日本の教育を根底から変える「IT高専」とは
第119回オンラインシンポ・後半

活動報告|レポート

2023.5.12 Fri
日本の教育を根底から変える「IT高専」とは</br>第119回オンラインシンポ・後半

概要

超教育協会は2023322日、一般社団法人シンギュラリティ・ソサエティ代表理事の中島 聡氏を招いて、「IT学園都市構想」と題したオンラインシンポジウムを開催した。

 

シンポジウムの前半では、中島氏が、日本の教育を根本から変えて産業のDX推進を促し、少子高齢化や地方活性化対策にもつながる「IT学園都市構想」に関する講演を行い、後半では、超教育協会理事長の石戸 奈々子をファシリテーターに質疑応答を実施した。その後半の模様を紹介する。

 

>> 前半のレポートはこちら

>> シンポジウム動画も公開中!Youtube動画

 

「IT学園都市構想」

■日時:2023322日(水)12時~1255

■講演:中島 聡氏
一般社団法人シンギュラリティ・ソサエティ 代表理事

■ファシリテーター:石戸 奈々子
超教育協会理事長

 

▲ 写真・ファシリテーターを務めた
超教育協会理事長の石戸 奈々子

 

シンポジウムの後半では、超教育協会理事長の石戸 奈々子をファシリテーターに、参加者を交えての質疑応答が実施された。

チャットGPTなどAIの教育での活用とリテラシーについて視聴者の関心が集まる

 石戸:「『Windows95を作った男』とも言われる天才エンジニアの呼び声も高い中島さんのお言葉だけにとても重いものを感じました。さて、チャットGPTや画像生成AIを一般の人に普及する状況となり、そのインパクトはとても大きいと思います。中島さんの組織名にもある『シンギュラリティ(技術的特異点:AIが人間の能力を超える時期)』がいよいよ来るのかという議論も出てきていますが、AIの発展はどこまで行くのか、世界はこれからどう変わっていくのか、シンギュラリティをどう捉えているのかについてお聞かせください」

 

中島氏:「ここ10年ほど、AIの進化のスピードが急加速していますので、10年先、20年先を読むのがすごく難しい状況になっています。ただ、現時点で言えるのは、既にAIが人間から職を奪う時代が到来しているということです。映画『ターミネーター』のようにAIが人間を排除する未来を心配する必要はありませんが、今のチャットGPTからもはっきりわかるのは『AIを使いこなせる人の生産性が 一気に上がった』ことです。

 

1年前と比べて10倍くらいに上がっていますので、AIを使いこなせる1人が10人分の仕事をして9人が職を失う可能性があります。もちろん規制があるので直ちに解雇とはならないでしょうが、近い将来、大量解雇のようなことが起こるのは避けがたい話で、それによって色々社会に問題も起こるでしょう。それをオブラートで包み隠して、『いや、AIができても新しいビジネス、新しい職も生まれるから大丈夫』といった綺麗事を言っている時代ではもうありません。本当に、10年も経たないうちに実質的には人類の10%が働いていればそれで世の中が回る時代になってしまうと考えています」

 

石戸:「教育に関する質問がきています。まず、『IT高専という考えは、理数系の得意な子どもをよりエリートに育てるという視点ではよく理解でるが、誰もが理数系が得意なわけではない。全ての子どもたちへの教育という視点ではこれから何が必要と考えられるか。また、教育現場がどういう力を育むように教育を変えていくべきか』という質問が複数寄せられています。いかがでしょうか」

 

中島氏:「例えばチャットGPTは、必ずしも理数系が得意な人だけが使えるツールではなく、メディアに経済記事を書いている人がチャットGPTを使ってより効率的で深い記事を書ける時代が到来しています。取っ付きにくいかもしれませんが、『自分は文系だから』とAIに背を向けるのではなく、文系でもAIを使いこなして生産性を上げることができる、と言う認識を持つべきです。全ての児童・生徒に授業でプログラミングを教えることは、平等に機会を与えてプログラム好きの児童・生徒を増やすという意味では意義がありますが、全ての日本人がプログラムを書けるようになる必要はないし、実際無理でしょう。ただ、AIを使いこなすことに関しては全ての人に平等の機会が与えられて勉強すべきです。

 

AIの勉強は、プログラミングの勉強とは違う次元のものです。この講演を聞いている先生や保護者の方も是非、チャットGPTを試してください。特に文系の方ほど試していただき、チャットGPTが良い文章を書いたり、簡単な文章を丁寧にしたりすることにどれほど役立つかを理解した上で、児童・生徒たちもこれを使いこなせなければいけないということを認識してください。宿題などもチャットGPTを禁止せず、使いこなしたレポートを書かせるべきです。その昔、計算問題を解くのに電卓を使ってはいけない時代がありましたが、今では当たり前のように計算に電卓やコンピューターを使います。同じように文章を書くときにチャットGPTを使うのが当たり前になれば、英文を書くのにスペルミスや文法ミスがないかどうか気を使うことなく、内容の吟味に注力することができます。理系・文系を問わず、学ぶべきところはいっぱいあります」

 

石戸:「次の質問は、『なぜ米国は、GAFAMのような巨大企業を生み出す人材を輩出し続けることができるのか、講演に出てきたIT高専のようなものが既にあるからなのか、その教育の仕組みについて知りたい』というものです。いかがでしょうか」

 

中島氏:「米国にもSATという共通テストがあり、そこでは良い成績を取る競争が行われていますが、日本の大学入学共通テストのように難しいものではありません。大学が学生を採るとき、SATはある程度以上の点が取れていれば十分で、むしろ見ているのは、スポーツ選手として国内大会に出たとか、ボランティアでこういう活動をしたとか、スマートフォン用のアプリを作って百万人がダウンロードをしたとか、数学オリンピックで優勝したなど、そういったユニークなプラスアルファの部分です。

 

保護者も大学がそこを見ていることを知っているので、自分の子どもにそういうチャンスを与えようとしますが、プラスアルファは良い所を伸ばさなければ生まれてきません。保護者や先生は、子どもが得意なもの、夢中になれるものを見つけることに務め、それを見つけられたら徹底的に伸ばすことに協力します。一方で日本は、例えば東大受験でスポーツを重視するという話は聞いたことがありません。純粋に点数だけで評価するので結果的に試験問題はどんどん難しくなり、児童・生徒たちはそれに特化した勉強をするしかない状況に追い込まれてんでしまっています。これも、日本の中学・高校の勉強がおかしくなった理由の一つです」

 

石戸:1つ前の回答で、チャットGPTを学校の先生にも積極的に使ってほしい、宿題でも禁止せずに使うべき、と言われましたが、教育現場におけるチャットGPTの扱いについては世界中で議論になっています。例えばシンガポールでは、政府がチャットGPTを積極的に活用する方針のようですが、米国の教育現場におけるチャットGPTをはじめとするAIの取り扱い実態はどのような状況ですか」

 

中島氏:「まだ登場したばかりで大々的に広まってはいませんが、比較的オープンマインドな先生たちの間では、『これは否定あるいは禁止しても仕方ない。むしろ思いっきり使わせた上で、プラスアルファの勉強をしてもらおう』という考え方に切り替わりつつある感じです。もちろん、すべての教育者に広がるにはまだ時間がかかりますが、私はそれも時間の問題だと考えています」

 

石戸:「私も利用促進派ですが、これまでもICTを使いこなすリテラシーが、使い方の面でも倫理的な面でも求められてきました。AIにも新しいリテラシーが必要だと考えますが、今後、子どもも含めてAIを使いこなしていくときに留意すべきこと、育まれるべきリテラシーとして考えられることがありましたら、教えていただけますか」

 

中島氏:「子どもたちは伸び伸びとやってもらえばよいと思います。ただ、AIについては、チャットGPTなど個々のソフトウェアの問題と捉えるべきではありません。例えば、フェイク映像が簡単に作れるようになっていきますから、政治家や芸能人が発言している動画も本物ではない可能性に注意する必要があります。今後は子どもたち自身がそういうフェイク映像を作ることも可能になっていくでしょう。そのときに、そういうツールの使用禁止を子どもに強制してもうまくいきません。むしろ、モラルとしていけないことをきちんと教えて、そういうことを自らの意思で行わない子どもになってもらうことが大切です」

 

石戸:「今後、IT高専のようなプランを実現していくにあたり、参考になると考えておられる国内外の事例がありましたら、教えていただけますか」

 

中島氏:「日本ではN高等学校と神山まるごと高専に注目しています。後者はまだ始まったばかりですがコンセプトが素晴らしいと思います。児童・生徒たちの人生から受験を排除するためには、日本の大学を直していくのではなく、高専の手法でゼロから作り直すのが最も手っ取り早いと考えます」

 

最後は石戸の「既存のものをアップデートするより新たに作ってしまった方が迅速かつ破壊的なイノベーションが起こせる可能性も高いかもしれないですね」という言葉でシンポジウムは幕を閉じた。

おすすめ記事

他カテゴリーを見る