生徒の学習支援にクラウドサービス「BOX」を活用
第3回オンラインシンポレポート・後半

活動報告|レポート

2020.7.3 Fri
生徒の学習支援にクラウドサービス「BOX」を活用<br>第3回オンラインシンポレポート・後半

概要

超教育協会は2020年6月3日、兵庫県尼崎市教育長の松本眞氏を招いて、「尼崎市の臨時休業期間における学習支援(ICT活用)に向けた取組」と題したオンラインシンポジウムを開催した。

 

シンポジウムの前半は、新型コロナウイルス感染症の影響による休校中に、ICTを活用した学習支援に取り組んだ実例を松本氏が紹介。後半では超教育協会理事長の石戸奈々子をファシリテーターとして、参加者からの質疑応答を実施した。その後半の模様を紹介する。

 

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「尼崎市の臨時休業期間における学習支援(ICT活用)に向けた取組」
■日時:6月3日(水)12時~12時55分
■講演:松本眞氏 兵庫県尼崎市教育長
■ファシリテーター:石戸奈々子 超教育協会理事長

 

シンポジウムの後半では、石戸をファシリテーターとして質疑応答が行われた。参加者から寄せられた質問を、石戸が松本氏にぶつけるという形で実施された。

質疑応答

▲ 写真・ファシリテーターを務めた超教育協会理事長の石戸奈々子

 

石戸:「最初の質問です。学校現場のクラウドへの警戒心はとても強いと認識しています。BOXを採用する際に反対論は出なかったのですか」

 

松本氏:「明確な反対の声は届いていませんし、現場の教職員からの反対はないと思っています。というのも、先生から年に1回、教育委員会に対する不満や人事の要望などを聞く機会があるのですが、ICT活用に関する要望は非常に多かったのです。現場では、ICTを活用したいと思っている先生が増えていて、その要望に対して環境を整備する側が応えられていなかったと私は受け止めています」

 

石戸:「次の質問です。家庭でインターネット受信環境が整えられるかのアンケート調査についてですが、その回収率は7割から8割とのことでした。この回収率についてどうお考えですか。回答から漏れた2割から3割が、アンケートでインターネット受信が『不可能』と答えた5%に加算されるのではないですか」

 

松本氏:「これは義務のアンケートではなかったので、高い回収率だったと思っています。ただ確かに各家庭の状況を漏らさず把握することが重要なので、今、アンケートをもう一回やり直しています」

 

石戸:「アンケートでインターネット受信が『不可能』と答えた5%に関する質問が多く寄せられています。5%には個別に丁寧に対応するというお話でしたが、具体的にはどうしていますか」

 

松本氏:「例えばオンライン朝の会に参加できない生徒がいた場合、家庭訪問したり電話でフォローしたりしています。スタディ・サプリも家庭で学べない生徒がいますが、その場合は学校に来てもらって学校のパソコンを貸して学んでもらうなどの機会を提供しています。決まった型があるわけではなく、個々と話し合いならが最適な対応を考えるようにしています」

 

石戸:「次は、地域的に5%が集中している学校があったのではないか、という質問です」

 

松本氏:「このアンケートは、学校別ではなく市全体として把握することが目的でした。学校別やクラス別の割合は、後の詳細調査で明らかにします。ただ、どこの学校もだいたい5%から1割の間くらいと把握しています」

 

石戸:「BOXの導入について先進校の設定をしたようですが、現場からの要望で設定したのか、それとも教育委員会側が指定したのですか」

 

松本氏:「最初は、先生の研修やICT活用を担当する教育総合センターで、課題を共有する仕組みにBOXを使おうという話があって、その情報を聞きつけた私が、アカウントなしでも使えるのは便利だ、と言って、学校現場でも活用していこうという流れになりました」

 

石戸:「BYODに関する質問です。高校生のBYODとなると携帯電話が中心になると思いますが、具体的にはどのような展開になっていますか」

 

松本氏:「高校ではGoogleのClassroomを使って課題のやり取りをしています。今は生徒が持っている携帯電話をビューワとして使っていますが、これからは大学と同じように各生徒がパソコンを持つべきと思っています。学習において表現するとか説明することは重要なので、そういう時はキーボードが使えた方がいいです」

 

石戸:「次の質問です。自分の地域では、保護者が望んでいるにもかかわらずオンライン教育が始まっていません。そういう地域はどうすればいいですか。また教育委員会が反対している地域もあります。そういう教育委員会に対してどう伝えればいいですか」

 

松本氏:「今の学校文化を考えた時に、このコンテンツを使いなさいと上から強制しても広がりません。学校は一人一人がプロ意識を持った職人の集まりなので、その人たちに『やるぞ』という気持ちを持ってもらわないと絶対に進まないと思います。基本的には、教育委員会や管理職がそういった先生たちを応援する姿勢が重要です。粘り強い努力が必要で、プラスFacebookやメディアでの発信をすることで、教育にICTを使わないといけないという社会的な認識が広まっていくことも意識しています」

 

石戸:「実行体制についての質問です。どのくらいの人数で、どういうスキルや経験を持つメンバーで、今回の学習支援体制を設計したのですか」

 

松本氏:「指導主事として関わっているのは4、5人です。あとセキュリティやインフラを担当している職員が別の部署に2人います。実際には指導主事の係長が引っ張って、5人程度で回している感じです」

 

石戸:「子供たち同士の助け合いやコミュニケーションが大切だということでしたが、オンライン上でどのように対応していますか」

 

松本氏:「学習補助に焦りを持っていたので、学習動画を提供することを中心に考えていましたが、現場を見ると、家にいないといけないストレスに対する心のケアを現場の先生は大事にしています。先生のメッセージを配信したり、オンラインで相談したり、朝の会をやったりなど活用が広がっていて、教育委員会でもそういう活用を応援している状況です」

 

最後に松本氏は、「教育用PCが10人に1台の我々のような自治体でも、やれることはたくさんあります。まずできるのは、ICTを積極的に活用したいと思っている先生方を応援することです。色々なところで活用事例を広めて、ムーブメントを作っていくことが必要だと思っているので、引き続き各方面でグッドプラクティスの共有を一緒にしていければと思っています」とメッセージを送り、講演を締め括った。

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