実際の授業や校務で生成AIを活用するときに抑えておきたいポイントは?
第153回オンラインシンポレポート・前半

活動報告|レポート

2024.5.10 Fri
実際の授業や校務で生成AIを活用するときに抑えておきたいポイントは?<br>第153回オンラインシンポレポート・前半

概要

超教育協会は2024年329日、滋賀県立高校教諭の南部 久貴氏を招いて、「学校現場における生成AIの可能性-授業や校務で効果的に活用するアイディア」と題したオンラインシンポジウムを開催した。

 

シンポジウムの前半では、南部氏が校務や授業における生成AIの活用法や、生成AIを学校現場で使う際のポイントについて講演。後半では超教育協会理事長の石戸 奈々子をファシリテーターに、視聴者からの質問を織り交ぜながら質疑応答が実施された。その前半の模様を紹介する。

 

>> 後半のレポートはこちら

 

「学校現場における生成AIの可能性-授業や校務で効果的に活用するアイディア」

日時:2024年329(金) 12時~1255

講演:南部 久貴氏
滋賀県立高校教諭

■ファシリテーター:石戸 奈々子
超教育協会理事長

 

南部氏は、約30分の講演において、学校現場における生成AIの活用法について話した。主な講演内容は以下のとおり。

学校現場における生成AIの可能性を授業と校務の視点で考えてみます。私は現在、滋賀県の公立高校で英語科の教員として勤務し、生成AIをほぼ毎日、校務と授業の両方で活用しています。2023年12月には、「ChatGPT×教師の仕事」という書籍を出版し、教育現場で生成AIを使うときのアイディアとプロンプトを紹介しています。

 

ChatGPTは何かしらメッセージを送信すると、かなり精度の高い文章を返してくれます。プロンプトの工夫次第でさまざまな用途にChatGPTを活用できます。教育現場においても同様です。そこで、生成AIの活用について、「教師の仕事」、「生徒の学び」、そして「生成AIを使うときのポイント」の3つの視点で説明します。

 

▲ スライド1・今日の講演の3つのポイント

「教師の仕事」において生成AIをどう活用しているのか

「教師の仕事」で生成AIを活用するという視点では、まず、思考の整理に活用できます。「思考の壁打ち」です。自分が考えたアイディアを投げて、それに対して批判的な意見をもらったり、あるいは似たアイディアを出してもらったり、原因を分析してもらったり、自分が書き出したものを整理してもらったりと思考を整理する時にChatGPTを活用できます。

 

具体的には、授業の計画を一緒に考えてもらうこともできます。ChatGPTに計画を全て立ててもらう「丸投げ」もできますが、丸投げして出てきた授業計画はそのままでは使えないことがあります。ChatGPTを補助的に活用することで、かなり役に立ちます。他にもテストの問題作成にもChatGPTを活用できます。

 

教師の仕事には授業以外に校務の仕事があります。例えば、行事を計画する際にもChatGPTを活用できます。また、アンケート結果の分析、エクセルの関数を教えてもらう、エクセルのマクロを作成してもらうなど、さまざまな活用が考えられます。

 

私の本でも紹介している教師の仕事で生成AIが活用できる場面、私が考えた生成AIが活用できる場面を一覧で紹介したいと思います。

 

▲ スライド2・校務で
生成AIが活用できるケース

 

ChatGPTを「結局、何に使っているのか」という視点では、英語科の教員ということもあり、問題作成で最もよく利用しています。授業中に使用するワークシートを作成するときには、教材の本文を入力するだけでQ&A作成してくれます。また、プロンプトを事前に書いておいて、教材の文章を入力すると生徒が取り組む課題を出してくれます。

 

問題作成以外には、エクセルのマクロを書いてもらうのに活用しています。例えば、時間割の作成では、ABの時間割があって、Aの時間割からデータを抽出してBの時間割に並び替えて転記をする際、エクセルの関数だけではうまくいかないという時に、手順をしっかりと書き起こしたうえで「これを全てマクロで書いてください」と指示すればChatGPTがマクロを書いてくれます。これで、人の手で転記していた作業を全て自動化することができます。このように、教材作成やマクロの作成で、よく使っています。

 

基本的にパソコン上でできることであれば、ChatGPTは何でも助けてくれます。ただし、もちろん限界もあり、複雑なことはまだまだ難しいという印象を持っています。例えば学習指導案の作成ですと、さまざまな教材、生徒の様子、評価のための参考資料などを参照しないといけません。こういったことはまだまだChatGPTだけでは難しいと感じています。

 

実際に私が使っている方法を紹介します。学校現場ではさまざまな新しい取り組みが実施されます。例えば、総合的な探究の時間の重要性が増してきて、さまざまな成果報告会などが新しい取り組みとして実施されています。こうした新しい取り組みの実施では前年度の資料がないので、何から始めたら良いのかに悩みます。原案を考えるだけでもかなり時間がかかってしまいます。そういった時にChatGPTを使っています。何か新しい仕事を始める時にぜひ皆さんにお勧めしたいのが、ChatGPTに叩き台を作らせて、そこから私たち人間が案を練っていくという使い方です。

 

▲ スライド3・新しい仕事を始める時に
AIに叩き台を作ってもらう

 

実際に探究の時間の成果発表会の実施要項を作成した事例を紹介します。実施要項に、どのような内容を掲載したら良いのかを考え、日時や場所、実施の流れなどを考えていましたが、それを文章化して実施要項の形まで持っていくにはかなり時間がかかります。そこで、実施の条件などをプロンプトにまとめて、実施要項の作成を指示しました。

 

▲ スライド4・探究発表会の
実施要項を作成した時のプロンプト

 

このような成果発表会にしたいというアイディア自体はあったので、箇条書きで制約なども含めて書き出しました。例えば会場は12教室を使用する、44班が発表できるようにする、時間を80とするなど、思いついたことをひたすら羅列していきました。そうすることで、完成度の高い実施要項の「たたき台」を作成できました。

 

▲ スライド5・探究発表会の
実施要項をAIに作らせた結果

 

日時、場所、発表方法、スケジュール、注意事項とポイントは太字で見やすくなっていて、このままワードに貼り付けて資料として提出しても、そのまま承認されそうな実施要項です。ただし、細かく見ていくと、例えば9時から915分までは1年生の班1が発表し、915分から930分は2年生の班1が発表するとなっていて間がありません。生徒の入れ替え、パワーポイントの差し替えや調整などの作業時間が考慮されていないのです。

 

そういった細かい修正点を後から教員たちで話し合って修正していくだけで、かなり仕事の時間は早くなるように感じています。以前はぎりぎりまでたたき台の作成に時間を取られてしまい、教員たちと「もっとこうしたら良いのではないか」と話し合う時間を持つことができませんでした。ChatGPTなどの生成AIを使うことによって、たたき台を他の教員と共有して相談することに、より多くの時間を割けるようになるのではないかと感じています。格段に仕事の速さや質が向上すると感じています。

英作文を生成AIが添削することで教師の負担を軽減

生徒の学びでの活用について紹介します。紹介するのは、生成AIを使って英作文をブラッシュアップするという使い方です。私は冬にこのような実践を行いました。

 

▲ スライド6・英語の授業における
生成AIの活用

 

まず、生徒は自分の力で英作文を書いてみます。そのあと、生成AIを使って添削をする。さらに添削結果について辞書や文法書を使いながら確認、修正をして英作文をブラッシュアップさせる、このような取り組みを行いました。この取り組みのポイントは、生成AIを使うことによって、50分の授業内でこれが全てできてしまうということで、これが生成AIの凄さだなと私は感じています。

 

これまでも、英作文の指導をしてきましたが、どうしても教師の負担になるのが英作文の添削です。生成AIを活用していないときは、学年で100人以上の英作文を教師が添削するには1週間ぐらいかかっていました。1週間後の授業で生徒に返却をしても、生徒は「そういえば、こんなのを書いたなあ」と見返すので、質問もなく非常にテンポの悪い授業でした。

 

生成AIを使うことによって、書いたらその場ですぐ添削をして、それに対して質問もできます。どうしてここはこう直されたのですか、この単語の使い方をもっと教えてください、もっと例文を提示してくださいといった追加の質問までできてしまうので、個別最適な学びが生成AIのおかげで実現できると感じています。

 

このような取り組みを10ほど実施してきました。授業内で教師がその場ですぐにChatGPTを活用して出力された内容を確認することもできます。授業内でChatGPTを活用するのもひとつの方法ですが、生徒が取り組む課題となるように英作文を書いてそれを添削してもらい、自分で修正をしてさらに良くしたものを書いてくるという宿題を、冬休みの期間に生徒に出しました。そのプロンプトを紹介します。

 

▲ スライド7・英作文の課題で
実際に使用したプロンプト

 

さまざまな英作文の添削のプロンプトはネット上にありますが、そういったものを参考にしながら自分の生徒に合わせて調整をしてプロンプトを書きました。このプロンプトは一番下に生徒の英作文を入れるスペースを入れていますが、このプロンプトをTeamsで生徒に共有をして、最後のインプットのところに自分の英作文を書いて提出するだけで添削結果が得られるように工夫をしています。実際にこの一連の授業を受けた生徒の反応ですが、「すぐに添削結果が返ってくるので復習がしやすい」、「例文をたくさん出してくれるのが良かった」、「わからないところを追加で質問できるのが良い」などの反応がありました。

 

もう少し具体的な感想としては、「I thinkを毎回、I believeに直されるので、意識してさまざまなパターンを使うことにした」などの声もありました。これまでは、英作文を頻繁に実施するのは教師の負担が大きく難しかったですが、この形であればかなり負担は軽減されていますので、頻繁に添削を行うことができました。その結果、毎回、直されるからちょっと自分でも意識するようになったという声が上がったのだと感じています。これまでとは次元が変わった印象を受けています。英作文の指導は生成AIの登場で大きく変わってきたと感じています。

学校現場で生成AIを使う際の3つのポイント

最後に生成AIを学校現場で使っていく時のポイントについて私自身の考えをお話しします。現在、私自身が生成AIを活用して活用方法も発信していますが、実際、教育現場ではまだまだ活用されていないというのが印象です。まだ使ったことがないという先生方がほとんどですし、始め方が分からないという先生方もかなり多いです。ただ、これからの時代に生成AIの存在は無視できないのではないかと感じています。

 

そこで、まずは教師が使ってみることが大切だと感じています。では実際に教師が使っていく時にどうすれば良いか。まず、生成AIというとChatGPTのイメージがだいぶ強いです。ただし、「生成AI=ChatGPT」であるという時代ではないと感じています。学校現場で教員が使う、しかも無料版を使うとなった時には、他の選択肢もあると感じています。私は現在、学校現場で使うのであればMicrosoftCopilot最も良いのではないかと感じています。

 

▲ スライド8・学校現場に
ふさわしいとされるCopilot

 

理由として、一番大きなところはログインしなくても使えるというところです。学校現場で使用する際に、教師の使用でも生徒の使用でもアカウントを作成するところに大きなハードルがあると感じています。生徒のアカウントを作る時には、かなり大きなハードルがありますが、ログインしなくてもアカウントを作成しなくてもお試しで使えるというところが始めやすい生成AIだと思います。また無料版でGPT4を使えて、これはかなり性能の高い生成AIですので、Copilotが一番学校には向いていると感じています。生成AIの比較表も作成しています。

 

▲ スライド9・生成AIの比較表

 

補足:2024年4月にChatGPTもアカウント不要で利用できるようになりました

 

GoogleGeminiは性能についてはGPT3.5よりも高くてGPT4よりは劣るのではないかとされています。このあたりは無料版で使えるものとしてはかなり性能は高いのではないかと感じています。また学校によってMicrosoft系のアカウントを使っている学校やGoogle系のアカウントを使っている学校があるので、それぞれの環境に応じてCopilotもしくはGeminiあたりがお勧めできると思います。

 

2めのポイントとしては、繰り返しの作業を生成AIで自動化すると、教員の業務負荷がかなり軽減されます。私はプロンプトを書くということは、「人間が手作業で行ってきた作業をAIが再現できる形にする」ことだと考えています。これまでパソコン上で行ってきたもしくは行っている複雑な面倒くさい作業がたくさんあると思います。そういったものを一度、手順をしっかりと書いてプロンプトの形にしておくと、毎回行うその作業の時間を大幅に短縮することができます。

 

▲ スライド10・頭の片隅で常に
「生成AIを活用できないか」と
考えておくことも大切

 

私は常に頭の片隅に「これChatGPTでできないかな」、「これChatGPTで楽にならないかな」という視点を持ちながら校務に取り組んでいます。繰り返し作業が見つかったらChatGPTを使うチャンスだと思いますので、そういったところから生成AIを使っていけば良いのではないかと思っています。

 

最後に、生徒が生成AIを使う時についてはかなり入念な準備が必要だと思います。文部科学省のガイドラインを読むことがもちろん大事ですが、チェックリストを示します。

 

▲ スライド11・文部科学省の
ガイドラインに掲載されている
チェックリスト

 

チェックリストの中には、利用規約を遵守しているか、メリットデメリットを把握した上で情報の真偽を確かめるような使い方ができているか、教育活動の目的を達成する上で効果的か否かを考えなさい、などが書かれています。生徒が使う際には、ガイドラインをしっかり見て使用していくことが大切だと考えています。実際に私が学校で使用する際にも、このガイドラインを全職員に共有して、生徒の保護者に対しても保護者宛ての文書を配布して、保護者の同意を得た上で生成AIを使用しています。このように、学校現場で使う場合には入念な準備が必要だと思います。

 

最後に少しまとめをしたいと思います。

 

▲ スライド12・現状の
ChatGPTに対して思うこと

 

ChatGPTは本当に優秀な相棒です。豊富な知識を持っていて、365日休みなく働いてくれます。また、必要に応じて生徒に使わせることによって、教員の代わり、教員の分身として働いてもくれます。

 

ただし、現時点では人間のアイディアの方がまだまだ面白いのではないかと感じています。また、ChatGPT「現場を知らない」と感じます。私たちが生活する世界であったり、私たちが仕事をする学校現場には、データ化できない情報もかなり多くあります。なので、生成AIが完璧に私たちの実生活や私たちが仕事をしている学校現場に即して提案をすることには限界があると感じています。そのため、ChatGPTで全て置き換えていくのではなく、人手不足の解消や人間がよりよい案を出す能力をサポートするツールとして生成AIを活用していくべきだと私は考えています。

 

>> 後半へ続く

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