学校に行かない・行けない子に多様な学びの選択肢を提供
第152回オンラインシンポレポート・前半

活動報告|レポート

2024.4.26 Fri
学校に行かない・行けない子に多様な学びの選択肢を提供<br>第152回オンラインシンポレポート・前半

概要

超教育協会は2024313日、NTTスマートコネクト株式会社 メディアビジネス部の笹原 貴彦氏を招いて「教育特化型メタバース『3D教育メタバース』~21世紀を生き抜くための教育の多様性をめざして」と題したオンラインシンポジウムを開催した。

 

シンポジウムの前半では笹原氏が、NTTグループが運営するメタバースサービス「DOOR」と「3D教育メタバース」について解説。後半では、超教育協会理事長の石戸 奈々子をファシリテーターに、視聴者からの質問を織り交ぜながら質疑応答が実施された。その前半の模様を紹介する。

 

>> 後半のレポートはこちら

 

「教育特化型メタバース「3D教育メタバース」~21世紀を生き抜くための教育の多様性をめざして」

■日時:2024年3月13日(水)12時~12時55分

■講演:笹原 貴彦氏
NTTスマートコネクト株式会社 メディアビジネス部

■ファシリテーター:石戸 奈々子
超教育協会理事長

 

笹原氏は約30分の講演において、NTTグループが提供するメタバースサービス「DOOR」と教育に特化した「3D教育メタバース」について、サービス概要や機能、教育での活用シーンなどを紹介した。

【笹原氏】

NTT西日本グループのNTTスマートコネクトでは、教育特化型メタバース3D教育メタバースをリリースしました。教育にメタバースを活用する取り組みを進めています。2020年にNTTグループでDOORというメタバースを始め、2023年にはNTTスマートコネクトのサービスとして教育に特化した「3D教育メタバース」をリリースしました。DOORは、さまざまな用途に活用できる仮想空間プラットフォームサービスです。その中で教育へメタバース活用のニーズが見つかり、「3D教育メタバース」をローンチしたという経緯です。

 

DOORは、NTTグループの株式会社NTTコノキューが提供するサービスで、238月時点での累計アクセス数は940万超、累計ユーザー数は250万超、サービスの中でユーザーが作った空間(ルーム)は18万超というメタバースプラットフォームです。

 

▲ スライド1・DOORは
2020年から公開されている
NTTによる仮想空間プラットフォーム

 

汎用的に使えるメタバースの活用シーンとしては、企業がイベントで使う、小売業がバーチャルショップを運営、またトークセッション等の有料イベントを開催する、自治体が観光スポットを仮想空間の中に再現して、観光促進や地域活性化に使う、といった例もあります。教育機関がバーチャルキャンパスを作り、学校行事等に使う例も多くあります。

 

▲ スライド2・各種イベント、
バーチャルショップや学校などの
シーンで利用されている

 

教育分野でのDOORとメタバースの活用シーンについては、大きく3つにわけることができます。

 

1つめがオープンキャンパスなどのイベントでの利用。卒業式や文化祭をメタバースで行う取り組みもありました。2つめは授業の新形態。コロナ禍にオンライン授業が普及したこともあり、メタバースの授業の実証実験やってみたいとご利用いただくケースがあります。それから、不登校対策の実証実験がありました。

 

▲ スライド3・DOORの
教育の活用を考えると、

イベントでの利用、授業、不登校対策の
3つが考えられる

 

しかし、DOORは汎用型のプラットフォームであることで、教育分野にはマッチしない点があるという声をいただきました。理由は2つあり、ひとつはIDとパスワードを取得せずに仮想空間にアクセスできることです。手軽に使えるメリットの一方で、個人管理ができないことが教育とマッチしないことになります。
もう一つは、ログで個人識別ができないことです。総アクセス数、総PV数は出るのですが、例えばAさんがいつ入ったか、いつ出ていったか、何をやっていたかが、ログとして残らないのです。

コミュニケーション機能を工夫しセキュリティも強化した「3D教育メタバース」

 それらの課題を踏まえて開発した3D教育メタバースのサービス概要をご紹介します。特徴は大きく3つあります。1つめはあらかじめ教育に特化した空間をデザインしていることです。ルームタイプは4つで、いわゆるホームルームをする教室、一学年ぐらいの大人数が収容できる集会所、それから進路指導などに利用できる面談室、そして少人数のグループで使えるアクティブラーニングルームをご用意しています。

 

2つめはコミュニケーション機能への工夫です。発話内容は、マンガのような吹き出しが出て、自分のアバターが話しているかのように字幕として表示されます。音声で聞き取れない場合は文字を見て認識できることが特長です。日本語のほか、英語と中国語への翻訳にも対応しており、国際交流に利用いただいているケースも実際にあります。

 

一般的にメタバース空間では、アバター間の距離に連動して聞こえる声の大小が変わる機能がデフォルトで実装されています。しかしこの機能は、遠くにいる先生の声が生徒に届かない問題が発生します。このため、「プレゼンターモード」も作りました。授業で先生が話すとき、誰かが発表したりプレゼンテーションしたりするときにONにすると、アバター間の距離関係なく全員に声が届くようになります。

 

3つめの特長はセキュリティです。開発にあたり、教育機関の皆様ご協力いただきサービス仕様を決めていきましたが、教育現場に新たなツールを導入したいという思いがある一方で、何かトラブルが発生するリスクは避けたいという、セキュリティ面を気にする声を非常に多くいただきました。このため、ログを非常に細かく取れるようにしています。そして、先生または管理者が招待をした時だけ入室ができる仕組みにしました。

 

一般的なメタバースは36524時間空間にアクセスができることが基本ですが、例えば深夜に生徒だけで集まってしまうことや、先生の目が行き届かないことによるトラブルの発生リスクを考えて、このサービスでは、ZoomTeamsのように、招待状をもとにアクセスするようにしています。

 

▲ スライド4・教室のような空間、
授業を想定した音声の機能、
さまざまなセキュリティ機能を搭載

 

サービスの活用場面としては、サンプルとして5つ考えています。1つめは探求学習やアクティブラーニングへの活用です。2つめが発表会や全校集会といったイベントの開催。保護者の方も入るイベントにも使っていただけるのではないか思います。3つめとして学校同士や、学校と地域の交流。4つめは学校説明会、オープンキャンパス。5つめとして、不登校の児童生徒の支援にもお使いいただけると考えています。

 

▲ スライド5・「3D教育メタバース」は
さまざまな場面で活用できると考えられる

NGワードフィルタリング機能や表情と感情の連動など細部にまで配慮して学校空間を再現

おもな機能について動画をお見せしながら説明します。こちらは教室です。最大50名まで入室可能な空間です。

 

▲ スライド6・
(動画中のスクリーンショット)

教室の様子

 

声が均一に届くプレゼンターモードです。先生にはデフォルトでこの機能が実装されており、プレゼンター権限を付与したい生徒には「発言許可」の設定をすると、全員に声が届くようになります。

 

▲ スライド7・
(動画中のスクリーンショット)

全員に声が届くプレゼンターモード

 

面談室には最大5人入れます。先生との進路指導や少人数でのグループワークをイメージしてデザインしています。ソファ席やカフェ席もあります。

 

NGワードフィルタリング機能は、事前に管理者がNGワードを登録することができ、チャット中などに生徒が登録されているNGワードをタイピングすると、発言の吹き出しに★マークが出て、そのワードは表示されないという機能です。不登校支援への活用など、精神的にナイーブな生徒が使うことも想定した機能です。

 

▲ スライド8・
(動画中のスクリーンショット)
面談室の様子と
NGワードフィルタリング機能

 

感情表現機能は、発言内容をアバターの表情と連動させる機能です。発言内容を分析し、嬉しそうなことを発言したらアバターが笑う、悲しいことを発言するとアバターが悲しい表情をするという機能です。無機質なコミュニケーションにならない工夫です。

 

▲ スライド9・
(動画中のスクリーンショット)

発言内容に合わせて
アバターの表情が変わる機能

 

集会所は120人が入れる空間です。一学年、全員に一度に対応するイメージをしています。

 

▲ スライド10・
(動画中のスクリーンショット)

集会所は120人同時に入れる空間

 

アクティブラーニングルームは手前にオープンスペースがあり、奥に個室が配置されています。オープンスペースで先生がアクティブラーニングのイントロダクションをして、その後グループワークを個室で行い、その結果をまたオープンスペースに持ち寄って各グループが発表し合うイメージでデザインしました。

 

▲ スライド11・
(動画中のスクリーンショット)

アクティブラーニングルーム個室

 

オープンスペース側と個室のブースは、議論が白熱しても他へ声が漏れないように工夫しています。チャットボード機能も分けており、それぞれの空間で話したことは各ブースのチャット履歴だけに残ります。チャットも声も混線しない形のデザインです。

 

▲ スライド12・
(動画中のスクリーンショット)

アクティブラーニングルームの
オープンスペース

 

会議予約機能で授業の予約を行います。会議名の欄には例えば数学Aなど授業の名称を入れて、どの空間を使うのか、どのグループに招待を送るか選択します。例えば数学を受ける生徒を1つのグループとして登録し、そのメンバーに招待を送るといったことができます。あとは開催日時を入れてOKを押すという簡単な操作で生徒に招待を発行できます。招待された生徒側では、トップ画面に招待された授業のアイコンが表示されます。指定の日時になってそのアイコンをクリックすると、入室できます。

不登校の児童・生徒などでも「安心して」使えるようにセキュリティ機能を重視

また、任意の場所に監視カメラが置ける機能もあります。監視カメラを設置した位置からの画角の静止画のスクリーンショットを、1分間に1020回撮ることができます。つなげるとパラパラ漫画のような動画になります。その空間でどのアバターがどんな行動を撮っていたかの行動ログ、それと発言ログはテキスト形式で出力ができます。この2つのログをしっかり残すことで、何か問題が起こったときの原因究明ができます。また、監視していることを周知することで、問題行動を抑制する効果も期待できます。

 

▲ スライド13・
(動画中のスクリーンショット)

監視カメラを設置する機能もある

 

アバターの種類はリクエストも多くいただいており、増やす予定もありますが、現在、生徒のアバターは男女6種類、12種類あります。ユーザーが各自で顔をカスタマイズできる機能も実装していく予定です。アバターが空間の中でできることは、移動、起立/着席、それにジャンプや挙手などのアクションです。

 

会議機能では、各空間のホワイトボードへの書き込みや資料の投影ができます。管理者がパソコンやスマホのインカメラの映像を表示させることもできます。先生が最初の自己紹介の時に顔を出すときなどにこの機能を使っていただいています。

 

他にはファイル共有、動画の再生、チャットもできます。発話した内容は文字起こしされて翻訳ができます。ログの閲覧もできます。

 

導入方法は非常にシンプルです。各種デバイスにアプリをインストールして、利用前に我々に利用者の名簿などをいただけると、全員分のIDとパスワードを発行します。メールアドレスは、中学生や小学生は持たないケースが多いため、ID取得に不要としています。

 

発行されたIDでログインして、授業の予約をすれば、授業を開始できます。なおこの間に我々の方から操作レクチャーと、授業の運用支援も行っています。

 

▲ スライド14・サービスは、
アプリをインストールし、
ID/パスワードが発行されたら
利用開始できる

 

対応デバイスは、GIGAスクール構想で配布されているChromeBookと、iPadです。iOSAndroidのスマホ、タブレットのOSにも対応していますし、Windows PCにも対応しています。MacBookは未対応です。

 

▲ スライド15・「3D教育メタバース」
サービスの対応デバイスと
推奨スペックの紹介

不登校児童支援センターや国際交流、学会などで活用 「授業を一緒に開発」してくれるパートナーを

利用実績をご紹介します。不登校対策で活用いただいているケースが、さいたま市ともうひとつ、2つの自治体様であり、不登校児童の支援センターのプラットフォームとして利用いただいています。これまではZoomのようなWeb会議ツールで不登校の生徒を集めて授業していたそうなのですが、先生が一方的に話して生徒は画面を見るだけの授業で、コミュニケーションが取れないことを課題として認識され、双方向でやり取りできるこのツールを採用していただきました。

 

2つめのケースは、国際交流授業です。ある自治体様では、アメリカ籍と日本国籍の子供の合同授業をしようとすると言語の壁があるということで、冒頭ご紹介した翻訳機能を導入して国際交流の授業を行っています。

 

3つめのケースは、大学に導入いただいていて、学会のイベントのための利用です。

 

▲ スライド16・現在までのところ、
このサービスは自治体と大学を
中心に利用されている

 

最後にサービス開発への思いをお話したいと思います。教育は、現地対面に勝るものはないと思いますが、現地になかなか行けない生徒も多く、リモートでもよい場面もあるのではないかと思い、このツールを開発いたしました。いきなり全校の授業に導入することは難しいと思いますが、まずはアクティブラーニングやSTEAM教育、不登校支援などで、リモートでもアバターでもOKという導入できるところからご利用いただければと思います。オンラインの良さとリモートツール活用の良さを認識いただき、教育現場へ普及させていければと思っています。

 

現在我々は、このようなサービスを通じて空間を提供している立場ですが、本サービスと一緒に授業も提供してくれないかと非常に多くリクエストいただきます。私たちのような通信会社としては授業の提供は難しいところで、パートナー企業とも対応方法を模索しています。視聴されている中でご対応いただける方、またこのサービスの導入を検討される皆様も、遠慮なくご連絡いただければと思います。

 

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>> 後半へ続く

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