概要
GIGA端末更新を迎えるにあたりコストをどう手当するかが最大の課題でしたが、補正予算で基金創設が決定しました。
超教育協会は、GIGAスクールワーキンググループの取り組みとして、超党派教育ICT議員連盟と連携し、全国の首長や教育長の声を届けるなど協力してきました。
この度、盛山正仁文部科学大臣に基金に関するインタビューを実施しましたので、ご紹介いたします。
「盛山文部科学大臣インタビュー
~GIGAスクール構想から端末更新基金設立について~」
■2023年11月17日(金)
・盛山 正仁氏 文部科学大臣
・鈴木 寛氏 東京大学公共政策大学院 教授
(超教育協会GIGAスクールワーキンググループ座長)
・石戸 奈々子 超教育協会理事長
>> インタビュー動画も公開中!(Youtube動画へリンク)
石戸:「今日はすずかん先生とともに盛山大臣を訪問しています。GIGAスクール構想が始まり、今ちょうど端末の更新を迎えるにあたり、コストをどうするのかが一番の課題でした。とても画期的な政策が打ち出されました。
盛山先生は超党派の教育ICT議連で長くこの問題に関わってこられました、幹事長でいらっしゃいます。超党派の教育ICT議連の歴史を見ていたら、初めての会合は2013年の11月でした。10年、感慨深いなと思いますが、強い想いを持たれてこの分野に取り組まれてきたと思いますが、今回の政策の概要について教えてください」
盛山氏:「8月末に議連を開いて、私も出席しましたが、鈴木先生のご手配で、200超えましたよね?首長さんや教育委員会の教育長さん、オンラインの人も含めてですが、私たち自身も折角「GIGAスクール」ということで、令和元年6月に学校教育情報化法を議員立法を成立させて、令和元年の補正予算、令和2年度の当初予算、1次補正、2次補正、4つの予算で5,300億の予算を取ったので(※1)、去年の4月から小学校1年生から1人1台タブレット支給にまでこぎつけて(※2)、私、あの時、よくここまでできたなと正直思いました。法律1本作ってこんなにお金が取れるのは、今までなかった。本当にあの時びっくりしたんです。
※1 関係省庁の関連予算も含め、約5,200億円を計上しています。
※2 令和4年度末時点で、全国の小中学校の99.9%で1人1台端末の整備が完了しています。
▲ 文部科学大臣
盛山 正仁氏
コロナで令和2年3月に学校が休校にせざるを得なくなったりですとか、今までなかなか『うん』って言ってくれなかった方々が、オンラインの授業に取り組まれるようになった。そんなこともあり、やってきた訳ですが、今年の8月の議連でも言った通り、ああいった環境だったからうまくできたのであって2回目、同じように簡単にできると思わないでくださいと、私1人があそこで後ろ向きの話をしましたが、あの時点で私が文部科学大臣になるとは夢にも思っていなかった訳でして、私がここへ大臣で入って、ちょうどそのタイミングで、今回の11月20日に国会に提出した補正予算で、今回のタブレット、その他をはじめとする更新を盛り込むことができたのは、私自身、本当に感無量でございます。今回もよくここまでできたなと思います。
令和6年度の当初予算で更新、その他を入れていた訳ですが、それを前倒しをする形で令和5年度の補正予算に盛り込むことができました。1番大きいのは、基本的に今までと同じように、我々と地方公共団体にもご協力をいただく訳ですが、ご家族やお子さん方に負担をさせることなく更新をできるスキームを作ることができたのは、私にとって大変ありがたい。自分でも、よくここまでできたなと思うことです。
もう1つ、2つポイントをあげると、今回、お金が付いているのは3年分(※3)で、基金を設けましょうと。各都道府県に基金を設けて、そこで弾力的にやってもらおうと。ただ、3年分のお金だが、5年間このスキームで行くことは、決まってますから、またお金を追加はしないといけないが、これで5年間、更新ができる制度ができたのは大変、大きいと思います。
※3 令和5年度補正予算では令和7年度までの更新分に必要な経費を計上しています。
もう1つは、前回導入されたタブレット。これも初めてで、色々あったと思いますが、今回、単価をアップすることができましたから、これによって、日進月歩の分野ですからどの程度良くなっていくかであり、数年経ったら、もう陳腐化していくのかもしれません。今度は、単価を上げたことによって今までよりはいい機能が使えるようになったと、そんな風に私は感じています」
石戸:「単価1万円もアップしたのはすごく驚きます。何よりも、基金というのがすごいですよね」
鈴木氏:「画期的ですね ほんとに学校現場は喜んでおりまして、盛山先生が大臣になっていただいたのが、天祐でありまして、5年の基金は、本当に重要で、基金作るのは、ものすごい大変なんです。財務当局が1番嫌なのが、この基金化ですが、大臣のご尽力でやっていただきましたが、毎年、来年どうなるかと心配しなくていい。5年間は腰を据えて、整備ができるのはすごくありがたいですし、それからやはり単価ですね。中学校3年生になると、もっと色々なことやりたいと指摘されていましたが、今回の現場の心配は、ほぼ完璧に払拭されたと思います」
▲ 東京大学公共政策大学院 教授
鈴木 寛氏
石戸:「関係者一同、安堵と感謝の気持ちでいっぱいですが、確認をさせていただきたいのが、心配されているのが、再来年度以降に更新になる市区町村の方々も、色々とこれからどうなるのかなと考えていたり、故障の問題も、色々と指摘されています。その辺りをどのように、解決されるか、解説していただけると嬉しいなと思います」
盛山氏:「5年間この制度をやることは合意できていますから、来年度の更新でなくても、再来年度以降の更新でも、そこはご心配いただくことはないと思います。故障その他については、予備の割合を今度15%見込んで、財政当局とも合意しているので、もっと欲しいという声があるのはわかりますが、とりあえず15%できました。
これまでどうして故障してるのか、トラブルが起こっているのか、そういうことをまず、今調べてる途中でございますから、来年度になりますが、分析ができた暁には、その次のステップとして、来年の夏やその次の予算要求かもしれませんが、またそこで検討していけば良いと思っています」
石戸:「予備の機材として15%は私も素晴らしいことだと思います。よく出る懸念として、ネットワークの整備がありますが、そのあたりの対策についても教えていただければと思います」
盛山氏:「ネットワークも初めてだったから、色々なことがわからなくて、回線の容量やルーターが学校の中に設置され、中でのインターネットの環境だとか、色々ありますので、そういうところをまずは調べてもらう。調べてもらった上で、何ができるのか、そこをどのように支援をしていくかだと思います。それはまたこれから手当てをしていきたいと思います」
石戸:「『GIGAスクール構想』が始まった当初からよく言われている、これからより教育の質を上げていくために、データの活用も大事ではないかと言われていますが、大臣が考えられる教育分野におけるデータ活用についてのご意見も伺えればと思います」
盛山氏:「石戸さんがおっしゃるデータとは、ずれるかもしれませんが、先日、ある学校に行って、小学校5年生の授業を見ましたが、ChatGPTを使っていました。ChatGPTでこう言っているけれど、君たちどう思うかと先生が児童に聞いている。ああいうのを見て、ChatGPTに限らず、インターネットの情報を鵜呑みにしないで、自分の頭で考えることが、 小さいうちから身につくと良いなと思いました。
データの活用では、何のデータをどう使うのかにもよりますが、できるだけ大きなデータということで、できるだけ広く、色々比較もできるし、全体のことが分かる大きなデータ。その処理であり、利用でありに繋げることができれば良いと思います」
石戸:「生成AIの話が出ましたが、お陰様で世界一と言ってもいい環境に日本は踊り出たと思います」
鈴木氏:「一挙にね」
石戸:「後進国と言われていましたが、世界一の環境が整備されるようになりました。ところが、そのタイミングで、世の中は生成AIなど新しい技術が出てきて、またさらに社会が一歩進もうとしている時に、教育の次の未来をどのように描いていらっしゃるか、ご意見を伺えればと思います」
盛山氏:「こうやって石戸先生や鈴木先生と、デジタル化、ICT化を取り組んできましたが、ここで大事なことは、リアルな世界、痛いや熱いを含めて、自分で体験することが1番大事だと思います。それが基本にあった上で、文明の利器をどう使うか、ということだと思います。
先生や私たちはあまり歳が変わらないので、同じ世代で言うと、カラーテレビも当然なかったし、私が生まれてやっと白黒テレビ放送が始まった時代です。エアコンもパソコンも携帯もないし、我々は棒きれと石ころでも工夫して遊んでいた。でも今、何でも揃っているから、何かないとできないお子さんが増えている気がする。
私の子供や孫を見ていても、そういう傾向がありまして、自分の頭で、あるモノの中でどう工夫するか、そういう力を失ってほしくないと思いますし、体験型学習も今色々言われていますが、学校や学校外でお子さんが身につけていただきたい。
それと同時に他国のお子さんなんかと負けないためにも、最新のインターネットを活用して、色々なことを、我々の時代では全く考えられなかった学びができる訳です。あるいは容易になる部分もある訳です。
英語の発音なんかも典型ですよね。私たちの頃は、発音記号を見ていたが、やっぱり耳で聞くと全然違いますから。あるいは画面で動画を見ることで、宇宙の天体の運行や立体の展開図、こういうのは動画で見れば一発でわかります。リアルな部分とICT、最新の技術をうまく組み合わせていくこと、それが大事だと思います」
石戸:「新しい技術を使いこなす力と人間にしかできない力をどう育むか、両輪で進めていく必要があるという話だと理解しました。先生方のご尽力で、みんなが安心して端末を使う環境が整備されましたが、だからこそ、その環境をフルに活用してより豊かな学びの場を作らなくてはいけないと思います。
それに向けて、ぜひ全国の教育委員会の皆さん、学校現場の先生方、保護者の方、子どもたちにメッセージをいただければと思います」
盛山氏:「文部科学省としては、鈴木先生や石戸先生をはじめ、多くの関係者の皆さんと協力しながら、ICTをうまく活用してもらえる環境を整えるのが、私たちの仕事だろうと思っています。
若干繰り返しになりますが、ICTが万能では決してないと思います。今、石戸さんがおっしゃった通りですから、やっぱり大事なことは、自分で体験すること、自分の頭で考えることだと思います。
▲ 文部科学大臣
盛山 正仁氏
ネットで調べたらこうでした、こう書いてるからこうです、だけではダメだと思うので、それを前提にして、自分はどう考える。これこうなってるけど本当なんだろうか、おかしいんじゃないのか。あるいは、こういうのを見て、ものすごく興味が出てきた、関心が出てきたから、これ、僕、勉強してみたいとか、そのような形でうまく使ってもらえればありがたいと考えています」
石戸:「すずかん先生、最後にコメントをお願いします」
鈴木氏:「大臣はじめ、文部科学省の皆さんの大変なご尽力で、画期的な環境をご準備いただきました。あとは、やはり学校現場の皆さん、我々も最大限応援をしたいと思いますが、この環境をどれだけ使いこなして、今日大臣がおっしゃっていただいたような組み合わせが大事だと思うので、1番ベストな組み合わせ、新しい学び方、教わり方を日本から色々な現場で、まだまだ地域や学校の格差があるので、頑張っていきたいと思います。これからは、我々にバトンを頂いたと思っているので、頑張っていきたいと思います。この度はありがとうございました」
石戸:「本当に大臣や文部科学省をはじめ、関係者の皆様のお力強いご尽力を花開かせるためにも、今度バトンタッチをされた民間側が、頑張らなければならないなと思いますので、力を合わせて、みんなでより良い子供たちの未来の学びの環境を作っていければと思います。今日はどうもありがとうございました」