大切なことは発達障害やギフテッドの子どもの特性を正しく理解すること
第167回オンラインシンポレポート・前半

活動報告|レポート

2024.11.22 Fri
大切なことは発達障害やギフテッドの子どもの特性を正しく理解すること</br>第167回オンラインシンポレポート・前半

概要

超教育協会は2024年911日、Re学院 学長の津嘉山 晋弥氏を招いて、「発達障害・ギフテッドの通信制オンラインスクールRe学院の取り組み」と題したオンラインシンポジウムを開催した。

 

シンポジウムの前半では、津嘉山氏がRe学院の設立に至る背景やカリキュラムの特色などについて講演し、後半では超教育協会理事長の石戸 奈々子をファシリテーターに、視聴者からの質問を織り交ぜながら質疑応答が実施された。その前半の模様を紹介する。

 

>> 後半のレポートはこちら

 

「発達障害・ギフテッドの通信制オンラインスクールRe学院の取り組み」

日時:2024年911(水) 12時~1255

講演:津嘉山 晋弥氏
Re学院 学長 

■ファシリテーター:石戸 奈々子
超教育協会理事長

 

津嘉山氏は、約30分の講演において、202410月に開校予定の通信制オンラインスクールRe学院の取り組みについて講演した。主な講演内容は以下のとおり。

 

2024年10月から発達障害、ギフテッドの通信制オンラインスクールRe学院が開校することになりました。本日は、その取り組みについてお話します。

 

まず「299,048」、これは何の数字だと思いますか。文部科学省の調査で判明した2023年度における全国の不登校小中学生の人数です。2022年度は244,940人で、22%も増加したことになります。全体の生徒数に対する割合は3.2で、「クラスに一人は不登校児がいる」という計算になります。10年前までは約11万人でしたので、2.6です。不登校は、明らかに社会問題と言ってよいと思います。

 

それでは、不登校の原因は何でしょうか。いじめをイメージされる人が多いと思いますが、実はいじめが原因のケースは0.2と非常にレアです。実際は友人関係をめぐる問題、親子の関わり方、学業の不振というのが主要な原因です。

 

▲ スライド1・不登校の原因は
自分自身に関わることが多い

 

これらは、学力やコミュニケーション能力に原因があるということを示唆しています。いじめという外的要因が主要な理由ではなく、学力やコミュニケーション能力という自分自身の能力に起因する不登校が多いのです。

 

そして、実は不登校と発達障害には密接な関係があることがわかってきました。2017年の「不登校と発達障害」という論文によると、不登校児の57%がASDADHDなどの発達障害ということがわかっています。ASDに起因するコミュニケーション能力や、相手の心情がわからないことによるトラブル、またADHDに起因する衝動性や流暢な会話ができないことによるトラブルなどの可能性が考えられます。また学業の不振についてはLD(学習障害)で読み書きが困難なこと、ADHDで集中力が欠如しやすいことなどが原因と考えられます。

 

▲ スライド2・不登校と発達障害には
密接な関係がある

 

このように多くの不登校は発達障害が原因となっている可能性が高いのです。また発達障害と似たような概念として、ギフテッドが挙げられます。ギフテッドには2種類あり、一つは英才型ギフテッドです。これはIQ130以上で、しかも、それぞれの領域で均整がとれている状態です。いわゆる天才です。このパターンは、日々の暮らしの中であまり困ることはないようです。実際に多いのは、もうひとつの「2E型ギフテッド」です。これは、いずれかの領域のIQ130以上あるのですが、他の領域はそうでもなく、能力にばらつきがある状態です。2E型は才能がある一方で、苦手な領域については発達障害の側面があります。しかも、この2E型は通常の発達障害よりも激しく特性が出る傾向があり、不登校リスクが非常に高いということもわかってきています。

公的な支援が行き届いていない中、不登校児の進路選択の悩みを解消するRe学院

こうした不登校の実情を踏まえ、現在の不登校支援の実態を見ていきます。まず、公的な不登校支援では「適応指導教室」の開設があります。全国約1,300箇所に設置されていますが、いまだに4割の自治体では設置されてなく、約16,000人しか受け入れられていません。この状況を踏まえ、文部科学省では不登校特例校という名称で不登校児向けの学校を作り始めています。しかし、令和6年現在35校しかなく、ほぼ未整備と言ってもよい状況です。

 

民間の不登校支援ではフリースクールがあります。フリースクールは全国474箇所で約4,200人を受け入れています。しかし、全国の不登校児は約29万人います。ほとんどカバーできていないというのが、不登校支援の実態といえます。

 

▲ スライド3・不登校児の多くに
支援が行き届いていない

 

また、不登校になると高校進学に困難が生じます。ひとつは出席日数の問題です。全日の適応指導教室に通えば、出席日数を確保できますが、そうではない場合は不登校で出席日数が足りず、内申書の印象が悪くなる傾向にあります。二つめは、テストや提出物です。テストを受けなかったり提出物を出さなかったりしていると、成績がつきません。つまり、内申点が得られないのです。公立高校は原則として受験できなくなってしまいます。

 

私立高校なら受け入れてくれるのではと思うかもしれませんが、近年では東京都の併願優遇制度のように私立でも内申点を基準の一つにする入試が一般的になりつつあります。この併願優遇制度とは、内申点などの基準をクリアし、受験する学校へ事前相談することによって利用できる制度です。当日の学力検査の得点に加点されるという優遇があるため、合格できる可能性が上がります。多くの学校がこの制度を導入しているため、内申点がつかないとその時点でかなり不利になってしまいます。この進路選択の悩みを解消するのがRe学院です。

Re学院 中等部は発達障害ギフテッドの特性を考えた「フリースペース

それでは、Re学院の取り組みを紹介します。まずRe学院中等部はオンラインのフリースクールです。

 

▲ スライド4・Re学院中等部の取り組み

 

発達障害、ギフテッドは不登校リスクが高いにも関わらず、専門的なノウハウがあるフリースクールは、ほぼありません。そこで私たちがノウハウを持ったフリースクールを開校します。例えばLDで書くことが苦手なお子さんがいるとします。この場合、ノウハウの有無によってアプローチが異なります。一般的なフリースクールで学習サポートを行う場合、「LD=勉強ができない」と短絡的に考えてしまい、易しい問題をひたすらやらせるといった支援を行いがちです。しかし、このサポートは、書くことが苦手なお子さんにとっては全く効果がないどころか、より勉強嫌いにさせてしまうリスクがあります。書くことが苦手ということは、いわば利き手と反対側の手で文字を書くようなストレスがかかるのです。書くという作業自体の負担が大きく、数をこなしても頭に入っていきません。

 

こういった特性を考慮したうえで、Re学院ではそもそも作業中心の学習は出しません。例えば、「引き算は何かが減るときに使えるだけでなく、何かを比べる時にも使える」とか、「三角形の面積は平行四辺形の半分だから最後に2で割る」など、本質的な概念を教えていきます。つまり、Re学院はただのフリースクールではなく、発達障害、ギフテッドの特性に合わせた指導を行うフリースペースということです。

 

そして、ソーシャルスキルトレーニングを導入しているという特徴もあります。ソーシャルスキルとは、コミュニケーションや社会的行動といった社会的技能のことです。不登校の原因としてソーシャルスキルの問題が占める割合は大きく、この能力を訓練せずして復学は不可能といえます。コミュニケーションスキルは、相手の気持ちを理解して流暢に会話のやり取りをする技術です。本来は自然に獲得できる能力ですが、発達の「でこぼこ」があるとそうはいきません。場面や状況ごとに相手が考えていること、相手の気持ちを理解し、どのように伝えれば適切かという技術を学んでいきます。

 

▲ スライド5・中等部では
ソーシャルスキルトレーニングを導入

 

また、社会的行動では、場面や状況ごとの集団のルールを理解し、集団に参加する技術を学んでいきます。これらの能力は結晶性知能という蓄積型の知能で、トレーニングしたことはゆっくりでも着実に身についていきます。

 

Re学院はオンラインなので、低刺激な自宅から受講できるという特徴もあります。そもそも不登校児の中には、学校に行くだけで疲れるという子どもが多いです。疲れというのは主観的な感覚で、本人も周りも気づきにくいですが、主な原因には「ワーキングメモリーの低さ」があるとされています。ワーキングメモリーの低さは雑音の処理に影響があると言われ、人間の脳に搭載されているいわゆるノイズキャンセラーがうまく機能していないのです。集団という雑音が多い中にいるだけで無意識に音が入ってきてしまい、疲弊してしまう、そういう状況に陥ってしまいます。

 

もう一つの原因は処理速度の低さです。処理速度は主に手先を使った作業能力で、書字や板書に影響が出ます。この書字や板書の能力は学校生活を送るうえで必須の能力なので、授業に参加するだけでどんどん疲れてしまいます。このように発達障害やギフテッドの子どもたちにとって学校という場所は非常に刺激的な場所で、行くだけで疲れてしまうため、私たちは自宅で受講できるオンラインスクールという形態を選択しました。

Re学院高等部は通学しなくても高卒資格が取得できる

Re学院高等部は通信制サポート校です。発達障害、ギフテッドの特性を考慮し、ソーシャルスキルトレーニングの導入、オンラインスクールという基本的な仕組みは中等部と同じですが、さらに高等部は八洲学園大学国際高校と提携しています。この提携によって、高卒資格を得ることができます。

▲ スライド6・Re学院高等部の取り組み

 

カリキュラムは八洲学園のものがベースとなり、その課題を自宅で行い、Re学院が特性に合わせて適切にサポートしていきます。そして年1回のスクーリングがあります。沖縄にある八洲学園へ通学するというイベントです。普段はオンラインで学んでいる生徒たちがリアルで出会う機会となり、いわゆるオフ会のような楽しいイベントとなります。このように発達障害、ギフテッドの特性で定期的に通学ができなくても、高卒資格が得られるというのが最大のメリットです。

 

ただし、通信制のカリキュラムは年間50~60ページのプリントしかなく、最低限のものです。高卒資格は得られますが、今後の進学を考えると不十分であり、選択肢が広がりません。そこで、この不十分なカリキュラムをRe学院が補います。具体的にはSTEM教育の導入です。STEMとはサイエンス、テクノロジー、エンジニアリング、マスマティクス、すなわち化学、物理、情報、数学などを中心に学ぶことになります。将来、ITやエンジニアなどの分野に興味がある生徒には効果的な学習になります。特に現代社会では非常にニーズが高いともいえます。

 

一方でマイペースでバランスよく学びたいというお子さんには、リベラルアーツの選択もできます。リベラルアーツは一般教養という意味で、これらは理系文系を幅広く学んでいくカリキュラムです。どちらを選択しても、大学進学を想定した通信サポート校であるという特徴があります。

 

また、八洲学園で学んでいる既存の生徒の中にも、発達障害、ギフテッドのお子さんが在籍しています。勉強のやり方が分からないまま通信制高校に入ったというお子さんも多いので、これらの生徒のフォローもします。私たちは、子どもたちが社会に出るまでに、自らの特性と向き合い、自分の能力のコントロールの仕方を学んでもらいたいと考えています。このコントロールの仕方を覚えないことには、社会で力が発揮できないと考えています。発達障害、ギフテッドの子どもたちが、将来、社会で活躍できる人材になれるよう全力でサポートしていきます。

 

最後に、私たちは発達障害、ギフテッドはお子さんの特性であると考え、お子さんの特性に対して適切な対策を行えば、お子さんの可能性を広げられると考えています。私たちは、お子さんのやる気や才能は待つものではなく、引き出すものと考えています。やる気を引き出し、お子さんの本来の才能を伸ばす、フリースクール・サポート校を希望される方は、ぜひRe学院にお問い合わせください。皆様の明るい未来に少しでもお力添えできれば幸いです。

▲ スライド7・発達障害、ギフテッドの
子どもを持つ親に伝えたいこと

 

>> 後半へ続く

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