第34回オンラインシンポ
「『eスポーツ』で人は育つのか~NTTe-Sportsのゲームレッスン『ユニキャン』の挑戦~」
レポート・前半

活動報告|レポート

2021.3.12 Fri
第34回オンラインシンポ<br>「『eスポーツ』で人は育つのか~NTTe-Sportsのゲームレッスン『ユニキャン』の挑戦~」<br>レポート・前半

概要

超教育協会は2021210日、NTTe-Sports 代表取締役副社長の影澤潤一氏を招いて、「『eスポーツ』で人は育つのか~NTTe-Sportsのゲームレッスン『ユニキャン』の挑戦~」と題したオンラインシンポジウムを開催した。

 

シンポジウムの前半では、影澤氏が「eスポーツ」と呼ばれるコンピューターゲーム市場の現状と課題及び同社の取り組みに関するプレゼンテーションを行い、後半では、超教育協会理事長の石戸奈々子をファシリテーターに参加者を交えての質疑応答を実施した。その模様を紹介する。

 

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■日時:2021210日(水) 12時~12時55分

■講演:NTTe-Sports 代表取締役副社長 影澤 潤一氏

ファシリテーター:石戸 奈々子 超教育協会理事長

 

影澤氏は、約30分間の講演において、日本におけるeスポーツの現状とNTTe-Sportsの活動、同社が展開するゲームを通じた教育ソリューション「ユニキャン」について説明した。主な講演内容は以下のとおり。

 

 

日本のゲーム教育の現状について、簡単に説明します。学生がゲームの実力を発揮できる「大会」のようなシーンが着実に増加しているのに対し、ゲーム自体を学び、トレーニングするシーンや、そもそも「ゲームと教育」をどう考えていけばいいのか、というようなところはまだまだこれからです。

 

▲ スライド1・日本のゲーム教育の現状

 

これには「ゲームに対するネガティブなイメージ」を持つ層のみならず、「好きの反対は無関心」とゲームへの関心が薄い層の存在があります。実数としては最も多いこの層の人々の関心を、他のエンターテイメントやスポーツのレベルまで高めていくことが重要です。

 

また、「リーグ」や「イベント」など学生が活躍できるシーンが増えているとは言え、「学生の本分は勉強」という考えは根強く残っています。ゲームは勉強を阻害しない、むしろ、ゲームをすることでこういうところが評価されるというところを、はっきり示す必要があります。

 

参考までに世界の状況をみますと、国がゲームをeスポーツとして認めているところはアメリカ、中国、韓国をはじめ少なくありません。若者がゲームに真剣に取り組むモチベーションを保てる環境が整っていたり、大学での奨学金獲得や一芸入試などにeスポーツが使われていたりするところもあります。

 

▲ スライド2・世界のゲーム教育

「ポジティブな学術的研究」も「ネガティブを払拭するアクション」も足りていない

ゲームのメリットの研究は、さまざまな発表されていますが、「学力の向上」や「課題解決力」はまだしも、「脳機能の向上」などはやっと多くの人が取り組み始めた段階です。逆に「認知症予防」などは、20年数年前にすでに「ぷよぷよでボケ防止」が話題になるほど古くから研究されています。「何となく頭を使い、しかも体はあまり使わずに済む」ところが、高齢者や障害をお持ちの方でも取り組む価値が大きいと考えられてきました。

 

▲ スライド3・ゲームをするメリット

 

一方、ゲームをするデメリットとしては、まず「依存症」に代表される「疾病リスク」が挙げられますが、これはWHOに障害認定を働きかけた日本の功罪でもあると思っています。もちろんゲームに依存してしまう人もいると思いますが、むしろ、ゲームに没頭する環境がもたらした結果に過ぎないのではないでしょうか。いずれにしても、ゲームとの付き合い方を自己管理できない人には周囲の支えが必要となるわけですが、必ずしもゲームをすると依存症になるわけではないということは、明確にしておかなければならないと思っています。

 

要するに、日本においては、ゲームに関する「ポジティブな学術的研究の結果」と、「ネガティブを払拭する具体的なアクション」が圧倒的に足りていないと、私は考えています。

 

▲ スライド4・ゲームをするデメリット

eスポーツで「社会で生き抜く力」をNTTe-Sportsが目指す取り組み

こうした日本のゲームを取り巻く環境を踏まえて、NTTe-Sportsのゲーム教育への取り組みを説明させていただきます。

 

私自身の経験から、ゲームには様々なことを考える力など、他のスポーツや研究に通ずるところがあると考えています。ゲームに真剣に向き合うことで、準備段階での分析力や思考力、練習や実践での情報処理力、対応力、想像力、チーム戦でのコミュニケーションや協調性など、「社会で生き抜く力」が培われます。

 

▲ スライド5・NTTe-Sportsの考え①-社会で生き抜く力

 

総じて求められるのは、ゲームとリアルの両方で自己をきちんと管理し、律していく力や、ゲームに勝つためにベストを発揮できる集中力、抱えている課題を解決していく力などであり、それは自分の中で完結できるものもあれば、人に教わったり、コミュニケーションの中で気づいたりして、自分のものにしていくものもあります。そのためには、最近のeスポーツはオンラインが中心ですので、ネットリテラシーやネットマナーは必然的に求められます。

 

もうひとつ、eスポーツの持つ良さとして「多様性」があります。

 

▲ スライド6・NTTe-Sportsの考え②-多様性の実現

 

eスポーツのメリットとして多くの人が指摘するのが、年齢や性別、ハンディキャップの有無を超えて比較的誰もが同じコンディションで競技に参加できることです。世の中には、歌が好きな人も、絵を描くことが好きな人もいます。こういった「自分らしく活躍できる選択肢」の一つにゲームがある社会は実現できると思っています。

 

そういった思いから、弊社では「NPO法人高卒支援会」の活動を支援させていただいています。ここは、いわゆる「引きこもり」や「不登校」になった子供が、高卒の資格をきちんと取れるように支援していますが、その活動の一環としてeスポーツを取り入れており、その練習場所の提供やティーチングの支援などを行っています。

 

リスク・懸念への対応についてですが、「ファミコンを取り上げられた世代」としては、親や先生の考え方を押し付けて強制的に止めさせるのではなく、本人たちの気づきを促してやることが重要と考えています。そのためには、ゲームへの接し方を指導する側が、きちんと理解することが大切です。

 

▲ スライド7・NTTe-Sportsの考え③-寄り添い、気づきを促す

 ゲームを通じて「人格形成」「ユニキャン」が大切にした4つのこと

「ユニキャン」はそうしたことを考えて作ったサービスです。

▲ スライド8・「ユニキャン」のサービス概要

 

「オフライン」メニューも用意していますが、主軸は「オンライン」のゲームで先生と一緒にプレイしたり、ゲームを通じてコミュニケーションや課題解決力を育んでいったりすることにあります。そのため、講師には「ゲームと自分の人生を両立できている人」を迎えることにこだわり、厳正な面接や模擬授業を実施しています。

 

また、私たちのサービスは、世の中に多いマッチングサービスのように、ゲームの中身だけを教えるわけではありません。ゲームを通じて人としての成長を学んでもらう「人格形成の場」こだわっていて、そういったことを教えられる講師との継続した連携やナレッジの蓄積に、非常に注力しています。

 

こうした考え方が、ユニキャンが「大切にしたこと」の「教育を真剣に」につながります。

 

▲ スライド9・「ユニキャン」で大切にしたこと

 

講師には、塾講師の経験があるとか、社会人で部下の育成をしたことがあるといった人たちを軸に考えていて、ただゲームが上手いだけでは先生になれません。2つめの「着実なサービス」としては、これまでに述べた使用許諾やカウンセリング、講師面接、ナレッジの蓄積、講師との継続した連携などを実施しています。

 

3つめの「どこでもだれでも」は、多様性というところにも繋がりますが、ゲームを通じて成長したいという人は、年代を問わずお子様から社会人まで、あるいは孫から祖父母まで、幅広く受け入れることを考えています。講義は完全オンラインを基本とし、時々オフラインセミナーのようなことを考えています。

 

私たちが非常に大事と考えているのは、「ゲームを学ぶ」ということの認知と、そのこと自体を仕事や市場として拡大していくことです。私自身「体系立ててゲームを学ぶ」ことをやってきたことはなかったので、そういったチャレンジの意味でも非常に興味深い仕事と思っています。

 

ユニキャンのサービスは基本的にオンラインですが、専門性を伸ばすために、オフラインを含む集中講座のような形で検討しているものもあります。例えば現在募集中で3月開講を予定している「MakeCode Arcade講座」は、実際に自分でプログラミングしてゲームを作ってみましょうという講座です。よく、「プログラミング教育とeスポーツには親和性がある」と言われますが、その具体例の一つとして「好きな物を作る手段としてのプログラミング」を学ぶもので、「プログラミングを学ぶこと」自体が目的にならないことを大事にしていきたいと思っています。

 

また、ユニキャンとは少し離れますが、そういう講座だけではなくて実際にセミナーを開催すること自体を、そういった職業訓練の場にするような企画も考えています。

 

今後の展開としては、サービス自体を磨き上げてタイトルを増やし、講師の質を高め、生徒を増やしていくことはもちろんですが、現在行っている「マス向け」サービスだけではなく、学校、企業、塾、eスポーツ施設など「for X」的な、ちょっと「束感」のあるようなメニューにして、OEM提供も考えています。

 

▲ スライド10・ユニキャンの今後の展開

 

弊社は、これらの活動を通して「『ゲーム×学ぶ』市場の確立」や「『ゲームライフバランス』の実現支援」といった、ゲーム好きな大人がきちんと続けていけるような世界の実現を目指します。そのためには、ユニキャンを始めとする弊社のサポート・教育事業だけではなく、他の事業や関係する方々とも協力していきたいと考えています。

 

最後に本日のまとめとしてまず、「人生において大事なことはゲームを通じて学べる」ということ。これは私自身顧みて強く感じることですが、具体的に「何が学べる」のか、あるいは「何が良かった」のかは、ここからさらに明文化・体現化して、誰もが「そうだね」と納得する世界を作っていかなければならないと思っています。

 

次に、「ゲームとeスポーツ」という観点でみると、「eスポーツ」という「ゲームを使った競技」に特化しているからこそ、より強くなりたい、いい結果を出したいという目標を持つことができます。従って「eスポーツで学ぶことができるのか」と問われれば、そこは「できる」と答えられますが、そういった土壌を醸成していくためには、まずは味方をどんどん増やしていく必要があります。

 

そのためには、超教育協会やJeSU(日本eスポーツ連合)、さらにNTTという冠を戴いた弊社のような企業も含めてゲーム/eスポーツに対するアカデミックな分析を行い、ネガティブを払拭し、ポジティブをよりアピールして、eスポーツを日本が世界に誇る文化の一つとして、定着して醸成させることが必要だと思っているところです。

 

▲ スライド11・本日のまとめ

 

>> 後半へ続く

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