AIに依存するのではなく仲間として迎え入れる姿勢を目指す
第181回オンラインシンポレポート・後半

活動報告|レポート

2025.5.16 Fri
AIに依存するのではなく仲間として迎え入れる姿勢を目指す<br>第181回オンラインシンポレポート・後半

概要

超教育協会は2025年3月5日、岡山県立瀬戸高等学校 教育DX推進室長の久米 託矢氏を招いて、「生成AIを活用した教育実践~瀬戸高等学校の取り組み」と題したオンラインシンポジウムを開催した。

 

シンポジウムの前半では、久米氏がDXハイスクールとしての取り組みを推進している瀬戸高等学校における生成AIの活用事例や課題について講演し、後半では超教育協会理事長の石戸 奈々子をファシリテーターに、視聴者からの質問を織り交ぜながら質疑応答が実施された。その後半の模様を紹介する。

 

>> 前半のレポートはこちら

 

「生成AIを活用した教育実践~瀬戸高等学校の取り組み」

■日時:2025年3月5日 (水)12時~12時55分

■講演:久米 託矢氏
岡山県立瀬戸高等学校 教育DX推進室長 

■ファシリテーター:石戸 奈々子
超教育協会理事長

 

▲ 写真・ファシリテーターを務めた
超教育協会理事長の石戸 奈々子

 

シンポジウムの後半では、超教育協会の石戸 奈々子をファシリテーターに、視聴者からの質問を織り交ぜながら質疑応答が実施された。

生徒の自己効力感や目標意識が高まったという最も重要な『生成AI効果』に大きな関心が

石戸:「見つける力、受け取る力、考える力、伝える力、つながる力の理論を打ち立てていますが、この理論は、どのような議論を経て、何に基づいて打ち立てられたのか、お聞かせください」

 

久米氏:「社会情報学者に教育アドバイザーとして参画していただいています。その方にデジタル情報教育の理論やモデルを示していただき、ご提案いただいたり、文部科学省の総合的な探究の時間のスパイラルを活用したり、岡山県が提唱している『夢育』を参考にしながら、理論を考えていきました」

 

石戸:「探究型の学習で具体的にどう生成AIを活用し、その結果、これまでの探究学習とどのような違いが生まれてきたのかについて教えてください」

 

久米氏:「例えば問いを立てるところで、今まで本校の探究学習では『好きを極めろ』ということで、子供たちが好きな内容にフォーカスして問いを立てていました。しかし、その活動の裏で根拠となるデータが不足していたり、問いを立てる裏付けが不十分だったりしていました。

 

そこで生成AIを活用することで問いをさらに深め、好きというだけではなく、エビデンスがある問いを立てられるようになりました。同時に生徒同士で生成AIが立てた問いをさらに深く考えて改変して新たな問いとするなど、より深く探究できる問いを生成AIのサポートをもとに作ることができるようになりました。

 

また、フィールドワークでどのような質問をすれば良いか分からないという生徒についても、探究が進むような問いを生成AIと一緒に考え、生成AIが出してきた問いを生徒が改変することでより深いに問にするなど、探究を深められる機会を逃さないようになったところで、従来との大きな差がでてきたと感じています」

 

石戸:「御校はこれまでも探究学習に熱心に推進してきました。その上で生成AIを入れることより、導入・活用の前後でどのような変化があったか、アウトプットの質にどのくらいの変化があったかを具体的に示せる例はありますか。例えば、探究学習の深まり方の変化、アウトプットの方法の変化などありましたら教えてください」

 

久米氏:「これまで、探究活動で得た情報をどうアウトプットしたらよいのか分からないという場合、Googleで検索してヒットした論文の情報を、そのままコピー&ペーストして、『詳細はわからないのですがこういう情報がありました』と提示する生徒もいました。ところが生成AIを取り入れたことで、図やグラフにどんな意味があるのか、自身の探究に説得力を持たせるにはどういう見せ方を工夫すると良いのかを生成AIと一緒に考えることができるようになり、その結果、探究学習の発表における説得力が高まりました。また、情報の収集の仕方も根本的に変わりました。これまでは、アンケートで情報を収集するとき、探究の目的に合ったアンケートになっているか、目的と照らし合わせると必要ではないようなアンケ―トもありましたが、それらが生成AIを活用して調査項目を作ることで、きちんと探究につながるリサーチができるようになったことも大きいと感じています」

 

石戸:「探究学習においては、教員が生徒一人ひとりのテーマに寄り添うのは難しいのが実情ですが、生成AIが生徒やグループの伴走役、ファシリテーションの役割もしてくれていますね。それにより生徒も今までなら教員に質問できなかったことも、生成AIになら聞けるということで、探究の質的な向上が図られているのは素晴らしいです。

 

同時に生徒の意識変革において、自己効力感や自己有能感、目標意識が上がったとことは、一番大事なすべての根底にある部分に効果があったということです。この効果について、生成AIがどういう点において大きく寄与したと捉えていますか」

 

久米氏:「本校の生徒の特色として、進学校ではないので勉強にコンプレックスを抱えている生徒も一定数います。それが生成AIを活用していくことで、今まで超えられなかった壁を超えるために必要な要素が分かったのではないかと思います。自分ではアプリケーションを作ることができないと思っていた生徒が簡単に作れたりしただけでも、生徒にとっては今まで見えなかった視点や新たな境地に立てたという感覚を持ったのではないでしょうか。そういった可能性を生成AIが示してくれたことが、こうした数値が上がってきた要因ではないかと思っています」

 

石戸:「視聴者から、『子供たちにとってのAIを用いた教育のメリットとデメリットの両面を知りたいです』という質問がきています。様々な教科で実践されるなかで、メリットやデメリットなどをご共有ください」

 

久米氏:「音楽の教科で実践したのは、ChatGPTに作曲させて、学校のテーマソングを考えるという授業でした。ここで大事にしていたのは、最終制作者を生成AIにしないことです。

 

歌詞についても、自分の思い描いているビジョンと照らし合わせて、正しい内容になっているのかクリティカルシンキングをしっかりさせました。音楽でも同じで、生成AIを使うとプロが作ったような音楽が出てくるのですが、そのままでよいのかということを考えさせました。

 

大切なことは子供たちがまず考えて、それを表現するツールとして生成AIを使うということ。その『やり方』を理解することです。国語や英語についても同じで、最終作成者は全て生徒であるべきです。生成AIが書いた読書感想文について、どこが自分の思っていたのと違うかを書かせたり、レポートについても敢えて嘘を5つ入れてもらうプロンプトを作って、どこが嘘なのか考えさせるといった取り組みをしました。生成AIが出すものは全部正しいと思ってしまうのは危険です。どこがおかしいのかを評価させて、教員がそれを見取れる指標を設けるのは必要だと思います」

 

石戸:「視聴者から、『AI依存にならないためにどう防いでいるのか』や、『ハルシネーションに関してどういう指導をしているか』という質問がきています。生成AIを使うに当たって初めに子供たちに留意点を伝えていると思いますが、学校として生成AIリテラシーに関してどのような議論をし、どのようなマニュアルを作っていますか」

 

久米氏:「岡山県が作成しているガイドラインに沿って本校のガイドラインを作成し、4月当初に全教員に向けてガイダンスを行いました。教員にどういったことに注意しなければならないかや、プライバシーや著作権、ハルシネーションの問題などを伝えるようにしています。生徒向けのガイダンスでも同じです。進路指導でも生成AIを取り入れていますが、自分のエピソードを取り入れた内容を面接で話せるようにしないといけないと指導しています。

 

ハルシネーションについては、『こういう危険性がある』と言い過ぎてしまうと、生成AIを使う価値が分からなくなる生徒も出てきてしまうので、リスクと有用な活用法のどちらも伝えていかないといけない。そこが難しいと思っています」

 

石戸:「先生方や生徒たち、保護者の反応としてどのような声が多いですか」

 

久米氏:「保護者には、PTA総会や役員会でDXとして何を進めていくのか説明して、生成AIもどう使っていくか説明しています。その際、AIを活用して新しいことを学べることだけにフォーカスを当てるのではなく、モラルの部分も育成して正しい使い方を子供たちができるようにしてほしいというご意見をいただきました」

 

石戸:「実際に子供たちが使ってみてどうでしたか」

 

久米氏:「最初は、出される質問に対しての回答の早さや文章量に驚いていました。それをどう扱っていけばよいのかについて戸惑いがありました。AIが出す文章を最初から最後まで理解することができないから、どう扱っていけばよいのか分からない生徒はかなりいました。やはり、どう付き合っていくのかを教えるのが大切で、それを丁寧に伝えています」

 

石戸:「生成AIを使い始めてしばらく時間が経つと、生徒たちの学習の仕方や先生方の指導、授業の仕方にも変化が生まれるかと思います。子供たちの学習スタイルの変化や、先生方の授業スタイルの変化としてどのようなことが見られましたか。また、久米先生として今後どういうことを推奨していきたいと思っているかについてお聞かせください」

 

久米氏:「ひとつは授業面について、例えばKAHOOTを授業で取り入れたら、子供たち自身が生成AIでテスト対策問題を作るなど自主的な活動を行っていました。私たちはそこまでするとは思っていませんでした。最終的な内容のチェックは必要ですが、それを生徒たちがやってくれたことが感動でした。自分たちで可能性を見つけて取り組む力や、順応する力があると感じました。

 

推奨していきたいことに関しては、日常使いできるアイデアを生徒と教員とで共有できるようにすることです。授業における単元だけ、その授業の時だけ使うということでは、なかなか日常使いにはならないと思います。日常使いできるアイデアを教員が考えるのは大変ですが、それをやると生徒は教員の手から離れて自律的に使うことができるようになります。そういったアイデアを共有できるようになればよいと考えています」

 

石戸:「生成AIを日常的にどう使えるのか工夫するのは素敵だと思います。実践していることをもう少し教えていただけますか」

 

久米氏:「駄目な例ですが、生物の進化の授業で仮想生物を生成AIに出力させて、それが生態系にどのように適応するのか考えなさいという授業をやった時に、どれだけプロンプトを駆使しても、その生物がメカになってしまいました。そういう使い方は『違うな』と思いました。活用場面は精査していかないといけません。こちらがプロンプトを事前に打っておいて、それを子供たちに配信するというシステムなら日常使いしやすいと思います。プロンプト次第ということで、教員が、身に付けてほしい力をプロンプトの中にどう入れていけるのかが重要だと思います」

 

石戸:「視聴者から『小中学校は年齢制限もあり、ChatGPTを利用することに対して不安が大きいですが、高等教育ではそういった懸念はないですか。もしある場合、リスクの懸念をどう払拭しようと考えていますか』という質問です」

 

久米氏:「本校では、ChatGPTを年齢制限に合わせて使っています。Geminiも、学校のアカウントを利用する場合は18歳以上で、使えるツールは限られています。

 

懸念を払拭するための工夫では、企業が提供するサービスやアプリケーションの中にはネットワークに繋がっていない状態で生成AIを使うようにすることができます。どのような情報を生徒が出力したのかを把握できると、誹謗中傷に使うことの予防になります。入力する文章にフィルタリングをかけて、特定の文章や文言をはじいたりする、つまり生成AIに入力できないようにするツールもあります。教員がどう正しく使っているのを子供たちに見せるのも大事だと思います」

 

石戸:「『DXの基本から独自で検証を作っているのがすごいと思いました。どのようにインプットして体系化したのでしょうか。また、学校での実践が企業研修で取り入れられたというのも珍しいと思いました。こちらはどういうきっかけだったのですか』という、DX全体に対して体系的に整理をして検証していることに関して質問がきています。いかがでしょうか」

 

久米氏:「DX関連の物事に対して教員だけではアンテナが小さすぎると思いますので、社会情報学科の学者の方にアドバイザーとして入ってもらっています。他校の事例になりますが、学校評議委員会の中にDX戦略アドバイザーを入れています。自校だけで難しいのであれば、他校がやっている実践を共有したり、企業が提供しているものを採用して、それにアレンジを加えることから始めるのも重要だと思います」

 

石戸:「『生成AIがある時とない時でカリキュラムが大きく変わったと思いますが、どのようなステップでカリキュラム変更を進めましたか』という質問です」

 

久米氏:「カリキュラムに関しては、本年度から情報探究という情報Iがさらに発展した内容を取り入れられるよう開講しています。また次年度は、自分の活動を高めることができる時間を設けたり、さまざまな取り組みを行っています。カリキュラムはこれからも変更していくと思います」

 

石戸:「生成AIを使うことによって、学習の仕方や授業の仕方、さらに言うとカリキュラム全体が変化する可能性があると思います。生成AIを前提とした教育において、どういう変化を起こそうとしていますか」

 

久米氏:「授業に関しては変わっていくのは間違いないと思います。授業で生成AIを取り入れないことがやりにくさを感じていくような流れになってくるかもしれません。生成AIを使いたいと思う子どもも増えてくると思っていて、そうなった時に生成AIをうまく活用するスキルは財産になります。

 

それを踏まえて、『情報I』で教えなければならないことが多岐に渡るので、他の教科も意識して取り組むことが必要だと思います。例えば『情報I』には情報の整理、分析も内容に入っていますが、『情報I』で終わらせるのではなくて、全ての教科で身に付けられることは何か、情報リテラシーを高められることは何かを常に考えなければならないと思います。そこから、新たにカリキュラムとして出てくることはあると思います」

 

石戸:「これから生成AIを導入したいと思っている学校に対して、応援のメッセージをお願いします」

 

久米氏:「触ったことのないものに対して不安や恐怖はあると思います。子供たちに限らず大人も同じです。まず使ってみて、その中で得られたことを共有していく、仲間を作っていくことが大事だと思っています。本校でも先月、県内外の人を集めて、生成AIを取り入れた実践を共有して意見をいただく会を行いました。そういう場で、こんな実践の仕方があるとか、こういう使い方はどうかなという意見を交わしながら仲間を増やして、企業も巻き込みながら日本全体で取り組んでいただければ、我々としてもやりやすいと思っています」

 

最後は石戸の「ぜひ久米先生のノウハウが多くの学校に広がり、より多くの子供たちに今の時代にふさわしい新しい学びが提供できることを願っています」という言葉でシンポジウムは幕を閉じた。

後日回答

※本シンポジウムでは、視聴者から多数の質問が寄せられました。以下、後日久米氏から文書にて回答いただいたものをご紹介します。


 

  • 質問1 私自身、教育新ビジ企画・推進の仕事をしていた経験から、生成AIで生み出した結果をどのように教育や事務作業に取り込んでいくのか、バランスや仕組みを考え、実際に学校等の現場で実践していただくのに現場での大きなハードル(生成AIへの抵抗や体制面等)があると感じています。実際に学校現場で教育DXの取り組みをされている中で、運用に載せていくまでの間で工夫している点、上手くいっている点、試行錯誤してもなかなか上手くいかない点などぜひ現場での実践経験をもとにお伺いしたいです。
    また、実践していく中で、企業に期待する点(もっと実践現場に一緒に入って取り組んでほしい、コストを安価にしてほしいなど)についてもぜひお伺いしたいです。

 

久米氏:当校では、生成AIの活用導入にあたり、導入 利用 応用などステップを設けました。まず、導入では生徒にまず登録させること、特徴やハルシネーションなど気を付けることを周知しました。生成AIに対する抵抗感や運用体制の整備に時間を要する課題も認識しております。それについては教職員の研修を設け、実際に利用して、課題やどの様な場面で活用できるかなど話し合いました。次に利用として、小規模なパイロットプロジェクトを実施しました。各教科で試行的に生成AIを取り入れ、その出力結果を複数の視点から検証する体制を整え、英語の作文指導やプログラミング支援での活用が実際に行われました。

 


 

  • 質問2 貴校が目標とされているデジタルリテラシーの育成には、AIリテラシーも含まれると思うのですが、
    具体的にどのような力を身に着けることが必要だと思われますか?

 

久米氏:本校が目指すデジタルリテラシーの育成には、AIリテラシーも含まれており、具体的にはAIの基本原理や仕組みの理解、データリテラシー、そして出力結果を批判的に検証する思考力や倫理的判断の育成が重要と考えています。生徒が単にツールを使うのではなく、AIとの共存を前提に、情報の真偽や背景にあるデータの限界を理解する力を養うことが、今後の社会における基盤となると考えています。

 


 

  • 質問3 高校の探究活動に生成AIを活用しているとのことですが、有料版あるいは教育機関専用アカウントなどを通じて、無料版のものよりも高度なアウトプットに基づいて探究活動に活かしていらっしゃるのでしょうか?
    無料版と有料版のアウトプットの差が著しいため、探究活動の質にも影響するのではないかと思い質問させていただきます。

 

久米氏:探究活動では、初期のアイデア創出や概念実証においては無料版の生成AIでも十分に活用できると感じています。より精度の高いアウトプットや詳細な解析が求められる場合には無料版では回数などの制限があるので、活動のさせ方についても工夫が必要でした。また、出力の精度を向上させ、深い解析や多角的な視点からの考察が可能になるようプロンプトを工夫することも生成AIと共創する上で重要だとも感じています。次年度は有料版も探究活動で活用したいと感じています。生徒たちが、ツールの特性を理解し、目的に応じて適切に使い分けることで、高度な問題解決力を養えばと考えています。

 


 

  • 質問4 授業の一環として生成AIを使用するというシチュエーションに関する質問になります。学習指導要領の範囲ですとか、学年毎に学習している内容の範囲に絞ってAIに生成させる事はできるのでしょうか。できる場合ですが、子ども達の創意工夫の範囲を狭めることになってしまうのでしょうか。

 

久米氏:授業内での生成AIの利用については、学習指導要領や各学年のカリキュラムに合わせて、データを添付することで内容を一定範囲に制限することも可能です。また、本校では生成AIをあくまで「補助ツール」と位置づけ、決して生徒の創意工夫を奪うものではなく、生徒自身が考え、発想を広げるきっかけとなるよう授業設計を工夫しています。クラスメイトに非常に学力が高い生徒がいて、そのせいで生徒の創意工夫が奪われることはありません。生成AIの存在を前提として、生徒に達成してもらいたい目標をクリアする授業を考えることがポイントではないでしょうか。その結果、AIに頼りすぎず、個々の独自のアイデアを重視する姿勢が身につくのではないでしょうか。

 


 

  • 質問5 教職員研修の反応はどのようなものがありましたか?その後どのような変化がありましたか?現在、教職員の何%がAIを活用されていますか?

 

久米氏:教職員研修に関しては、初期は未知の技術に対する不安や抵抗感が見られましたが、段階的な研修プログラムと実際の活用体験を通じて、その効果を実感してもらうことができました。その結果、教職員の多くが日常業務や授業で何らかの形でAIツールを活用しており、特に事務作業の効率化や授業準備の支援といった具体的な効果が実感できるようになってきています。

 


 

  • 質問6 生身の人間相手が不要になると思いますか?

 

久米氏:「生身の人間相手が不要になる」という意見に対して、生成AIはあくまで支援ツールであり、対話や感情面でのサポート、そして人間ならではの判断力が求められる場面は今後も重要であると考えています。むしろ、そのような最終的な決定を生徒が行う授業でなければならないと考えています。

 


 

  • 質問7:生成AIは少なからずハルシネーションを起こしますが、その前提に立って学校教育で活用する際に意識されていることをお伺いしたいです。

 

久米氏:授業内では、ハルシネーションを題材とした古文の現代語訳を用いてディスカッションを行い、教科書などを根拠に正誤を自ら判断する検証方法を学んでいます。しかし、これは今後、生成AIに限らず、フェイクニュースなどさまざまな場面で正誤を判断することが重要になるため、モラルと共にその判断力を身につける必要性を感じています。

 


 

  • 質問8 生成AIを使用した授業や課題において、学生の評価方法はどのようにしていますか?また、どのようにあるべきだと思われますか。

 

久米氏:生成AIを活用した授業における学生の評価方法は、単に最終成果物のみを見るのではなく、生成AIの活用プロセスやその出力結果を生徒自らが検証し、さらに発展させる過程も評価すること、生成AIとどの様なやり取りをしているのかChatを共有させて確認するなど行っています。

 


 

  • 質問9 DXハイスクールに選ばれて多くの予算が付いたと思いますが、具体的にどのような教材を購入したのか教えてください。

 

久米氏:先日は、生成AIを用いた「知識構成型ジグソー法」の数学の授業を企業より、提案していただきどのように活用するのか校内で検討しています。

 


 

  • 質問10 生成AIがあるときとないときで、カリキュラムが大きく変わったのではないかと思うのですが、どのようなステップでカリキュラム変更を進められたのでしょうか。

 

久米氏: もともと本校が、ICT活用などを校内で話し合うなどの状況ありました、ですので、DXハイスクール採択される前から生成AIの課題など職員会議で議題なるなど行っていました、その後、教職員向けに基礎研修を実施し、複数回にわたる小規模なパイロット授業を行ってフィードバックを収集しました。これを基に、改善サイクルを経て、段階的なカリキュラム変更を実施しています。

 


 

  • 質問11 AIを授業に取り入れて、生徒の声や反応はどのようなものがありますか?また、授業を受ける姿勢や学力の面で変化があれば教えてください。
  • 質問12 生徒さんにとって、生成AIがハルシネーションを起こす(間違ったことを言う)ということは、当たり前のように受け入れられていることなのでしょうか?生徒さんの現状のようすをお伺いしたいです。
  • 質問13 AIが仲間という意識は斬新で新しい。ツールと考えていたし、その方が説明しやすかった。

 

久米氏:生成AI導入直後は生成スピードの速さなどに戸惑っている生徒もいました。しかし、その後の生徒の声は好意的で、「自分が考えていなかった視点でのアイデアがもらえる」「抽象的だった自分のアイディア対話を経て形になる」という意見が多く寄せられています。実際、アンケート結果からはグループディスカッションの活性化が確認され、生徒自身が探究活動に積極的に取り組む姿勢が顕著に見受けられます。

 


 

  • 質問14 生成AIの普及によって、これからの教育現場での課題はどのようなものになると思われますか?

 

久米氏:生成AIの普及に伴い、今後の課題として、情報の正確性やプライバシー保護、デジタルデバイドの解消、そして教職員のさらなるスキルアップが挙げられます。そして、生成AIが常に成長し続ける中で、教員や生徒、学校も絶えずアップデートしていく必要があると感じています。

 


 

  • 質問15 例えば、悩みを相談するような使い方も想定されてますか?

 

久米氏:初期段階での情報提供や簡易な相談対応に生成AIを用いて情報収集することは有用であると感じています。しかし、個々の深刻な悩みや複雑な事情に対しては、専門のカウンセラーや対面の指導が必要です。そのため、生徒に利用させるときに依存しないよう注意が必要だと考えています。

 


 

  • 質問16 子どもたちにとってAIを用いた教育のメリットとデメリットの両面を知りたいです。

 

久米氏:生成AIを使った教育のメリットとしては、まず生徒一人ひとりの理解度に合わせて個別最適化ができることが挙げられます。それに加えて、さまざまな視点を取り入れることで、創造的な学びを促すことも可能です。しかし、依存リスクやハルシネーションによる誤情報の混入など、デメリットにも注意が必要です。

 


 

  • 質問17 DXの基本から独自で研修を作られているのがすごいと思いました。どのようにしてインプットして体系化されたのでしょうか?また、学校での実践が会社研修で取り入れられたというのも珍しいと思いました。こちらはどういったきっかけだったのですか?
  • 質問18 他にすごい取り組みをされていると思われる学校、国内外の小中学校で参考にされている学校があれば教えてください。

 

久米氏:本校では、先行的に生成AIを取り入れている生成AIパイロット校の事例、リーディングDX校での校務改善などを参考にさせていただきました。
参考)https://leadingdxschool.mext.go.jp/

企業や専門家との連携も活用し、現場に即した研修プログラムの確立に努めた結果、教職員がより実践的な知識とスキルを身につけることができる環境が整いました。企業の研修に取り入れていただいたのは本校の教育DX戦略アドバイザーのかたが、企業の技術的な顧問をしている関係です。

 


 

  • 質問19 生徒の生成AI活用依存リスクに対して、具体的にどのような指導、カリキュラムを検討されているのでしょうか?
  • 質問20 AI時代に学校で身に着けるべき学びとは、どのようなものだとお考えですか?

 

久米氏:先日も3月7日情報モラル講演会を実施しました。下記のような目的で実施しました。このような授業を年数回実施しました。
1. 生成AIの仕組みや特徴を理解する。
2. 生成AIが作成する情報やコンテンツの信頼性・安全性を客観的に評価できるようになる。
3. AIを使う際に生じる著作権やプライバシー、フェイクニュースなどの情報モラルについて学び、主体的に考える姿勢を育む。
4. 将来にわたってAIと協働していく上で大切な「人間としての責任や倫理観」を意識する。

 


 

  • 質問21 生成AIを様々な場面で活用されているということで、大変勉強になりました。質問ですが、実際に生徒も先生も生成AIを使って取り組んできた中で、生成AIを使わせてはいけない場面や、人間だけで取り組んだ方が良い結果だったという場面がありましたら、教えてください。

 

久米氏:3年生の生徒が先日教えてくれたことですが、志望理由書を作成するなかで、その生徒は入れたい項目エピソードが2つあったそうです。しかし、生成AIは1つに絞ったほうがいいと提案されました。その生徒は「そこで1つにしたほうがいいのかもしれないが、それは自分の志望理由書ではなくなる」そう判断して、最終的に合格を勝ち取りました。
そのように、あくまでも仲間で、決めるのは自分。そのような、判断ができるように対面での指導も重要だと感じます。

 


 

  • 質問22 小・中学校だと、年齢制限もあり、ChatGPTを利用することに対しての不安がより高いのですが、高等学校ではそう言った懸念はありますか?また、ハルシネーションやフィルタリングなど、様々リスクの懸念を払しょくするために、高等学校における生成AIりようにおいて、必要な機能はどんなものがあると思いますか?
  • 質問23 生成AIを授業にとり入れる前からICT活用は普段から活発に行われていたのでしょうか?

 

久米氏:地方公務員である以上一つの企業の紹介がなかなかできなくて説明がわかりずらかったですね。サテライトオフィスなど様々な企業が取り組んでいます。
参考)https://www.sateraito.jp/
また、大阪市教育委員会(小中学校)では、GIGAスクール構想下で1人1台端末を整備し、ChromebookとWindows端末を教育ブロックごとに導入するなど先進的なICT環境を構築している。近年は生成AIを活用した教育の可能性を探り、段階的な実践を展開中です。その際にコニカミノルタジャパン株式会社と連携していると聞いています。

 


 

  • 質問24 他校や企業が視察される際、どのような点に注目されているのでしょうか?その際の反響なども知りたいです。

 

久米氏:他校や企業が当校を視察する際には、実践的な授業事例、教職員研修プログラム、が高く評価されています。実際、視察後には「実際の授業風景や生徒の反応が非常に参考になった」イベントの際に「1・2学年全員が生成AIを活用している姿はすごい」といった具体的なフィードバックが寄せられ、外部からの評価されています。

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