリシーの見直し・改善が実施されているかどうかが重要です。

 

▲ スライド11・教育情報セキュリティポリシー
ガイドライン/ハンドブック改訂の経緯

GIGAスクール構想推進への次の一手 ポイントは4

GIGAスクール構想推進への次の一手を考えるにあたり、まずは、先に挙げた「解決すべき課題」(▲スライド9)に対して、ひき続き一つ一つ丁寧に対応していくことが重要です。その上で、「GIGAスクール時代」にふさわしい学校教育予算のあり方と立て方をしっかり確立するべきです。これまでは、補正予算で巨額の予算を立てて、GIGAスクール端末やネットワークなどの環境を整えました。今後、これがスタンダードになると、各教育委員会で持続的に運用・実践していくことになります。教員の方々にも運用と実践を継続していただくことになり、コンテンツの継続購入・更新や、ハードの更新も必要になります。そうなると、「いつ決まるかわからない」補正予算ではなく、一般会計、つまり通常予算における学校教育予算の中で安定的に予算を確保して、自治体の中で安心して持続的にGIGAスクール構想に対応できるようにしなければならないのではないか。これが私達の問題意識です。

 

2つめのポイントが、デジタル教科書の「正規化」を見据えた教科書検定制度のあり方の見直しです。これも先に述べた通り、そのためには、現状のさまざまな法律制度の改革が必要です。教科書改訂のサイクルも見据えながら、文部科学省の検討の場でも議論が進められています。デジタル教科書を正規の教科書として導入する目標に向かって、着実に前に進めていきたいと思っています。

 

3つめが遠隔教育のあり方、特にマッチング制度の整備です。GIGAスクール時代になると、距離にとらわれない遠隔教育による学びが実践できる環境になります。議連アドバイザーの皆さんからも、現場の取り組み状況を報告いただいていますが、離島や遠隔地、中山間地、学校の統廃合問題、生徒数の減少、さまざまな困難な問題を抱える各自治体があります。このような環境下の子供たちに質の高い教育環境を確保し保障していくためにも、遠隔教育を活用することが重要になってきます。

 

遠隔教育が進展していくと、教える先生方と教えを受ける子供たち、学校・地域の環境のマッチングをどうしていくのかも考えなくてはなりません。規模が拡大すればするほど、参加希望者が増えれば増えるほど、マッチングのスキームをどう確保していくのかが課題になってきます。皆さんのお知恵をいただきながら、環境を整えていきたいと思っています。

 

4つめが、教員養成課程/現場訓練のあり方です。究極は、現職の教員の方とこれから教壇に立つ若い教員全てがGIGAスクール時代にふさわしい教授法を身に着け、ICTを活用した教え方を実践できることです。そのためには、国として責任を持って環境を整えていかなければなりません。教員養成課程のさらなる拡充や実践のありかた。とりわけ現職の教員の方がICTを活用した教え方の講習を受けられる環境が必要です。

 

なお、機会提供だけでなく、教員の方々には「余裕ある形で」の環境を整備が必要です。

現場の皆さんからは、なかなか「教育訓練を受けている余裕がない」との声も上がってきていて、コロナ禍への対応が厳しくて悲鳴も上がっている中で、どう時間の余裕を確保していけるかも課題です。文部科学省と政府にも働きかけて、教員の方々にGIGAスクール時代にふさわしい対応が可能となるよう、次なる一手として非常に重要な課題と考えています。

 

▲ スライド12・GIGAスクール時代への
次なる一手の4つの課題

 

>> 後半へ続く

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