概要
超教育協会は2021年5月12日、株式会社ラフ&ピースマザー 生沼 教行氏を招いて、「これからの時代に必要な力とは ~ラフ&ピース マザー 遊びと学びの教育プラットフォーム~」と題したオンラインシンポジウムを開催した。
前半では生沼氏が、同社の教育コンテンツ配信開発プラットフォーム「ラフ&ピース マザー」のサービス概要と提供中のコンテンツについて紹介。後半は、超教育協会理事長の石戸 奈々子をファシリテーターに、参加者を交えて質疑応答が実施された。その前半の模様を紹介する。
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「これからの時代に必要な力とは ~ラフ&ピース マザー
遊びと学びの教育プラットフォーム~」
■日時:日時:2021年5月12日(水)12時~12時55分
■講演:生沼教行氏
株式会社ラフ&ピースマザー 代表取締役社長
■ファシリテーター:石戸奈々子
超教育協会理事長
生沼氏は約35分間の講演において、「ラフ&ピース マザー」のサービス内容と、提供中の動画やゲームのコンテンツ、Webサービスによるオンライン教室の内容などについて詳しく紹介した。
「遊びと学び」がコンセプト 楽しみながら学べるコンテンツを海外も視野に配信
【生沼氏】
「ラフ&ピース マザー」は、会社名でありサービス名でもあります。もともとは、2017年に、吉本興業の大崎洋 代表取締役会長の「沖縄からアジアに向けたコンテンツ配信プラットフォーム事業を立ち上げたい」という思いを発表したことから始まりました。
現在、日本で主流となっているコンテンツ配信サービスは「Netflix」「Amazonプライムビデオ」など海外発のサービスです。日本のサービスも「アベマティービー(Abema TV)」「エフオーディー(FOD)」「パラビ(Paravi)」「ティーバー(TVer)」などいくつかありますが、国内限定のプラットフォームです。吉本興業では「日本発で海外にも発信していきたい」と、海外を視野に入れています。発表から2年の間にNTTの澤田純 代表取締役社長にご賛同いただき、外国やテレビ局のサービスとの差別化を図る意味も含めて、まずは教育市場に向けた、楽しみながら学べるコンテンツを配信するプラットフォームにすることで話がまとまりました。さらに、クールジャパン機構にも加わっていただき、日本の優良な教育コンテンツを海外にも配信していく事業がスタートしたわけです。
▲ スライド1・ラフ&ピース マザーは、
教育コンテンツを制作、配信する事業を行っている
「ラフ&ピース マザー」のコンセプトは「遊びと学び」で、さまざまなコンテンツを制作し発信しています。弊社の事業の柱は、アプリでのデジタル体験の配信、リアル体験の場の増設、海外へのコンテンツ配信、この3つです。
弊社には、吉本興業のエンターテイメントを中心としたソフト力、クールジャパン機構の海外向け事業展開支援のノウハウ、NTTグループの持つ豊富なデジタルテクノロジーのスキルがあります。さらに、コンテンツ制作やリアル体験のワークショップの分野においては、石戸さんが理事長を務めるCANVAS、そしてフジテレビで数々のバラエティ番組の演出をされていたスチールヘッド 代表取締役の小松純也氏にも、監修をしていただいています。
▲ スライド2・ラフ&ピース マザーは、
5社のノウハウを結集させて事業を行っている
弊社のビジョンは「風をつくる子へ。」です。学校では基礎的で大事なことを学びますが、テクノロジーの進化と共に我々の社会や生活環境は、速いスピードで変化しています。弊社のビジョンには、変化が激しい今の世の中に対応できる、自分たちで風を作っていけるような子ども育んでいきたいという思いが込められています。
日本は100年以上続く企業が世界でもダントツに多い国のひとつですが、それでも社会の変化は非常に激しくなってきています。10数年前までは有力だったサービスやビジネスが急に通用しなくなることで、そこで働く人たちが職を失ったり生活スタイルが一変したりします。
そこで、我々は子供たちに、遊びと学びを通じて「変化の激しい時代に適応していく力」を身に着けてほしいと思っています。それには、コミュニケーション力が重要であったり、発想力や想像力が必要あったり、また、好奇心や主体性も大変重要になります。
学校の補完というよりは子供たちの人間力を育みたいとの思いがあります。
▲ スライド3・速いスピードで変化する時代に
適応できる子供を育てたい
楽しみながら学べる動画や知育ゲーム、ライブ配信のオンライン教室を用意
2021年3月20日に、ラフ&ピース マザーのサービスを提供開始して2か月ほど経ちました。いつでも「楽しみながら学べる」動画を視聴できるVOD(ビデオ・オン・デマンド)サービスと、ゲームで遊びながら学べるサービスは、いずれも、AppStoreやGoogle Playで「ラフ&ピース マザー」アプリをダウンロードすると、スマートフォンやタブレットで楽しむことができるようになります。もう一つがオンライン教室で、ワークショップや授業のライブ配信を行っています。こちらはWebブラウザのみで利用できます。
現在は日本国内のサービスですが、今後、海外向けに展開をしていきたいと考えています。楽しみながら学べる動画のコンテンツのターゲットは3才から12才ですが、12才以上の方が見ても楽しめる内容です。
学びの要素としては9つあり、学校教育の授業の科目ではなく、コミュニケーション能力や世の中のこと、時事的なこと、マナーや礼節、教養といった広い意味での知識を身に着ける、最新テクノロジーに触れるなどが目的です。
サービス開始時点で、「楽しみながら学べる」動画は550本、アプリは18個提供し、毎週金曜日に更新していて、現在は動画600本以上、アプリは20個以上に増えています。
コンテンツの概要をご紹介します。数多くのコンテンツをオリジナルで制作しています。
「ムービー」は、子供たちが見やすい5~10分程度の動画です。「タッチムービー」は動画の中に選択肢が出てきて、子供たちが画面を触って選ぶことでその後の内容が分岐し、変化するものです。「ゲームアプリ」は、いわゆる知育的なゲームです。詳細についてはこのあとご紹介します。このようなアプリで遊び放題のサービスを、現在月額500円で提供しています。
絵本を1冊買うとだいたい1000円ぐらいします。ですから、その半分くらいの価格で子供たちの空き時間を楽しみながら学ぶ機会に変えることができれば、と考えております。
子供の親や保護者向けの機能としては、子供たちがどんなアプリで遊びどんな学びを体験したか、グラフで表示できるようになっています。「折り紙を作る動画を楽しみました」、「水族館の動画で魚の生態を学びました」といったことが、コメントでも見られます。今後は、親御さんが子どもに見せたいコンテンツを選んで推奨できるような機能も、作っていきたいと思っています。
▲ スライド4・ラフ&ピース マザー
サービスの全体像一覧
ライブ配信のオンライン教室もこの3月20日からスタートしたサービスで、Webブラウザで見られる双方向のワークショップをたくさん行っています。月額980円の「充実プラン」に入っていただくと、受講可能になります。こちらでは、プログラミングを楽しく学べるワークショップ、小学生から学べる受験英語、運動神経アップの教室、歌の教室、オンラインでの社会科見学、お金の話、自宅でできる基礎医療といった、さまざまなジャンルのワークショップを開催しています。吉本興業のタレントや著名人に出演いただいて、一方的にではなく子供たちとコミュニケーションを取りながら進めている点が大きな特徴です。
また、春休みや夏休みに都市部や各地で大きなイベントを行って、通常はデジタル体験の学びをリアルに体験できる場も、作っていきたいと思っています。現在は新型コロナウィルス感染拡大の影響でリアル体験イベントは実施しにくい状況ですので、感染状況が落ち着きましたら徐々にやっていきたいと思っています。
現在このサービスは日本国内で行っていますが、これらコンテンツを翻訳して海外に向けて配信することも視野に入れて事業を行っています。
吉本興業のタレントやオリンピックメダリストも登場
提供中のコンテンツをご紹介します。例えば、「超ハイスピード日本史」は、歴史本も出版している吉本興業のタレントが監修した、5分で分かる戦国武将、といった紙芝居形式の動画です。
「ゆりやんママの小手先ゲームセンター」も、吉本興業のタレントが学校や家にある身近なものを使って、友達とコミュニケーションを取って遊ぶ提案する動画です。「せかいのおともだち」は、日本に住んでいる外国人のところに実際に遊びに行って、文化の違いなどを学ぶものです。
オリンピックのメダリストの方々に直接教えていただく「速い走り方」や、有名な方にそのお仕事のすごさを教えていただく「教えてすごい人!」といった動画もあります。
▲ スライド5・提供中のムービー(動画)のコンテンツ一覧と紹介
その他にもスマートフォンやタブレットの画面にタッチしながら楽しむタイプの動画もあります。「水族館の魚食べちゃおう」は人気のある動画です。動画の中で、出てきた魚に触るとその魚の栄養分に関してやどんな料理にするといいといった情報が見られます。
他に、ものすごく良く飛ぶ紙飛行機を作る動画も人気が高いです。鉄棒の逆上がりのやり方の動画や、YouTube動画とコラボして、弊社のタレントが家族と手遊びする動画もあります。
最近一番見られている「リアルピンチ!脱出大作戦!」は、自然災害などでピンチになったときに、どうやって切り抜ければいいかを学べる内容になっています。間違った選択肢を選ばないようにという、ゲーム的な要素も含まれた動画です。
「OFF-Limit ~立ち入り禁止~」は、普段は入れない場所からの景色を見ることができます。たとえば、スカイツリーのてっぺんを清掃する人の目線になって、スカイツリーからの映像を360度カメラで撮影しており、家にいながらその景色を体験することができます。
▲ スライド6・人気のタッチムービーのコンテンツ一覧と紹介
ゲームアプリは現在、20本提供しています。「携帯人間AIジミー」は、吉本興業に所属するタレントを起用して、彼に実に2万もの質問を行い、それをAIに学習させて、本人のような思考と話し方をする顔面アプリというものにしたものです。子供が話しかけて、しりとりをしたり、クイズをしたり、コミュニケーションできるアプリです。
「ギャグピアノ」は、音階をギャグや楽器に切り替えてピアノが弾けるアプリです。
幼児向けに初めてのアプリ体験として、触ると画像が変化する「タッチカード」は、福岡のアプリ開発会社が作ったもので、我々のアプリでも無料で利用いただけるようになっています。他にも算数で敵を倒すアプリ、間違いさがしのアプリ、パズル感覚で数理の基礎知識を育むゲームなどのアプリを揃えています。
▲ スライド7・ゲームアプリのコンテンツ一覧
Webサービスとして提供「オンライン教室」 ワークショップを開催、イベントと連動も
オンライン教室のラインナップは現在80種類あり、CANVASと連動してワークショップを開催しています。折り紙教室、漫画の描き方教室、アジアに住んでいる吉本興業の芸人とオンラインでの海外体験、宇宙の話を聞く、家にあるいろんな液体を使う色のサイエンス、やさしい医学講座といった、学校ではなかなか学ぶことができない教室を取り揃えております。
▲ スライド8・オンライン教室、ワークショップの一覧
コロナの影響もあって感染対策が不可欠でしたが、ゴールデンウィークに行ったオンラインイベントはおかげさまで大盛況でした。吉本興業所属のタレントが、ドローンを実際に飛ばしながらドローンの基礎知識を教える内容や、プログラミングでゲームを作るワークショップなど行いました。今後も、コロナの状況を見ながらになりますが、夏休みに向けて企画して行きたいと思っています。
今後の展望として、当初は常設のパークも作ろうとしていたのですが、コロナで先が見えない状況ですので、リアル体験のイベント開催については、期間展示的にイベント展開しながら各地でできる規模のものを考えています。
また、人気のあるコンテンツを英語や中国語にローカライズして海外のマーケティングデータも取りながら配信していくことも考えています。
▲ スライド9・人気のコンテンツを
外国語にローカライズして海外でも配信する予定
現在、提供しているオリジナルコンテンツは、映像を作るチーム、アプリを作るチームが、さまざまな会社と一緒に制作しています。このように、「ラフ&ピース マザー」の事業は、さまざまな会社とアライアンスを組んで取り組んでいます。例えば、「リアル体験」のコンテンツでは、現在、さまざまなテーマパークを運営しているところや、他のジャンルのデジタルコンテンツを制作されているところと連携しています。こういった連携案件は今後も増やしていきたいと考えています。
マーケティングでも、さまざまなコミュニティや電通をはじめとした代理店やメディアと連携しています。コンテンツの配信を支えるプラットフォームでも、いろいろな形での連携が考えられます。個人、企業、何かお持ちの方がいらっしゃいましたら、連携させていただければと思います。
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