※本レポートの作成にあたっては、生成AI「Gemini」を活用しています。
概要
超教育協会は2025年10月15日、Google 教育事業部の杉浦 剛氏を招いて、「Google for Education AI とひらく学びの未来 〜 Gemini が教育現場にもたらす革新 〜」と題したオンラインシンポジウムを開催した。
シンポジウムでは、杉浦氏が Google の「AI ファースト」戦略や、生成AI「Gemini」による文化的な変化、そして教育現場での具体的な活用事例について講演を行った。後半では、超教育協会の石戸氏との対談形式で、視聴者からの質問を交えながら、AI時代における教育の未来像について熱い議論が交わされた。本レポートでは、その講演内容と質疑応答の模様を詳細に紹介する。
※本記事で紹介する情報は、イベントを実施した2025/10/15時点での最新情報であり、Gemini 3.0 の内容は含まれません。バージョンアップされた新しいGemini をお試し下さい。
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講演の冒頭、杉浦氏は Google の検索文化が現在進行形で大きな変化を迎えていることに触れた。
杉浦氏は、「ユーザーが意識せずとも Google のAIに触れる機会が増えている」と指摘する。Google 検索のAI モードは日本語でも対応し、Webサイトの情報をリンクと合わせて表示し、より複雑なユーザーのニーズにも答えることができる。
この変化のスピードは、過去の技術革新と比較しても桁違いである。
ただし、Google にとってこのAIブームは突発的なものではない。同社は10年以上AIの研究開発を続けてきた。杉浦氏は、現在の「Gemini」の躍進は、長年にわたる研究開発の積み重ねの結果であると語った。
教育プラットフォームでの「AI ファースト」
教育現場で広く利用されている「Google Workspace for Education」においても、AI機能の実装は着実に進められてきた。杉浦氏は、Gmail の「スマート作成」機能を例に挙げた。2018年から提供されているこの機能は、メールの返信文をAIが提案するもので、すでに多くのユーザーが日常的に恩恵を受けている。
また、教育現場に特化した「Google Classroom」では、「演習セット」にAIが活用されている。これは、教師が出した課題に合わせて、AIが適切な教材動画や学習コンテンツを推薦してくれる機能であり、個々の生徒の学習ニーズに合わせた指導を支援する仕組みとして、すでに学校現場での活用が進んでいる。
マルチモーダルな体験を提供する「Gemini Live」
杉浦氏は続けて、Gemini アプリの最新機能である「Gemini Live」についてデモンストレーションを交えて紹介した。Gemini Live は、テキストだけでなく、画像や音声を通じてAIと自然に対話できる機能だ。
例えば、修学旅行や校外学習で名古屋城を訪れた際、スマートフォンのカメラで城を映しながら「このお城の歴史について教えて」「特徴は何?」と話しかければ、AIがまるで専属ガイドのように解説してくれる。名前の分からない芸術作品や植物にカメラをかざして質問することも可能だ。この機能は Android および iPhone の両方で利用可能であり、杉浦氏は「まだ試していない方は、ぜひアプリを入れて体験してほしい。」とその性能に自信をのぞかせた。
他社ツールとの差別化:エコシステムとの統合
視聴者から寄せられた「Microsoft や OpenAI など他社の生成AIと比較した Google の強みは何か」という質問に対し、杉浦氏は「Google のエコシステム内でのシームレスな統合」を最大の利点として挙げた。
Gemini は、単体のチャットボットとして機能するだけでなく、Google Workspace(ドキュメント、スライド、スプレッドシートなど)、YouTube 、Google マップといった他のアプリケーションと容易に連携できる。例えば、ドキュメント作成中にAIを呼び出して文章を生成したり、YouTube 動画の内容を要約させたりといった作業が、アプリを行き来することなくスムーズに行える。この「統合のしやすさ」こそが、ユーザー体験を向上させる Google の大きな特徴である。
教育機関における「安全性」と「年齢制限撤廃」のインパクト
本シンポジウムの中で特に注目を集めたのが、教育機関における Gemini の利用に関するアップデートである。杉浦氏は、Gemini が「Google Workspace」の「コアサービス」に仲間入りしたことを報告した。
Gemini が、教育機関向けの Gemini for Education としてコアサービス化されたことで、教育機関が求める厳格なデータセキュリティ基準と管理体制の下で運用されることになった。具体的には、Google Workspace for Education ユーザーが入力したデータが Google の機械学習やモデルのトレーニングに利用されることは一切ない。これにより、教育委員会や学校は、機密情報や個人情報を含むデータを扱う際も、安心して Gemini を利用できる環境が整った。
このセキュリティ強化に伴い、これまで設けられていた年齢制限が撤廃され、小学1年生から Gemini を利用できるようになった 。杉浦氏は「以前は『GIGAキッズ』と呼んでいた子どもたちが、これからは『AIキッズ』として学びを変革していく」と期待を寄せた。
さらに、教育機関のアカウント(Google Workspace for Education)で Gemini を利用する場合、教育向けに調整された追加モデル「LearnLM」が適用される 。LearnLM は、学術的根拠に基づいた回答や、STEAM教育を支援する推論機能、回答へのフィードバック機能を強化しており、一般消費者向けのモデルとは一線を画す「教育のためのAI」となっている。
進化するモデル:Gemini 2.5 Pro と創造性の拡張
杉浦氏は、Gemini のモデル性能についても言及した。最新の「Gemini 2.5 Pro(※セミナー開催時点)」は、ベンチマークテストでの性能が大幅に向上しており、特に日本語処理能力の進化は目覚ましいという。
Gemini 2.5 Pro は、日常的なタスクを高速に処理する「Flash」モデルに対し、より高度な推論や創造的なタスクに適している。杉浦氏は、この高性能モデルが教育機関向けに無料で開放されたことを強調し、アプリ作成、動画・画像生成、コーディングといった高度な学習活動での活用を推奨した。
創造性を育む活用事例として紹介されたのが「Storybook」と画像生成機能だ。「Storybook」は、覚えにくい歴史用語や機器の使い方などを、AIがカスタマイズ可能な絵本形式に仕立て上げる機能である。例えば「マルクス・アウレリウス・アントニヌス」という名前を覚えるために、彼が30回登場する物語を生成させることで、楽しみながら反復学習ができる。
また、画像生成機能では、子どもが描いた単純な線画(スケッチ)を、AIが「アニメのキャラクター風」のアート作品に変換するデモが紹介された。杉浦氏は、自身の子どもとの体験を交えながら、「AIは子どもの想像力をかき立て、表現の幅を広げる強力なツールになる」と語った。子どもが描いた「謎の絵」が、AIによってプロ顔負けの作品やアニメーションに変わる瞬間は、親子のコミュニケーションをも活性化させる。
ハルシネーションを克服する「NotebookLM」
教育現場で生成AIを使用する際の懸念点として、事実と異なる情報を生成する「ハルシネーション」がある。この課題に対する Google の回答が「NotebookLM」である。
NotebookLM は、インターネット上の膨大なデータではなく、ユーザーがアップロードした信頼できる資料(ソース)に基づいて回答を生成する「グラウンディング」に特化したツールだ。教科書のPDF、文部科学省のガイドライン、自治体の資料などをアップロードすれば、その内容に基づいた正確な回答を得ることができる。
デモンストレーションでは、会議の議事録やセミナー資料を読み込ませ、内容を要約させたり、マインドマップを作成させたりする様子が紹介された。さらに、新機能として注目されるのが「Audio Overview(音声解説)」機能だ。これは、アップロードした資料の内容を元に、AIが2人のナビゲーターによるラジオ番組風の対話(ポッドキャスト)を生成するものである。杉浦氏は、「人間がプレゼンする時代から変わっていく」と驚きを隠せない様子で、AIが資料の要点をテンポよく解説する音声を再生した。
また、NotebookLM は理解度確認クイズの作成も得意とする。生成されたクイズは Google Classroom 経由で生徒に配信でき、教師が指定した範囲(ソース)内での学習を促すことができる。
「Canvas」が拓く、対話的な制作と学習
杉浦氏が「可能性の塊」として紹介したもう一つのツールが「Canvas」である。Canvas は、ドキュメント作成やコーディングに特化したインターフェースを持ち、AIとの対話を通じて成果物をブラッシュアップしていくことができる。
デモでは、プログラミング知識がない状態から「Canvas」を使って Web教材を作成する過程が披露された。「宇宙の天体の動きを小学生でも分かりやすいアニメーションで作って」とプロンプト(指示)を入力すると、瞬時に3Dの太陽系シミュレーションが生成された。さらに杉浦氏は、「クリックやドラッグで視点を変えられるようにして」「太陽の光が当たるところは惑星の色を変えて」と追加の指示を出し、AIがコードを即座に修正して機能を実装していく様子を実演した。
また、Canvas は学習支援ツールとしても優秀だ。「中学生向けに相対性理論のクイズを作って」と指示すれば、適切な難易度の問題が生成される。生徒が回答すると、Canvas は単に正誤判定をするだけでなく、「君はここが苦手だから、まずはここから復習しよう」といった具合に、生徒の理解度に合わせたアドバイスや追加課題を提示してくれる。これはまさに、AIが個別の家庭教師(チューター)として機能する未来を示している。
Q&A:AIと共に変わる教育のカタチ
講演の後半は、石戸氏との対談形式で、視聴者からの質問に答えるQ&Aセッションが行われた。
—— 教師の役割はどう変わるのか?
「教師の役割はAIによってどう変わりつつあるのか」という問いに対し、杉浦氏は「先生の役割は『最強のアシスタント』を得て、より人間的なサポートへシフトする」と答えた。
具体的な事例として、体育の授業での活用が紹介された。バトンパスの練習において、教師があらかじめ「理想的なバトンパスのコツ」をプロンプトとしてAIに入力しておく。生徒が自分たちの練習動画を撮影しAIに見せると、AIが教師のノウハウに基づいて「もう少し手を高く上げてみよう」といった具体的なコーチングを行う。これにより、教師は一人ひとりの生徒に目を配りながら、AIにはできないメンタル面のサポートや、全体的な指導に注力できるようになる。
—— 特別支援教育への可能性は?
「Canvas」などで簡単にアプリや教材が作れるようになることは、特別支援教育やインクルーシブ教育においても大きな意味を持つ。杉浦氏は、「これまでは『こんな教材があったらいいのに』と思っても、技術的な壁があって作れなかった。しかし、AIによってその壁がなくなり、目の前の子どもの特性に合わせた教材を先生自身が手作りできるようになる」と述べ、AIによる「アプリ開発の民主化」が教育の公平性に寄与する可能性を強調した。
—— 日本のAI活用は遅れているのか?
OECDのレポートなどで日本の教育におけるICT活用が遅れていると指摘されることがあるが、杉浦氏は「肌感覚としては状況が変わってきている」と語った。海外からの視察団が日本のGIGAスクール構想(1人1台端末の整備)の成功に驚く現状を紹介し、「日本はハードウェアの整備が完了しており、次はそれをどう使いこなすかというフェーズに入っている。多くの自治体で先生がAIを使える環境は整っており、これからは具体的な活用ノウハウが横展開されていく時期だ」と分析した。
—— 年齢制限撤廃の背景にある思想とは?判断に至るまでの検討と安全性の考え方
年齢制限撤廃に関する質問に対し、杉浦氏はその背景に「管理機能の強化」があったことを明かした。Gemini for Education をコアサービス化し、管理者が生徒の利用ログを監査できる仕組みを整えたことで、「透明性」と「安全性」が担保された。これにより、リスクを恐れて利用を禁止するのではなく、適切なリテラシー教育とセットで利用を解禁する判断が可能になったという。「AIだけを例外にせず、Google Workspace という長い歴史を持つ安全なプラットフォームの一部として提供する」という Google の覚悟が、この決断を後押しした。
Next GIGA に向けたビジョン
シンポジウムの最後、杉浦氏は「Next GIGA」に向けた Google のビジョンを語った。
「Google のミッションは、情報のアクセシビリティを高め、誰もが情報を取得・発信できるプラットフォームを作ることです。地域による教育格差を埋め、例えば塾に行けないなど、何かしらの外的要因で学びを阻まれていた子どもたちにもテクノロジーの力で公平な学びの機会を提供したい」。
杉浦氏は、これからのフェーズは「日常的な浸透」であると述べる。特定の授業だけで使う特別なツールではなく、文房具のように当たり前にAIやグループウェアを活用し、教務も校務も効率化していく。そうして生まれた余裕が、子どもたちと向き合う時間を増やし、教育の質を高めていく。そんな未来を目指し、Google は今後も教育現場への支援を続けていくという。
「今日からぜひ、AIと共に新しい学びの形を作っていきましょう」 。杉浦氏はそう呼びかけ、シンポジウムを締めくくった。

