AIの教育分野での活用が期待される中、テクノロジーを活用した学びのサポートがますます重要に
第195回オンラインシンポレポート・後半

活動報告|レポート

2026.2.2 Mon
AIの教育分野での活用が期待される中、テクノロジーを活用した学びのサポートがますます重要に</br>第195回オンラインシンポレポート・後半

概要

超教育協会は20251015日、Google for Education 営業統括本部長の杉浦 剛氏を招いて、「Google for Education AIとひらく学びの未来~ Gemini が教育現場にもたらす革新~」と題したオンラインシンポジウムを開催した。

 

シンポジウムの前半では、杉浦氏が児童生徒の個別最適で協働的な学びや、教員の授業運営・働き方改革をサポートするクラウドサービス「Google Workspace for Educationおよび「Google Workspace for Education」にコアサービスとして含まれる「Gemini」について講演し、後半では超教育協会理事長の石戸 奈々子をファシリテーターに、視聴者からの質問を織り交ぜながら質疑応答が実施された。その後半の模様を紹介する。

 

本記事で紹介されている機能は、セミナーを実施した2025/10/15時点のものであり、記事公開時点での最新情報(Gemini 3.0 等)は含まれません。ぜひ、Gemini で最新機能をお試しください。

 

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「Google for Education AIとひらく学びの未来~ Gemini が教育現場にもたらす革新~」

■日時:20251015日(水) 12時~1255

■講演:杉浦 剛氏
Google for Education 営業統括本部長

■ファシリテーター:石戸 奈々子
超教育協会理事長

 

▲ 写真・ファシリテーターを務めた
超教育協会理事長の石戸 奈々子

 

シンポジウムの後半では、超教育協会の石戸 奈々子をファシリテーターに、視聴者からの質問を織り交ぜながら質疑応答が実施された。

生成AIが出てきて教育はどう変わるのか 視聴者からの関心が集まる

石戸:「今回のご説明で仕組みへの理解が一層深まりました。視聴者の皆さまからもすでに多くのご質問をいただいており、すべてをご紹介するのは難しそうなのですが、他社との比較に関する質問が複数寄せられています。マイクロソフトや OpenAI など、他にも生成 AI を提供する企業がある中で、技術的・設計思想的な特徴、あるいは教育分野での利活用における考え方など、改めて『Google としての強み』や『Gemini ならではの良さ』についてお聞かせいただけますでしょうか」

 

杉浦氏:「1つめは、Google の他のアプリとの連携ができる点です。例えば Google Workspace for Education にはサイドパネルという Gemini を呼び出す機能があります。通常、他社のワープロソフトで文章を書きながらAIを使いたい場合は、コピー&ペーストして生成 AIに入力し、『ここを直してほしい』と指示しながら行き来する必要があります。しかし Google の場合は、Google ドキュメントの中でそのまま AI を立ち上げられます。この連携のしやすさが大きな利点です。

 

2つめは、Gemini Google Workspace for Education のコアサービスとなることで、子どもたちも安全・安心に使えることです。年齢制限をいち早く撤廃できたことも、その大きなメリットだと感じています」

 

石戸:「先ほど、『AI によって学び方や先生の役割が大きく変わる』というお話がありました。実際の教育現場でAIを活用する中で、学び方や、先生の教え方・役割がどのように変化しているのか、具体的な事例があれば教えていただけますでしょうか」

 

杉浦氏:「先日、文部科学省リーディング DX 事業 AI パイロット校での公開授業を見学しました。これまでの子どもたちの学び方は、先生からレクチャーを受け、みんなで調べて学習するというものでした。それが AI の活用によって、どのように調べるのか、そのアプローチについても AI と相談しながら学んでいました。そうした活用をする子どもたちに変わっています。

 

また、体育で徒競走やリレーの練習を行う学校では、以前から動画を撮って動きを確認するという学習活動はありましたが、それに加えて、バトンタッチの練習では、『こういうバトンタッチの方法にすると、より速くなる』など、プロのノウハウを事前にプロンプトで入れておいてあげると、これまでは先生が 1 組ずつコーチングしてあげなければいけないところを、動画をアップロードすることで、自分たちで Gemini と対話しながら振り返り学ぶことができるようになりました。AI が自分たちの体育の先生の代わりにサポートしてくれるのです。先生にとって最強アシスタントになっていました。

 

子どもたちがどうやったらよいのかがわからない壁打ちのタイミングに加えて、自分のつまずきや、もっと勉強したいという子どもたちに寄り添った形で、AI がアシストしてくれていると感じています」

 

石戸:「視聴者から、『AI が自学自習を強力に支援するので、従来の教えて育てる教育という言葉は不要になってくるのでは』というコメントも寄せられています。私は11台端末の次は11台家庭教師ロボット!と申し上げていましたが、そうした存在が身近になるこれからの時代において、Google としては 教室や学校をどのように変えていきたい とお考えでしょうか。未来の学びの姿について、ぜひお聞かせください」

 

杉浦氏:「教育そのものを Google が変えるわけではありません。ただ、学び方や情報の扱い方は時代とともに変化します。Google のミッションは、やはり両方のアクセビリティを上げることや、自分が得たい情報にすぐにアクセスでき、かつ、自がそこから発信できるようなプラットフォームを作ることだと思っています。

 

情報にいつでもどこでもアクセスできるような環境にいる子どもたちもいますが、そうではない方々も多くいらっしゃいます。例えば、環境による格差をテクノロジーの力で学びの平等性・公平性を高めることができます。テクノロジーをうまく使うことで、そういったことが実現できればよいと感じています」

 

石戸:「先ほどの『年齢制限を撤廃した』という点について、もう少し詳しくお伺いしたいと思います。新しい技術が子どもたちに届く際には、必ず『何歳から使っていいのか』という議論が生じます。そのような状況の中で、どのような検討プロセスを経て撤廃という判断に至ったのか、また、年齢制限を撤廃した後の安全性をどのように確保されたのか、その背景についてぜひお聞かせください」

 

杉浦氏:そもそもの前提として、Google Workspace for Education のアカウントで利用する Gemini は、無償版であっても、生成AIのモデルの学習に使われないという点が大きいと考えています。そのうえで、私の理解の範囲でお話しすると、年齢制限撤廃には時間がかかりましたが、その背景には Google Workspace for Education のコアアプリに組み込む準備が進んでいたことがあります。

 

安心・安全にお使いいただくために、コアアプリが利用規約で守られている仕組みを作れたのが、年齢制限撤廃というアプローチが取れた背景だと理解しています」

 

石戸:「技術的な安全対策と同時に、リテラシーを高めていくことの双方が重要ですね。AIリテラシー教育について、内容面と普及面のそれぞれの観点から、特に重要だと考えていらっしゃるポイントを教えていただけますでしょうか」

 

杉浦氏:「機能面では、子どもたちが Gemini NotebookLM など、Google の生成AIにアクセスする際に、必ずリテラシーの告知の資料がポップアップで出てくるようになっています。『こういうことはやめましょう』、『こういうことは入力しないようにしましょう』などといったことが表示されます。

 

また、リテラシーを高めるために、保護者向け、教師向け、子ども向けなど多様な資料などをたくさんご用意させていただいています。一部、ゲーミフィケーション的にリテラシーを学べるようなコンテンツもありますので、楽しみながらどのように情報リテラシーを上げるのかについては、わかりやすい資料から使っていただくのが良いと思います。

 

さらに、文部科学省のガイドラインや我々が提供させていただいているリテラシー教材などを NotebookLM のソースとしてアップロードします。そのうえで、『これはやって良いのか』と思ったものは、NotebookLM に聞くことによって、誰かの研修を受けていないから判断できないようなところも、しっかりと生成 AI と対話しながら確認することができます。さらに、生成AIがまとめた音声概要を聞いたり動画を見たりすることによって、文部科学省や Google が持っている資料だけでなく、自治体がオリジナルコンテンツを使ったり、啓発ビデオを作ったり、Podcast を作ったりしています。AI とともにそういうコンテンツを作るというの、良い使い方のひとつではないかと感じています」

 

石戸:「日本は生成 AI の利活用において遅れが見られる、というデータもあります。Google は世界全体を視野に入れてサービスを提供されていますが、その観点から、世界の教育現場と比較した際の日本における生成AIとの向き合い方について、どのような違いを感じていらっしゃいますか。生成 AI の活用が進んでいる点、逆に遅れが見られる点、あるいは導入のアプローチや姿勢の違いなど、もし特徴的な差異があれば教えていただけますでしょうか」

 

杉浦氏:OECD発表(TALIS2024)2024年当時のデータ(出典:日経BP教育とICT Online と、現在の現場の状況には差があると感じます。今、私たちも GIGA スクール構想の中で端末や Google Workspace for Education 導入を進めてきた中で、AI に対してのお話も多くの自治体とさせていただきました。それらを聞く限り、先生たちはもう使えるようにしていますとお答えいただく自治体がほとんどです。実際、今、だいぶ AI も進化して、かつ、Gemini 年齢制限が撤廃され、コアサービスになりましたので、安全性をご理解いただいている自治体は、比較的心のハードルなく利活用の準備していると思います。

 

ただ、やはり我々も現場の教育者ではありませんので、答えが見えてない部分が多くあります。特に、学習の中でどのように使うのかはまだ手探りで、実験段階だと感じています。というのも、AI は非常に万能であるがゆえに、教育的な配慮が必要な場面も多く存在します。どの場面でどのように活用するのかについては、今後、実践の積み重ねの中でノウハウが形成され、それが横展開されていく段階に移行しつつあると考えています。

 

もちろん、文部科学省のリーディング DX 事業指定校だけでなく、各自治体でも AI 特例校や実践校を設ける動きが増えてきたと感じています。そうした取り組みに積極的にご支援を行い、うまくフラッグシップの自治体の学校の中で AI 活用が進み、そのノウハウが横展開されていくようなところをサポートさせていただいているところです」

 

石戸:「肌感覚としては、OECD のレポートで述べられている以上に、日本では生成 AI の活用が進んでいる印象を受けました。非常に良い傾向だと思うのですが、世界の実態はいかがでしょうか。例えば、『この国は特に活用が進んでいる』『この国の導入アプローチは興味深い』といった特徴的な事例があれば、ぜひ教えていただけますでしょうか」

 

杉浦氏:「まだ導入が進んでいる地域とそうではない地域が混在しているため、国ごとの差異は必ずしも明確ではありません。国の中でも一部の学校や自治体が AI を積極的に利用しているか、そうでないところもありますので、一概にどこのエリアが進んでいるのか、なかなか言いにくいと感じています。ただし、校務も含め、先生が触れるアプリケーションでインターネットのグループウェアなどを積極的に使っている学校もしくは国、地域は AI との親和性が高いです。

 

例えば、NotebookLM のリソースをアップロードするのはデジタルでなければできないことです。デジタルにまず慣れているかどうかが大事です。例えば Google Workspace for Education で文書やスライドを作成している、過去の資料をPDF化して利用しているなど、デジタルに慣れている環境ほど AI との相性が良いのです。こうした環境では、活用のスタートも速く、有効活用のあり方も早く定着していくと感じています。

 

どうしてもゼロイチでチャットだけを使う状況だと、活用範囲が限定されてしまいます。AI をよりディープに活用していくとすると、しっかりとグループウェアで活用する、アナログのものをなるべくデジタルに寄せていくと、よりスピードが速く活用が進むと思います」

 

石戸:「日本では、11台端末の環境が整備されていることが大きな強みで、海外からの視察が増えているという話も伺っています。かつては『日本は教育情報化の後進国』と言われることもありましたが、現在は海外から見ても『日本は進んでいる国だ』という認識になっていると受け止めてよいのでしょうか」

 

杉浦氏:そう感じています。ここ 2 3 年、海外の教育委員会や学校関係者が、視察に多く訪れています。弊社の事例校Chromebook をご採用いただいた自治体をご紹介し活用を見ていただくと、GIGA 端末が日常的に使われていることに驚かれるとともに、『なせ、日本では GIGA が成功したのか』という質問を必ずいただきます。皆さん、11台が当たり前だと思われがちですが、これは世界的にまれなことであり、日本はその環境をうまく活用しています。AI 活用も同様で、しっかりとこういう環境を有効活用して、より進んだ活用を世界に発信していきたいと強く感じています」

 

石戸:「視聴者からの質問です。『子どもの成果物を記録して、ポートフォリオにして自己調整学習の材料にしたり、教師が評価に使ったりするシステムは簡単に作れるように見えます。それに加え、蓄積された成果物からものの見方や考え方を分析して抽出するプロンプトを組み込めば、自己調整ツールができてしまうのでしょうか。さらに進化すると、テスト結果としても使われ、教育チューターの支援を受けられる仕組みができるのではないでしょうか。そんなことは可能なのでしょうか』というものです」

 

杉浦氏:「できると思います。まだ日本語でリリースされていませんが、先程も紹介した Google Classroom の Gemini 機能では、クラスの中にルーブリックを追加して、それを課題に応じて採点の評価のポイントとして使うというプセットされた機能が既に存在しています。それを例えば、日本語用に転用するような形で、子どもたちの成果物をルーブリックの評価項目で採点をしてというものも、先生の評価のアシストという形で作れると思います。完全にAIに頼りきるわけではなく、あらかた先生が決めたルールに基いて80点を出してくれるといった意味では、さっき仰ったような場面も含めて、活用範囲が広がってくると感じます」

 

石戸:「こうした仕組みが進展することで、これまで学びへのアクセスが難しかった子どもたちへの支援も一層期待できるようになります。特別支援教育やインクルーシブ教育にも大きな影響をもたらすと思いますが、この点について、Google としてはどのようにお考えでしょうか」

 

杉浦氏:「まさにその通りです。特に、先ほど紹介したアプリを作るようなコーディングに特化した Canvas や、スケッチから画像や動画を生成するツールなどにより、教育現場で実践したい内容を自分でアプリとして作れる時代になっています。特別支援のアプリケーションは『あれが欲しかった』、『これが欲しかった』など先生たちが独自に作っているケースが多くありました。これからは、そうしたニーズを Gemini のアプリで形にすることが可能であり、教育現場に大きなポテンシャルをもたらすと感じています」

 

石戸:「視聴者から『AI を自分の考えを深める道具として使うために、子どもたちにどんな指導や声かけが必要だと思われますか』というご質問が届いています。これは、『AI がすべて答えてくれるのではないか。学びはどうなるのか』という問いにもつながるテーマで、実際に非常に多く寄せられている疑問です。一方で、AI は使い方次第で、思考を深める、学習速度を上げるといった学びの支援ツールにもなり得ます。実際に、AI をそのように活用していくための指導や声かけ、あるいは具体的な工夫がありましたら、ぜひ教えていただけますでしょうか」

 

杉浦氏:「先ほど十分に説明できませんでしたが、Canvas Deep Research、画像生成の Nano Banana に加えてガイド付き学習という機能が追加されています。これは何かというと、すぐに答えを与えるのではなく、『そのプロセスでどういう理解をしたいのか』、『こういうところを知ったらどうか』をAI家庭教師のような感じで生徒のレベルに合わせて AI が対話をし、理解を深める助けをするものです。

 

例えば、相対性理論など、難しいトピックに取り組もうとしたときに、はじめは『重力について知っているか』、『何について知りたいですか』投げかけてきます。生徒と対話して、少しずつ理解を深めることができるようになっていますので、そういった機能も活用していただくと、個別最適な学習にもつながっていくと考えています」

 

石戸:「最後に、GIGA スクール構想の次に位置づけられる『NEXT GIGA』に向けて、日本は今後どのような取り組みを進めていくべきだとお考えでしょうか。また、Google としては、どのような役割を果たしていきたいとお考えでしょうか」

 

杉浦氏:「私たちは、日常的に使っていただくことがインターネット企業としてのミッションだと思っています。そのため ClassroomGoogle WorkspaceGemini など、幅広いアプリケーションを提供させていただいています。『NEXT GIGA』では利用する場面に応じてユーザーの皆さんに『このツールを使うと便利だよ』、『これはこうすると仕事がはかどるよ』といった提案を行いながら、活用の浸透と変革を後押ししていきたいと考えています。

 

教務と校務は切り離せるものではなく、校務にも学びにも適切なアプリを適切な形で使っていただけるよう、今後も支援していきたいと考えています」

 

最後は石戸の「生成AIによって教育はどのように変わっていくのか。その変化のスピードを生成 AI 自身がさらに後押ししていくのだと改めて強く実感しました。Google には、今後も新しい技術を適切な形で次々と導入していただき、子どもたちが主役となる新しい学びのかたちを、ともに創り上げていきたいと感じています」という言葉でシンポジウムは幕を閉じた。

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